こんにちは、イギリスのUniversity College London(UCL)で物理を専攻しているAyatoと申します。今回は海外留学についてネットで調べても出てこないようなイギリスの留学事情や、個人的な選択についての情報を提供したいと思います。
私の略歴:熱海からロンドンへ
基礎プロフィールとして、自己紹介を簡単にしておきます。生まれ育ちは静岡県の熱海です。海のそばや山の上に住んでいて、自然に囲まれた生活をしていました。中学からロンドンの南西部に位置する立教英国学院という日本人学校に進学して、その後日本の高校に戻りました。卒業後は一度、早稲田大学の先進理工学部に入学しました。物理をやりたいことはその前から決まっていましたが、私にとって望ましい環境はUCLにしかなかったので、UCLへ進学しました。
イギリスの日本人学校に進学した経緯
将来は英語を使って世界で活躍したいと昔から漠然と思っていました。小学校高学年のとき、イギリスで学べるチャンスがあることを知り、すぐに受験の準備を始めました。無事志望校の立教英国学院に合格し、ボーディングスクール(全寮制学校)に入学しました。
その学校では、食事も勉強もみんなで一緒にします。そのため、自然と家族のようなつながりが生まれると感じました。仲間と共に過ごすことを前向きにとらえていたので、親元を離れることに不安はなかったです。実際に入学後も、同じ部屋の仲間とうまくいかないことがありながらも、大家族のような温かい環境に魅力を感じ、仲間意識を深めていきました。
なぜ日本の高校に戻ったのか
中学で3年間イギリスにいたので、イギリスでの文化や集団生活には十分に慣れました。そのとき、将来日本で働くことになっても、海外で働くことになっても、日本独自の文化や常識を自分自身の経験に基づいて理解しておくことが大切だと考え、高校から日本に戻る決断をしました。特に、日本と海外の文化の違いを肌で感じ、比較しながら理解できることは将来大きな強みになると確信していました。
早稲田大学を中退し、UCLに移った理由
物理を深く学びたいという強い思いがあり、高校卒業後は早稲田大学の先進理工学部で学びました。集合論など日本の大学が強みとする分野の学びも積極的に取り入れて最大限の知識を吸収しました。早稲田大学での電磁気学の講義や実験は特に面白く、非常に刺激的な経験でした。

しかし、グローバル人材としてさらに成長するためには、もっと多様で厳しい環境に身を置く必要があると感じるようになりました。自らの興味のある分野にさらに近い教授や学生と切磋琢磨できる環境で、自分を鍛えたいという気持ちが強まり、UCLへの進学を決意しました。
実際に、UCLでは多くの困難がありましたが、その挑戦が自分を成長させる確かな糧となり、選択は間違っていなかったと確信しています。早稲田大学も素晴らしい学びの場でしたが、私は「今しかできない挑戦」を選びました。
UCLファウンデーションコースでの学び
A-levelやIBを修了していない限り、日本の高校卒業資格では直接イギリスの学士課程を受験することができないです。そのため、私はUCLのファウンデーションコース「Undergraduate Preparatory Certificate for Science and Engineering(UPCSE)」に進学しました。このコースで学問的知識と実践的なスキルの双方を高い水準で身につけることができました。

コースは Science and Society(科学と社会)、Mathematics(数学)、English(英語)、Physics(物理)の4つの柱で構成されており、そのすべてが密度の高い内容でした。中でもMathematicsとPhysicsは、通常2年かけて学ぶ内容を1年間で修了するという厳しいカリキュラムで、知識を短期間で体系的に深める力が養われました。
Englishの授業は単なる語学の習得を目的とするものではなく、プレゼンテーション、ディスカッション、アカデミックライティング、リーディングなど、すべての技能を実践的に鍛えるものでした。特に印象的だったのはリーディングの授業です。文章を読んだらすぐにアウトプットが求められるため、読む際には内容を深く理解し、論旨や構造を意識する姿勢が身につきました。授業の終わりには、頭を使い切った達成感と心地よい疲労感を味わったことをよく覚えています。
また、Science and Societyの授業では、たとえば2型糖尿病についてリサーチを行い、プレゼンテーションやポスターを作成します。自分で調べ、考え、他者に分かりやすく伝える力が磨かれたと感じています。さらに、seminar(セミナー)と呼ばれるディスカッション形式の授業では、対話の意義を学び、相手の意見を尊重しつつ、自らの考えを論理的に述べる力が大きく成長しました。これらの経験を通じて、私の英語力は単なる語学力の枠を超えて、実践的で応用力のあるスキルへと飛躍することができたと確信しています。
このコースでの学びは、私の価値観や学びへの姿勢そのものを大きく変えるものであり、「人生が変わる」という言葉が決して誇張ではないと実感する日々でした。

Physics and Astronomy専攻内容
ファウンデーションコースを終え、無事に希望通りUCLのPhysics and Astronomy(物理と天文)学部に進学できました。専攻は理論物理学です。理論物理学とは、コンピュータ、数学、統計、物理学の力を使い、自然現象を理解しようとする学問です。純粋に興味の赴くままに私は学んでいます。
具体的な学習内容は以下のようなものです。古典力学、量子物理、電磁気学、熱統計力学、統計学、光学、振動、微分方程式、微分積分、線形代数、複素解析、Mathematica、Python、天文学、原子・分子物理学、種々の数学的手法/構造。
どれも興味深いものばかりですが、特に自分が面白いと感じたのは上記を用いたプログラミングです。手計算や頭でロジックを考えるというプロセスと比較した時に、プログラムは複雑な計算を一瞬で実行でき、とてもスマートだと感じます。もちろん、自分の頭で考え抜いた末に理解した事柄が増えていくことや、内容について学友と議論することに勝る喜びはありません。

最後に
UCLでの生活は、試行錯誤の連続であり、苦労もありましたが、その一つひとつが自分自身を成長させる大切な糧になったと感じています。多様で優秀な仲間たちと出会い、刺激を受け、時に自分の立ち位置や価値観を問い直す日々は、今振り返ればとても贅沢で貴重な時間でした。
これから挑戦しようとしている方へのアドバイスがあるとすれば、「なぜ自分は今その行動をしようとしているのか」を自分自身に問いかけることを忘れないでほしい、ということです。情報に触れることは大切ですが、目的を持たないままでは時間を浪費してしまうこともあります。自分の意思と向き合いながら、ぜひ納得のいく進路を選んでください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。皆さんの挑戦を心から応援しています。
