はじめに:イギリス留学とIELTSの関係
先日、イギリス留学を目指している日本の友達と通話した際に、IELTS(International English Language Testing System)で点を取るのが難しいという話題になりました。イギリスの大学や大学院に国外の学生(International students)が進学する場合、入学試験の一環として多くの教育機関がIELTSのスコアを英語力の証明として求めることが一般的です。これは、学術的な環境で十分に英語を活用できる能力を示すために必要な試験とされています。
IELTSには主に2種類の試験があり、留学を目指す人が受けるアカデミック(IELTS Academic)と、移住や海外就労を目指す人が受けるジェネラル(IELTS General Training)に分かれます。Academicは専門的や学術的な内容で、Generalの内容は日常生活で使う英語などが中心です。
IBやA-Levelなど国際的な教育プログラムを受けている場合、大学に出願する際のIELTSスコア提出が免除されることもあります。しかし、学生ビザ(Student Visa)を取得するためには、IELTS for UKVIという専用の試験(フォーマットはアカデミックと同じ)を受ける必要があり、最低スコアが5.5となっています。トップクラスの大学や大学院の場合、必要なスコアは7.0~7.5という高いハードルが設定されています。したがって、イギリス留学を考えている人は、IELTSを受けることがほぼ必須だと言えるでしょう。
僕自身も高校で国際バカロレア(IB)を受けており、普段から英語を使ってコミュニケーションする機会が多かったのですが、試験に求められる英語と日常的に使う英語との違いに最初は非常に困惑しました。IELTSでハイスコアを取るためには、英語の使い方に対する戦略的なアプローチが必要だと痛感しました。勉強方法を見直した結果、1年間でスコアを6.5から7.5に引き上げることに成功しました。
本記事では、イギリス留学を目指す方々のために、IELTS対策を徹底的に解説し、効率的にスコアを伸ばすための勉強法やおすすめ教材、試験当日のポイントについて紹介します。

1. IELTSの試験形式と対策
IELTSはリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングの4技能を測定する試験です。まず、各セクションの特徴を解説します。
1-1. リスニング(Listening)
- 試験時間:30分(+解答を記入する時間10分)
- 問題数:40問(10問×4セクション)
- Part 1:日常会話
- Part 2:説明や案内
- Part 3:専門的なトピックについての会話や議論
- Part 4:大学の講義
1-2. リーディング(Reading)
- 試験時間:60分
- 問題数:40問(3パッセージ)
問題形式は選択問題(Multiple Choice)や正誤問題(True or False or Not Given)、文や図の穴埋め問題(Completion)など様々なものがあり、どの形式になるかはランダムです。
1-3. ライティング(Writing)
- 試験時間:60分
- 問題数:2問
- Task 1:グラフ、表、地図、図の説明(150語以上)
- Task 2:エッセイ(トピックについて意見や議論などを250語以上)
1-4. スピーキング(Speaking)
- 試験時間:11~14分
- 形式
- Part 1(自己紹介):自己紹介・日常的な質問(例: 趣味、家族、仕事)
- Part 2(スピーチ):トピックカードが渡されて1分間準備→2分間話す
- Part 3(ディスカッション):Part 2のトピックに関連したテーマについて議論
1-5. 評価基準
- Fluency and Coherence(流暢さと論理的なつながり)
- Lexical Resource(語彙力)
- Grammatical Range and Accuracy(文法の正確性と多様性)
- Pronunciation(発音)
これらの基準に沿って、どれだけ自然で正確に英語を使用できるかが評価されます。
1-6. 採点
4技能それぞれに0.0~9.0のスコアが0.5刻みで評価され、4技能の平均が最終的なスコア(Band Score)になります。
2. IELTSが難しい理由
僕がIELTSを難しいと感じた理由は、独特の試験形式にありました。IELTSは単なる日常英会話の試験ではなく、学術的・専門的な場面でも通用する英語力を測定するものです。そのため、正確に英語を扱う力が求められます。普段の友達との会話だと、文法・語彙が完璧でなくても言いたいことは伝わりますが、IELTSだと要領が違います。そこが僕が苦戦した1番の原因でした。
2-1. 試験のプレッシャーと制限時間
まず、IELTSは試験時間が限られており、速くかつ正確に解答するスキルが必要です。リスニングの英文は1回しか流れず、解答時間も短いです。ライティングは60分で2つのエッセイを書きます。リーディングは1時間で40問、3つの長文を読むので時間管理が重要です。そして、スピーキングはスピーチを考えるのにも実際にスピーチをするのにも制限時間があり、自分の言いたいことを簡潔にまとめる必要があります。時間制限のプレッシャーとは別に、ビザ取得・大学進学のために定められたスコアを取らなければいけないという不安なども出てくるので、思い通りに進めづらい試験でした。
2-2. 専門的な内容が多い
IELTS Academicでは、大学の講義や学術論文レベルの英語が出題されます。例えば、リーディングでは「環境問題」「医学」「心理学」「社会学」などの専門的なテーマが扱われ、ライティングでは社会問題について論理的に意見を述べることが求められます。他にもIELTSはイギリスが関係している試験のため、イギリス英語の発音や単語が多く使われます。普段アメリカ英語に慣れている人にとっては、スペルや表現の違いが混乱のもとになります。
2-3. 正確な文法と語彙力が求められる
IELTSでは、スピーキングとライティングの評価基準の一つに文法の幅と正確性(Grammatical Range and Accuracy)という項目があり、ちょっとした”the”や”a”忘れなどの文法ミスが減点の対象になります。また、同じフレーズの使い回しも減点に繋がるので、簡単な単語ばかり使うのではなく、アカデミックな語彙を適切に使うことが求められます。日常会話で使いがちなI wannaやI’m gonnaはI want to やI am going toに置き換える必要がありますし、I’mなどの短縮系もI amに変えた方がいいと言われています。他にも、以下のようによく使う語彙は言い方を変えてレベルアップする必要があります。
I think | ➡ | I believe/ I am convinced that |
Many people | ➡ | A significant number of individuals |
Good | ➡ | Beneficial / Advantageous |
Bad | ➡ | Detrimental / Harmful |
Help | ➡ | Assist / Support |
3. IELTS対策として僕がやったこと
高校2年の時、僕は初めてIELTSを受けました。当時は7.0以上を目指していましたが、最終的なスコアは6.5でした。その時僕はIELTSのスタイルをいまいち理解しきれておらず、特に対策が必要なライティングのスコアが目標とは程遠いものでした。大学進学前にもう一度受験した際は、IELTSで求められる英語と日常英語の違いを理解した上で、IELTSのフォーマットに慣れるための効果的な対策を行うようにしました。僕が行った対策は主に2つです。
3-1. アカデミックな英語に慣れる
まず、僕が行ったのは普段の会話とは違う、学術的・専門的な英語に慣れるということでした。そのためにはネットのニュースを1日1記事、毎日違うトピックの文章(月曜日は科学、火曜日は経済、水曜日は政治…といった感じで)を読むことを習慣づけました。そしてわからなかった単語・フレーズは全てメモし、その単語を使って1文作り、実際に使って覚えていくというスタイルが効果的でした。また、IELTS Essential WordsというIELTS対策用の単語帳を活用しました。
その他にもイギリス英語のアクセントや言葉遣いに慣れるため、BBC NewsやThe Guardianなどのイギリスのニュースメディアを積極的に利用しました。日本の学校で習う英語や僕たちの身近にある英語(YouTubeだったりポッドキャストだったり)ではアメリカ英語が使われることが多いのですが、イギリスに留学した時のことも考えて早い段階からイギリス英
3-2. 試験スタイルに慣れる
次に僕が行ったのはとにかく問題を解いて、IELTSの試験スタイルに慣れることでした。IELTSの場合、英検と違って過去問が公開されていないのですが、公式サイトにあるサンプル問題、ブリティッシュカウンシル公認の問題集、IELTSの設問を作成しているCambridge English Assessmentとケンブリッジ大学出版局による問題集などが役立ちます。問題を解くときは本番と同じ時間設定で、試験のプレッシャーに慣れるような模擬練習をしていました。
3-3. 人に自分の解答を見てもらう
ライティングやスピーキングに関して、僕は家庭教師を活用し、エッセイの添削・スピーキング(面接)の練習を手伝ってもらいました。自分で後から解答を見直すといった方法もありますが、他人に見てもらって客観的なアドバイスをもらうことは評価基準のFluency and Coherence(流暢さと論理的なつながり)、 Lexical Resource(語彙力)、 Grammatical Range and Accuracy(文法の正確さと多様性)、 Pronunciation(発音)の全部を改善できる良い機会になるので有効的に活用するべきだと思います。
まとめ
IELTSが難しいと感じる理由は、正確な英語力が求められる試験スタイルにあると思います。試験のフォーマットを理解して、対策をすれば高得点は狙えるので、計画的に勉強しましょう。