僕は2021年にイギリスのKing’s College London(キングスカレッジロンドン)に進学し、2024年の8月に卒業することができました。生まれてからずっと日本で育ってきた僕は、高校で国際バカロレアコースを履修し始めたあたりで海外の大学に進学することを意識し始めました。今回の連載では、自分がキングスカレッジに進学することに決めた経緯とそこでの経験とを照らし合わせて、イギリス留学のメリットと留学先の決め方を紹介していきたいと思います。
イギリス留学のメリット
イギリスに留学するメリットは、世界トップクラスの大学で質の高い教育はもちろん、それ以外にも幅広い経験を積むことができるところにあります。ここではそんなイギリスの大学の特徴を紹介していきます。
質の高い教育・設備
イギリスの高等教育機関の教育と研究は世界の中でも、高い水準を保っていることで知られています。様々な学部や学科があり、特に芸術系(アートやデザインなど)の学部などで日本にはないような幅広い専門分野を勉強することができます。僕は元々リベラルアーツ学科
(Liberal Arts – 人文学・芸術などの知識を断面的に学ぶ学問)に興味があり、King’s College Londonのリベラルアーツでは自分が特に興味がある音楽や映画の授業を履修できるというのが大きかったです。インターンシップができる履修科目(イギリスではモジュール – Moduleという)があり将来のキャリアにつながるようなプログラムが組み込まれている学科もあります。
イギリスの大学のキャンパスは設備が豊富で、図書館や研究室の他にも劇場や映画館がある大学もあります。高校2年生の冬に大学を見学しに行った時に、僕は大学の大きな図書館に強い印象を持った覚えがあります。King’s College Londonの他にも見学しに行ったUniversity of Leeds(リーズ大学)やThe University of Sheffield(シェフィールド大学)などはロンドンから離れた町にある分、静かな環境に大きなキャンパスがあり、勉強に集中できそうだなという印象を持ちました。
大学によっては卒業後もキャリアをサポートしてくれるところがあります。キングスカレッジには履歴書の添削や面接の練習を行なってくれるキャリアセンターがあり、僕も卒業前後にそれらをうまく活用しました。これらの充実した教育や設備があって、教育力や研究力などで世界中の大学の水準を評価するTimes Higher Education(THE)ランキング(2024年時点)ではトップ10にイギリスから3校、トップ100には11校が選出されています。
課外活動・イギリスでの生活
留学先を決める時は、授業外で何ができるかも考慮するべきポイントです。イギリスの大学にはSociety(日本でいうサークルのようなもの)があり、スポーツ系や芸術系など様々なジャンルのものが存在します。King’s College Londonには300種類近くのソサエティがありました。僕は小さい頃からバイオリンを弾いていて、大学に大きなオーケストラのソサエティがあると知った時、楽しそうだなと覚えがあります。ソサエティによっては気軽に参加できるものもある一方、賞や大会などの目標に向けて本格的に活動しているものもあります。
その他にも、イギリス、特にロンドンには博物館や美術館などがたくさんあり娯楽の選択肢がたくさんあることも魅力的です。特に僕は小さい頃からイギリスの音楽やサッカーが好きで、なかなか来日しないミュージシャンのコンサートに行ったり好きなサッカーチームの試合を現地のスタジアムで観戦できるのは憧れでした。イギリスは他のヨーロッパ諸国にすぐ
旅行できる場所にあり、大学の休暇を利用して様々な文化を体験しに行くこともできます。
多様性
イギリスは移民の受け入れに積極的で多様な文化が共存しています。大学にも様々な国から学生や教員がやってきており、様々な文化を知ったり、物事を多角的な視点で考える力などを養うのに最適な場所です。国や地域ごとのSociety(King’s College LondonのJapan Societyには日本人の他にもアジア系の人だったり日本の文化に興味があるイギリス現地の人が集まる人気のソサエティです。日本語教室を開催したり、お正月の書き初めなどのイベントをしたりします。)もあり、様々なバックグラウンドを持つ人と交流できる機会があります。特にロンドンのような大都市では街を歩いているだけでも、様々な人にすれ違い様々な言語が聞こえてきます。ここで勉強できるのは自分の視野を広げるのにピッタリだなと思ったのも、イギリスに進学することを決めたきっかけでした。
留学資金
留学先で人気があるのはアメリカ、イギリス、カナダというイメージがありますが、イギリスは留学資金(学費・生活費)含めて残りの2カ国より割安というデータがあります。アメリカの大学が学士課程に4年間かかる中で、イギリスのほとんどの大学は学士課程が3年間で
、2年制の学位を提供しているコースもあり留学費用の節約にもつながります。もちろん留学生向けに様々な奨学金制度があるのでそれらを調べることも大切です。
志望校を決める時のポイント
僕が志望校を選択したのは高校1年の終わりのことでした。大学進学に向けて目標(大学ごとに定められたIB、A-Levelの入学基準スコアなど)を設定したりPersonal Statement(パーソナルステイトメント)などの出願準備をするためにも、志望校は早めに絞った方がいいと思います。UCAS(イギリスの大学出願機関)を使って出願する際、第5希望まで決めることができます。ここでは志望校を選択する時にするべきこと、考えるべきポイントを書きたいと思います。
大学について調べる
大学の教育・設備やそこでどのようなキャンパスライフが送れるかは場所によって全く違うので、各大学のリサーチは慎重にする必要があります。僕の場合、まずは先ほど紹介した大学ランキングを見て、どの大学に自分の勉強したい学科があるのか調べるところから始めました。Times Higher EducationやQS World University Rankingsなどの大学ランキングは総合ランキングだけではなく、専攻別などのランキングも発表されているので調べる上でとても参考になります。自分の気になる大学・学科を絞り出した後はその大学のウェブサイトを見てみました。イギリスでは大学の総合案内書をprospectus(プロスペクタス)と言い、ウェブサイトで紙のバージョンを申請できる大学もあります。大学のprospectusやウェブサイト
には卒業生の就職率や留学生の割合などが書かれているので、大学でどのような生活を送れるかの大体の指標にもなります。
日本ではSI-UK(Study International UK Limited)やbeoと言ったコンサルタント会社などが主催となって留学フェアや進学セミナーが毎年行われています。実際に現地の大学の教員の方と交流できたり資料をゲットできる機会なので、効率的に活用しました。一つの大学が日本に来て(もしくはオンラインで)説明会を行うこともあります。
日本の大学と同じようにイギリスの大学もオープンキャンパス(Open Day)を開催しています。実際に大学内を見学するのは、学校への理解が深まるので志望校を絞るのにとても効果的でした。大学によって開催される時期は違うので、もしオープンキャンパスに行けない場
合はオンラインでバーチャルツアーができる大学もあります。その他にもソーシャルメディア(Instagramなどの大学の公式アカウント、学部やソサエティのアカウントなど)を活用して、現地の学生や卒業生の声を聞いたりするのも1つの手段です。
大学環境が自分に合っているか考える
志望校を選ぶ場合、大学の教育内容や設備などに目が行きがちですが、その大学が自分の性格や目標に合っているのかも考えるべきポイントです。例えばイギリスに留学する際は、ロンドンの大学で勉強するか、それ以外の都市に行くかの二択に分かれますが、結果的に自分に合ってない環境で3年間勉強することになるのは辛いので、自分が納得できる選択をするべきです。世界の中心地の一つであるロンドンでの生活は都市のスピード感が速く、多文化的な環境であることも含めて刺激的な経験をすることができます。その一方で、地方都市ではOxford(オックスフォード)やCambridge(ケンブリッジ)などその地域特有のコミュニティがあります。ロンドンに比べて物価が比較的安いことも含めて、リラックスした環境で勉強できる利点があると思います。最終的に僕はロンドンの大学を3校、ロンドン以外の大学を2校選択して出願しました。どちらを選ぶかは、あなたが何を大学生活に求めているか、自分に合った生活スタイル、予算などで変わってくると思います。ここはランキングなどに流されず、自分がどうしたいかを大切にしましょう。
イギリス留学には多くの魅力があり、まず自分に合った大学を選ぶことがそこで充実した経験をすることへの第一歩です。今回紹介したポイントを参考にしながら、ぜひ理想の留学先を見つけてください。