マンチェスター大学日本人会会長: 「日本人」の使命感を胸に、語学とビジネスで広げた視野【インタビュー】

Ryotaroさん

⽇本の公⽴⼩学校を卒業後、イギリスのボーディングスクール(全寮制学校)で7年間学び、その後The University of Manchester(マンチェスター⼤学/ UoM)に進学。ポルトガル語とビジネスマネジメントをダブル専攻し⽇本⼈会の会⻑を務める傍ら、パーカーブランドを運営。ラグビーに夢中。

マンチェスター大学: ポルトガル語とビジネスマネジメント専攻

専攻について教えてください。

マンチェスター⼤学のSchool of Arts, Languages and Culturesに所属しており、Portuguese and Business Management(ポルトガル語とビジネスマネジメント)の2つを専攻しています。

ポルトガル語は語学としての4技能を習得しながら⽂化⾯や歴史⾯の内容も学びます。この専攻の⼈数は学年で15⼈ほどと少ないため、lecture(講義)は会話教室のようなアットホームな環境で先⽣や学⽣同⼠の対話が活発に⾏われます。当然、どの授業に⾏っても同じメンバーと会うため、全員顔⾒知りで仲が良いです。3年次になると専攻している⾔語が話される国で1年間の交換留学に⾏きます。私はブラジルのサンパウロ⼤学に留学します。

ビジネスマネジメントでは、選べる講義の内容はさまざまです。私はマーケティング理論の基礎、国別の資本主義やその歴史などを履修しました。こちらはポルトガル語の授業とは異なり講義となると100⼈規模で⾏われます。講義のほか、seminar(セミナー)があり、その週の講義内容に関連したものを実践します。例えば講義で経済情報がまとめてあるグラフが出され、読解⽅法を教わったらセミナーでは作り⽅を学び、実際に⼿を動かします。授業の数は多くありませんが、テスト期間が近くなるとリーディングの課題が増えます。内容をしっかり読んで、関連の⽂献を調べながら理解を深めます。

【奨学金/ファウンデーションあり】マンチェスター大学|留学情報とランキング
【奨学金/ファウンデーションあり】マンチェスター大学|留学情報とランキング 創立1824年、200年の歴史があるThe University of Manchester(マンチェスター大学)は、産業革命時代から技術教育分野で世界に貢献してき...
その専攻を選んだきっかけは何ですか?

ポルトガル語を専攻したのはイギリスで通っていたボーディングスクールの環境が⼤きく影響しています。そこは50カ国以上から⽣徒が集まるグローバルな校⾵で、周りは常にさまざまな⾔語が⾶び交っていました。私は16歳の時にスペイン語を学び始め、スペイン語が話せる友⼈と⽇常的に会話していたことでかなりのスピードで上達しました。その成功体験から、⼤学でも⾔語を学びたく、南⽶で主要なポルトガル語を選びました。

ビジネスに関しては、⾃分たちで何かを作り上げて、それをお⾦に変えられるところが⾯⽩いと思っています。

実は中学⽣の頃、学校に置いてあった無料のオレンジを搾ってジュースにして寮の部屋まで配達するというサービスを思いつき、1杯0.5ポンドで販売したことがありました。インスタで宣伝すると毎⽇のようにオーダーが⼊り、この無謀なビジネスは思いのほか⼤繁盛しました。しかしオレンジの減り具合が激しくて学校側にバレてしまいました。2週間で私の初めてのビジネスは幕を閉じましたが、その過程はとても⾯⽩く、有益でした。

また、⾼3の秋には卒業⽣の起業した話など、キャリアについての講演を聴きました。それをきっかけに卒業生とつながり、2カ⽉間メキシコとコロンビアで⽣活も共にするインターンをする機会に恵まれました。起業している⽅々の活動を肌で感じ、彼らの⾏動⼒やメンタリティー、情熱に魅了さました。このインターンの経験が更なるビジネスへの興味につながりました。

ポルトガル語とビジネスマネジメントを1年半以上学んで、どうですか?

この2つの組み合わせを選んだのは最⾼の決断です。ポルトガル語は⽇に⽇に上達を感じます。新しい単語や表現を学び、頑張れば結果が出るのでやりがいを感じます。ポルトガル語に加え語学と同じくらい関⼼があり、かつ語学と全く違う分野であるビジネスを勉強することでバランスが取れていると思います。これよりいいチョイスはないと⾔えるくらいすごく楽しいです。

「みんなを笑顔にしたい」日本人会の会長として

Manchester Japan Society(日本人会)の会長を務めていると聞きました。

昨年度会⻑職に⽴候補し、当時の執⾏部による⾯接などを経て選んでいただきました。僕は11歳からイギリスの全寮制学校に⼊り⽇本⼈は数⼈しかいなかったです。そのため、必然的に⾃分はある種その場の「⽇本代表」として⽇本のイメージを背負っているといったnational identity(国民意識)がありました。そのため、「⽇本のために何かをやりたい」と常に思いながら⽣活していました。この思いは⼤学に⼊ってからも続いていて、⽇本⼈会の会⻑になれば⽇本のためにできることの幅が広がると思いました。

日本人会の仲間たちと
日本人会の仲間たちと
会長として、どういう方針で会を運営していますか?

会としての仕事をしっかりやるプロフェッショナルな⾯はもちろんですが、「楽しくないといけない」と思っています。笑顔を絶やさず、元気で楽しい会にするのがモットーです。会⻑の雰囲気が組織の空気を⼤きく左右するので、⾃分が先頭に⽴って笑顔で、楽しく取り組むことを⼼がけています。

Ryotaroさんが会長になってから始めた取り組みはありますか?

⾃分の代になってからいつくか変更したことがあります。 定期的に⾏われている「パブソーシャル」という皆がパブに集まって飲みながら交流するイベントがあります。昨年まではただ場所を提供しているだけでしたが、今年からはビンゴ⼤会や変顔⼤会などのミニゲームを追加し、飽きずに参加してもらえるようにしました。

また、イベントのクオリティを上げるため、会員制を導⼊し、年間7ポンドの会費を徴収しています。

もう1つ⼤きなイベントとしてロンドンで開催された⽇本⼈のボートパーティに初めて参加したことです。イギリスの13の⼤学にいる⽇本⼈学⽣約700⼈が集まり、UoMからも25⼈が参加しました。他⼤学にいる⽇本⼈と交流できた実りのある会だったので来年につなげていきたいです。

マンチェスター大学でのビジネスチャンス

課外活動は日本人会以外に何かしていますか?

授業で習ったこともそうなんですが、インターンの経験を何かに⽣かしたいと思い、昨年夏に「Manny Bees」というパーカーのブランドを⽴ち上げました。 UoMの公式グッズはいろいろありますが、あまりクオリティが良くないと感じております。値段か⾼い割にそれほどかわいくない点にも注⽬し、それなら⾃分で作ろうということで始めました。

友達に助けてもらいながら、Student Union(学⽣会館)のフリースペースで試験的に展⽰販売をしたり、インスタに投稿する宣伝⽤の写真の撮影会を開いたりしてすごく楽しいです。これをマンチェスターの思い出の⼀つとして⼿に取ってほしいので、クオリティが良くて、かわいくて、低価格にできたものを提供したいと思っています。

自身が立ち上げたパーカーブランドの宣伝用写真
自身が立ち上げたパーカーブランドの宣伝用写真
大学に入ってからもインターンしていますか?

はい、⻑期休暇にインターンします。昨年はドイツのミュンヘンのオークションハウスに⾏きました。出品者から物を預かって、それをオークションで売ります。先ほど⾔ったコロンビアとメキシコでのインターンは今も続けています。例えばソフトウェアの新サービスのピッチプレゼンテーションを⽇本の⻁ノ⾨ヒルズやスペインのビルバオで行うなどをしました。このようにマーケティング関連のことを主にしています。

ケガをしても冷めないラグビーへの愛

スポーツは何かやっていますか?

⼩1からサッカーを始め、中3にラグビーに転向し、それからずっとラグビーをやっています。しかし2年前の夏、プレイ中に転倒し膝の前⼗字靭帯を痛めてしまいました。そこからは体を動かす程度です。本来は⼿術をして治すべきですが、術後のリハビリを考えると留学に影響が出てしまうため今は諦めています。そう⾔いつつもたまに我慢できずラグビーをしてしまいます。

打ち込んでいるラグビー
打ち込んでいるラグビー

マンチェスター大学留学生活: 日常の幸せ

現在は寮に暮らしていますか?

初年度は学⽣寮に暮らしていました。2年⽣になってからは⼤学より南のエリアで友達3⼈と⼀緒にシェアハウスしています。⼤学からやや遠くバスで20分かかり、毎⽇満員バスに乗ってキャンパスを往復しています。

このエリアはナイトライフが活発で、夜は結構騒がしく⽇本⼈学⽣からあまり好かれないエリアかもしれないです。⽂化的に合っていないというか。ただ、私は⼈と交流したり友達とパブに⾏ったりするのが好きなのでこのエリアは⾃分に適していると感じています。

シェアハウス生活はどうですか?

すごく楽しいです。ハウスメートたちとは仲も良くトラブルもありません。これ以上良いハウスメートはいないんじゃないかと思うくらいです。

また、スーパーが近いというロケーションもすごく重要です。シェアハウスをすると話し合った時にスーパーから近いところにしようと決めました。夜、急にチョコチップアイスを⾷べたくなった時にすぐに買いに⾏けるんですよ。この利便性は本当に⼤事ですね。家でラグビーの試合を⾒ている時なんかは、ハーフタイムにダッシュで買いに⾏っても後半戦に間に合うんです。

食事はどうしていますか?ハウスメートと一緒に作りますか?それとも各自ですか?

たまに⼀緒に作って⾷べることもあるんですが、基本的には各⾃で作りますね。⾷べたいものが全然違うので。僕はスパゲティを作ることが多いです。安くて簡単で速い、⼤学⽣に必要な三要素がそろっています。そしてビタミン不⾜には気をつけるようにしています。

マンチェスターは学生が住みやすい街

マンチェスターに2年間暮らしてみて、どうですか?

とても住みやすい街だと思います。マンチェスターはシティセンターの端から端まで歩いて30分しかかからないです。⾏きたいは基本的に徒歩範囲内です。加えて、バスが24時間⾛っているのがありがたいです。

街と⼤学が⼀体になっているところも住みやすいと感じる理由です。ロンドンの⼤学だとキャンパスが街の中⼼から離れているところが多いのですが、マンチェスター⼤学はキャンパスの周りにいろいろな店や施設がそろっているので便利です。

日本の公立小学校を経てイギリスへ留学

11歳に渡英したとのことですが、どういう経緯でイギリスに来ることになったのですか?

イギリスに⾏こうと思ったのは⼤きく2つの理由があります。1つは当時サッカーをしていて、海外のレベルで挑戦してみたかったからです。もう1つはハリウッド映画にすごくハマっていて、英語への憧れがあったからです。

⼤⼈になるとアイデアが浮かんでもあれこれ考えてしまうと思うのですが、当時⼩学⽣の私は「サッカーがしたい」「英語がしゃべりたい」という2つの原動⼒だけで両親に相談したら背中を押してくれました。イギリス南東部の中⾼⼀貫のボーディングスクールに⼊学し留学⽣活が始まりました。両親は⽇本に残り、単⾝で渡英して今に⾄ります。振り返ると当時はよくやったなと思います。

最初の1年間はとにかく何をやっても⼤変でした。⾔葉が通じなくて、指⽰が理解できず何をすればいいか分からなかったです。授業にもついていけなかったです。意味が分からないことで怒られたこともありました。

高校時代の凌太朗さん
高校時代の凌太朗さん
英語があまり話せなかったということで配慮してもらいましたか?

僕は11歳で⼊学しましたが、この年齢で英語ができないという⼦がそれほど多くなかったので特別扱いはなかったです。そういう体制が整っていなかったと言ったほうが正確かもしれません。⾼校⽣の学年になると留学⽣も増えるので英語の補習クラスなどがありました。ですが、私の⼊学した年齢ではそれがなかったので、英語の海に投げ込まれた感じです。今考えるとそれが良かったですね。最初からネイティブと⼀緒に授業を受けたので、現地の⼦たちとの関わり⽅が早いうちに分かり、彼らに溶け込むのが⽐較的スムーズでした。

つらいことだらけだった生活をどうやって乗り越えたんですか?

気合ですね。本当は諦めることもできました。両親に「もう無理」と⾔えばやめることができたと思います。でも自分としては諦めるという選択肢はなくて、何が何でもやり切りたかったです。我慢と忍耐⼒で乗り越えた当時の経験が今の私の礎になっています。

留学生活に慣れるまでどれくらいかかりましたか?

1年もかからないうちに慣れました。英語⼒に関しては、1年⽬は⾃分の気持ちを少し伝えられて、2年⽬は相⼿の話を聞いてしっかり受け答えができるようになりました。3年⽬になると思い通りに会話ができました。このように成⻑していることを⾃分でも段階的に実感しました。3年⽬が終わる頃にはいわゆる“英語ペラペラ”になっていたと思います。

その時点で英語が話したいという目標はクリアしたということですね。

はい、確かに英語が学びたいという1つの⽬的は達成しました。しかし私にとって英語は⽬標ではなく1つのスキルです。⽬標を達成したというよりはある1つのスキルを⼿に⼊れたと捉えています。

なるほど、ではもう1つの目的だったサッカーはどうなりましたか?

僕が⼊った学校にはChelsea Foundation(チェルシーファンデーション)がありました。Chelseaはイギリスプレミアリーグのサッカーチームで、そのアカデミーファンデーションに加⼊しました。このクラブがあったことが⼊る学校を選んだ理由の1つです。

でもラグビーをやってみて分かったのですが、⾃分のサッカーへの愛というか、情熱はラグビーに⽐べると全然⾼くなかったです。ラグビーの魅⼒には⼀試合で染まりました。今は「ラグビー⼤好き!」です。

ラグビーが好きになったのは試合を観戦したのがきっかけということですね。

いえ、16歳の時、他校との試合に「1⼈助っ⼈が欲しい」と⾔われたことが始まりです。「じゃあ俺がやるよ」と、タックルの仕⽅すら分からないのに出場しました。

初戦で相⼿のデッカい選⼿がボールを持ってこっちに向かってきました。私の後ろがタッチラインだったので抜かれたらアウトになってしまうと思い、必死に守ろうとしました。アタックのやり⽅が分からないのでその選⼿に抱きつき、どうにかして⽌めようとしました。だが次の瞬間、相⼿の肘がバーンと顔を直撃し、⿐が折れてしまいました。結局トライを決められ、「俺の⿐⾎はなんだったんだ」となりましたが……。

それでも、ラグビーのメンタリティーや団結感がすごく好きになりタックルも楽しいなと思い、サッカーを置き去りにしてラグビーに転向してしました。

普通はトラウマになると思うのですが、すごいですね。

それは両親と家族のお陰だと思います。

実はラグビーで前⻭が1回折れかけたことがあります。普通の親御さんですと動じて「そんなスポーツやめなさい」などと⽌めるのではないかと思うのですが、私の⺟は「しっかりやりなさいよ」と。こんな感じで、⼤変なこともサポーティブに前向きにしてくれたことでトラウマにもならずに続けることができています。また、そういう姿勢は海外⽣活する上での助けになっています。

海外大学生の就職: 日本の企業に就職したい

卒業後はどういう予定ですか?

⽇本の企業で働きたいです。

海外で勉強した学⽣は結構外資系企業に就職する⽅が多いと思います。でも私は⽇本⼈⼀⼈⼀⼈が⾃信を持ち、世界で戦うリーダーや組織の成功例を増やしていきたいからこそ、⽇本企業にこだわります。その理由は⽇本⼈の団結⼒というものはすごく強いと感じているからです。

例えばサッカーを⾒ても、ブラジルとの試合では、選⼿⼀⼈⼀⼈のレベルは圧倒的にブラジル⼈のほうが⾼いですが、最後は⽇本が勝ちます。なぜかというと団結⼒という⽇本の素晴らしさがあるからです。これはビジネスでも共通するところがあると考えています。⽇本企業で同じ⽬標に向かって団結すれば⼤きなものを⽣み出していけると思います。

The University of Manchester
Part of the prestigious Russell Group of universities, The University of Manchester is the largest single-site universit...

関連記事

Related articles

【イギリス高校留学】15歳で親元を離れたボーディングスクールでの生活

私は15歳から親元を離れ、イギリス留学を始めました。大学もイギリスで、卒業後もしばらく滞在していたため、気づいたら14年間イギリスにいることになっていました。苦あり楽ありの留学体験をお届けします。 イギリス全寮制高校への道: 留学を決意するまで 小さい頃、父の仕事でアメリカに行っていたことがあり、英語には多少自信がありました。しかし、滞在は4歳から6歳までのわずか2年半だったため、帰国し中学生になった頃には英語力がかなり落ちていました。ある日、母と当時の英語の家庭教師からの要望に応じ、英語のエッセイを書いてみました。すると「アメリカの小学校2年生レベルだね」と言われ、ショックを受けました。これを機に、英語をちゃんと勉強しようと決意しました。 ちょうどその頃、インターナショナルスクールに通っていた2つ上の兄がイギリスの大学に進学したいと言ったので母と3人でイギリスの大学の下見に行くことになりました。自分にとって未知の国だったイギリスに惹かれていたのと、いつかは留学したいという思いが相まって、ついでに高校も見ようと母と決めていました。 ノッティンガムシャーの高校見学 複数の大学や高校を巡り、その中のひとつの高校にとても良い印象を持ちました。イギリス東中部、Nottinghamshire(ノッティンガムシャー州)のWorksop(ワークソップ)というところにある高校です。先生が優しく、校舎も広くてかっこよく、生徒達の行儀もとてもよかったです。みんな紳士的で礼儀正しく、先生方の指導が行き届いていることが伝わってきました。 若くして単身留学することを心配していた母も、このしっかりした校風が気に入りました。校長先生とお話をし、その後校舎見学をしました。また、私が医学部志望だったため、英語力をネイティブ並みに上げる必要があると言われ、もうその夏から入学することを勧められました。もともとイギリスでそのまま医学部に行くつもりはなかったのですが、先生方や両親と相談し、見学に行った2ヶ月後には留学を決心しました。 学校の校舎 イギリス高校留学|ボーディングスクールの生活とは? 寮のシステムと制服 イギリスに着いてすぐ、寮長さんや寮母さんに挨拶しました。説明を受け、私はYear 10(日本の中学3年に該当)に入学しました。日本の中学に相当する学年では制服が決まっています。ブレザー、シャツ、スカート、そしてcravatと呼ばれるネクタイのようなものに加え、靴下も学校指定のものを着用しました。 この学校には数種類の寮があり、女子は学期中ずっと過ごす「Full boarding(フルボーディング)」用、平日だけ暮らす「Weekly boarding(ウィークリーボーディング)」用、そして「Daily student(夜には家に帰る通学生)」用の寮がそれぞれ1つです。男子寮はDaily studentと住み込みの生徒が混ざっていて5~6つの寮がありました。各寮には30~40人くらいの生徒がいました。 1つの寮には最下級生のYear 9(中学2年生)から最上級生のYear 13(高校3年生)までが一緒に暮らしており、2、3人部屋もあれば1人部屋もあります。新入生は基本的に多人数部屋に割り振られ、最高学年の生徒は1人部屋が与えられました。私は最初3人部屋に入りました。その後2人部屋になったり3人部屋になったりの繰り返し。最終学年になったらついに1人部屋を手に入れました。毎学期、部屋のメンバーは先生が決めて変えていました。 校長先生の住むお家。学校の入口のすぐ隣にある 深夜の勉強と寮のおきて 渡英当初の英語力では会話についていくのが精一杯で、授業は全く理解できませんでした。現地の生徒ばかりの学校で、私の学年にいた留学生は他に男子2人だけでした。英語の授業以外は現地の生徒達と一緒に受けるため、取り残されないように懸命でした。深夜と早朝の時間を活用し、ひたすら教科書の翻訳をする日々が続きました。 ある明け方、普段電気が点いている部屋が消灯されたので階段に座って勉強していました。すると寮母さんが駆けつけてきて、「Yui、こんな時間に勉強しないの!ここはアラームがついているの。勉強は日中だけでも十分なのだから夜はしっかり休みなさい」と注意されてしまいました。どうやらこの階段にはアラームが設置されていて、人が入ると寮母さんなどの責任者だけが知らされるようになっていました。それ以来、夜中の勉強はやめました。 ホームシックと戦う日々 寮生活はとても厳しく、朝1回、お昼前に1回、お昼後から夕方にかけて3回、そして夕飯後の宿題時間に3回、点呼がありました。そして寝る前には先生が各部屋を回って携帯電話を没収し、電気も強制的に消されます。しかしほとんどの子は偽物の携帯を預けていました。 留学した最初の年はスマホもWi-Fiもなかったので私はガラケーを使っていました。インターネットは共用のパソコンルームのみで使うことができます。家族と連絡を取るときは国際電話でした。 週に1回、Skypeが使えるパソコンを予約して家族とビデオ通話することができました。しかし世界中から留学生が来ているので常に予約枠の取り合いでした。日本との時差の関係で都合の良い時間帯が限られ、目当ての時間枠が取られてしまってよく落ち込んでいたものです。 最初の1年間はホームシックでほぼ毎日泣いていました。言葉があまり通じなかったため友達もできなかったです。「かわいそう」と寄ってきてくれる生徒や授業で一緒になった生徒とたまに話す程度でした。都会ではなかったので、アジア人が少なく、奇異の目で見られているように感じました。 留学1年目の冬。膝下まで雪が積もるほどの大雪でした 辛かった陸軍の訓練 私の学校はCCF(Combined Cadet Force)という連合将校養成隊の時間があり、Army(陸軍)の訓練をしました。陸軍の他に、Navy(海軍)、Royal Air Force(空軍)もあり、現地の生徒は選択が可能でした。その頃、私たち留学生は選べず、一番人数の多い陸軍に自動的に振り分けられました。軍隊用の重たい迷彩服を着て寒い中2時間くらいマーチングし、銃の練習や匍匐前進などをするのはとても苦痛でした。また、落ち葉や枝を集めたり、数人組で運動させられたりと、グループでの活動が多かったです。友達の少ない私には楽しくはありませんでした。 礼拝の時間でスピーチに挑戦 一方で、週5回の朝のChapel(礼拝)の時間は比較的平和な時間だと感じました。讃美歌を歌い、お話を聞くだけの時間でした。木曜と土曜日以外の曜日に毎週、礼拝が行われました。日曜日だけ、朝の礼拝は全校生徒ではなく、寮生のみの参加で人数が少なかったです。そのため留学生にも皆の前で話をする機会が与えられました。 私も数回日曜日にスピーチした後、全校生徒の前で話す機会をもらい、3.11の出来事などを話しました。現地の生徒が多かったので、彼らにとって海外に触れられる貴重な機会だったと思います。その他、日本や中国の祝日の時には文化のお話もしました。 日本ではクリスマスは外で過ごし、お正月は家族で過ごすものだと伝えたら、イギリスとは真逆なので驚かれました。話した内容に興味を持ってくれ、それをきっかけに会話が弾むことがよくありました。先生方は、私たち留学生が学校に溶け込めるよう、常に様々な工夫をしてくれていました。 チャペル 深める交流: スポーツとイベントの舞台裏 ハリーポッターの世界!イギリスならではのスポーツ イギリスのBoarding school(ボーディングスクール・全寮制学校)特有のスポーツの時間もありました。季節や性別によって競技が分けられています。秋には男女共にもホッケー、冬は女子がネットボール、男子がラグビー、夏は水泳、クリケット、クロスカントリー、ラウンダースなどから自由に選択できました。 ハリー・ポッターに出てくるような寮対抗の大会や他校との試合もありました。他校との試合では、全生徒が実力別に分けられ、相手校の同じレベルのチームと戦います。そして試合後は相手チームと一緒にSupper time(おやつの時間)があり、ポテトやパン、フルーツ、ケーキなどを一緒に食べました。 ラグビーコートが9面もある広大な敷地を持つ学校。裏にはゴルフコースも プロムやダンスパーティー 年に数回、寮ごとのパーティーがあり、他の寮の子も主催寮の生徒に招待されれば参加できました。男子寮が開催するダンスパーティーに出席する際はProm(プロム)に行くような感じのドレスアップをしました。また、冬休みに入る前は各寮の寮生全員が一丸となって練習したダンスを全校生徒の前で発表するイベントもありました。 その他にも私はInternational Eveningを主催したことがあります。各国の生徒が協力して国の料理を作り、みんなでビュッフェスタイルで食べるイベントです。先生方に協力していただき、ダイニングホールとキッチンを借りて行いました。そこで日本人チームはトンカツを作りました。 日本人チームが作ったトンカツ 英国ボーディングスクールの授業内容 1年目はGCSEを勉強しており、Science(理科)、Mathematics(数学)、English as a Second Language(英語), Religion(宗教学)とStudent Selected Studies(選択科目)でした。選択科目にはGeography(地理)、History(歴史)、Art(美術) , Design and Technology(デザインとテクノロジー)、Food and Nutrition(料理と栄養学)などがありました。 私は理系だった上、英語の授業についていくのに必死だったこともあり選択科目ではArt、Design and Technology、そしてFood and Nutritionを選択しました。英語がネイティブの生徒はフランス語なども選択可能でしたが、留学生は必ずEnglish as a Second Language(ESL)をとらなければならず、他の言語は選択できませんでした。ESL以外の授業は全て現地の生徒たちと一緒でした。 私は日本で購入した電子辞書をどの授業にも持っていき、常に単語の意味を調べながら受けていました。最初の1年は辞書を使用して試験を受けることが許されていました。試験の際には先生から英和辞典が手渡され、それを使って試験に挑んでいました。 イギリス高校留学で得たこと 先生のサポートに感激した日 特に印象に残っているのは理科の授業で試験が返却された時のことです。私は60%しか得点できず、周りの不真面目な子たちと同じくらいの点数でとても悔しかったのですが、先生は私の努力を褒めてくれました。 しかし他の生徒がそれを聞いて「でも辞書を使ってるしね」と嫌味を言いました。それに対し先生は「じゃあ君は他の国に行ってその国の言語でテストを受けた場合、辞書を使えばこの点数取れるのか?簡単なことではないよ、母国語で受けても簡単じゃないんだから」と返してくれました。この先生のサポートは今でも忘れられません。このように素晴らしい先生方がたくさんいる学校でした。  Comfort zoneに戻るか挑戦を続けるかの決断 渡英してから1年経った時の夏休みに帰国した際、正直イギリスに戻るか少し悩みました。友達が少なく、授業も難しい。でもやっと英語にも慣れてきたこと、そして何よりも先生方の期待に応えたい気持ちがあり、もう1年、せめてGCSEだけでも終えようと、戻る決心をしました。 重たい足を引きずり、再び寮に戻ると、先生が「戻ってきてくれてよかった」と声をかけてくれました。複雑な心情で戻ってきたけれど先生方がいれば頑張れると思いました。 私の学年に新しい留学生が増え、寮にも何人か入ってきました。英語が全く話せなかった中国人の生徒が1人いて、その子に英語を教えながら暮らしていたらいつの間にか自信もつき、留学生活が楽しくなっていました。そして授業にもついていけることに気が付きました。友達も増え、去年から同じクラスだった生徒達に「Yui、英語すごく上達したね」と言われたときは本当に嬉しかったです。 おかげでGCSEは良い成績で卒業できました。次回はA-level、やホストファミリー、休暇の過ごし方について書きたいと思います。 https://passport-to.com/articles/9/

【PPE専攻】日本の高校からキングスカレッジロンドンに進学するまで

はじめまして、Ayanoです。2024年9月からKing’s College London(KCL)にて政治学のファウンデーションコースに1年間通いました。2025年9月から同大学PPE(Philosophy, Politics and Economics/哲学・政治学・経済学)という学部課程に進学する予定です。 海外進学のきっかけ 幼少期~中学: 海外との関わりは特になく 私は幼少期から特別海外に興味があったわけでも、英語に力を入れていたわけでもありませんでした。海外進学する人たちに比べると、実際に海外に興味を持ったのは遅かったと思います。 留学に興味を持った最初のきっかけは、中学生の頃に両親との会話から「日本の大学はあまり学問に集中できる環境ではない」という漠然とした印象を持ったことです。それなら「卒業が大変とも言われる海外の大学で学びたい」と思うようになりました。 しかし当時、英語は中学校の授業で触れる程度で、実力不足を感じたうえ、3年以上後の大学受験のイメージがわきませんでした。 中2の終わりにコロナ禍が始まり、予定していた初めての短期留学が中止になってしまいました。そのため、中学生の頃は何か留学に関するものに特別取り組んだりはしませんでした。 初の留学: 高校の半年間をカナダで過ごし その後、高校では短期・長期の留学プログラムが豊富な学校へ通いました。実際に留学を経験した先輩の話を聞く中で、私も留学に挑戦したいという思いが強くなり、半年間のカナダ留学を決意しました。 カナダを選んだ理由は、元々カナダの大学教育システムに興味があったこと、治安の良さ、そして何より通っていた高校がカナダ留学に一番力を入れていたことが関係しています。 実際に半年間留学する中で、多くのことを経験しました。学校の授業スタイルは日本に比べてディスカッションが多く、当初は緊張してなかなか発言できませんでしたが、少しずつ慣れていきました。 また、1つの正しい答えが求められるのではなく、明確な答えがないテーマについて意見を言うのが新鮮に感じられました。学校の友達や、同じホームステイ先に滞在していた留学生のハウスメイトとの交流を通して、日本以外の国やその文化について知ることができたのも楽しかったです。 私はこの留学で初めて地元を離れて新しい土地に行きました。カナダで暮らしながら、新しいことを経験したり、人との出会いを通じて、「こういう生き方もあるんだ」と気づくことができました。そうした体験から、人生をどう歩むかについて新しいアイディアをもらったように感じます。 そして「自分は将来何をしたいのか」「どういうふうになりたいのか」を真剣に考えるようになりました。日常の小さなことにも新鮮さを感じ、今まで当たり前だと思っていた価値観や考え方を見直すきっかけになったと思います。 イギリス大学進学が現実味に 留学が終わる頃には、半年前の自分とは大きく違うことを実感していました。英語力が海外進学のレベルに追いついてきたこと、実際に海外で生活してみたことで経験値がついたこと、そして私自身が「もっと海外で挑戦したい」という思いが強くなったことから、高2の終わりに帰国した頃には海外大学受験を決意しました。 当初は入学後に専攻を決める北米の大学に興味がありました。しかし、高校での留学をきっかけに、学びたいことが決まったこともあり、専攻に関することだけを学べるイギリスを選びました。イギリスには名門大学が多く、治安も比較的良いので、今になって振り返るとイギリスを選んでよかったなと思います。 【キングスカレッジロンドン】大学合格までの道のり イギリスの大学選び イギリスへの大学進学を決めた後は、志望校選びに取りかかりました。高3の時に、母とイギリスへ大学見学をしに行きました。その際に肌で感じたロンドンという街が気に入り、そこに住みたいと強く思い、ロンドンの大学を第一志望にしました。 周りに海外進学を目指す人はいなかったため、情報収集が特に大変でした。Personal Statement(志望動機書)の書き方から志望校の選び方など、わからないことが多く手探りでした。また、通っていた高校から海外進学が珍しかったため、出願に必要な推薦書などの書類発行にも時間がかかり、不安な時期もありました。 普通の高校から海外進学は大変なことも多かったですが、結果としてKing’s College Londonのファウンデーションコースへ合格することができ、今にいたります。 通学路から見えるビッグベン キングスカレッジロンドンのファウンデーションコース KCLのファウンデーションコースから同大学の学部課程に進学するには、基本的にこのファウンデーションでの成績を元に決められます。進学できる学部課程も、ファウンデーションで何を勉強するかで変わってきます。 KCLのファウンデーションコースは分野ごとに大まかに分かれています。例えば、文系のファウンデーションであれば人文系のものと、私が通った政治学の2つあります。他にもビジネス系のものや、工学、物理学、コンピューターサイエンスなど、理系はかなり細かく分けられています。 それぞれの分野のファウンデーションから進学できる複数の学部課程があらかじめ定められており、その中から進学希望を提出します。ファンデーションで学んだことに合った学部のコースを選び、進学に必要な成績要件さえ満たしていれば、無条件で希望の学部課程へ進学できる仕組みです。 例えば、私が通った政治学のファンデーションからは、私が進学するPPEのほか、法学部や国際関係学、国際開発学、戦争学部などへ進学することができます。 https://passport-to.com/articles/16/ 実際にイギリスの大学で1年過ごしてみて 私は2024年9月から2025年6月まで、ファウンデーションコースを履修しました。ファウンデーションコースの学生は学部生と隔たりなく、同じようにキャンパスにある教室や設備を使って授業を受けていました。次年度からの学部課程に向けて大学での勉強や生活に慣れることができ、留学生としてはとても良かったと感じています。それまで書いたことのないアカデミックなエッセイの書き方もこの1年で学びました。 ファウンデーションコースの授業が行われた建物 この1年を終えて感じているのは、「イギリスの大学を選んだ私の決断は間違いなかった」ということです。「勉強に集中できる海外の大学で学びたい」という当初のきっかけを十分に叶えられたからです。 日本の大学ももちろん勉強は大変だと思いますが、イギリス含め海外の大学では学ぶことに対して貪欲になれる環境があります。その学問への意欲をサポートできる大学施設や教授、切磋琢磨しあえるコースの仲間に恵まれ、とても充実した1年を過ごすことができました。学ぶことがこんなにも楽しいと思えたのは人生で初めてですし、貴重な経験をさせてくれている両親には感謝でいっぱいです。 キングスカレッジロンドンにある自慢の図書館 PPE(哲学・政治学・経済学)の面白さ PPE(Philosophy, Politics and Economics)とはイギリスの大学によくある学部課程で、哲学・政治学・経済学の3つの学問を学べるのが特徴です。3つの学問を学べることから、社会の課題を多面的に捉え解決しようとするスキルが身につくことに惹かれました。自分は比較的飽き性なので、1つの学問だけに集中しないPPEに興味を持ちました。また、キャリアにも応用しやすいこともPPEを選んだ理由の一つです。 ファウンデーションコースではPPEの中の政治学のみを学びました。哲学と経済学にはまだ触れていませんが、それでもPPEの面白さを想像できます。政治学を学ぶ中で、世の中の出来事や課題はほぼ必ず多面的であると感じました。 例えばイギリスのEU離脱の理由には、EU法の拘束から脱して法律・政策を自国で決定したいという主権回復(政治)、イギリス人としてのアイデンティティを重視するナショナリズム(哲学・価値観)、EUへの拠出金や貿易規制といった経済的要因(経済学)が複雑に絡み合っていました。 こうした学びから、政治を単独で理解するだけでは不十分であり、哲学的な価値観や経済的背景など、多面的に物事を分析することの面白さを感じました。これら3分野を体系的に学べるPPEは、現代社会の課題をより深く理解し、解決策を探るための最適な学問だと考えています。 海外経験がなくてもファウンデーションコースが自信に 私は高校で留学するまでは、海外や英語といったものに縁のないバックグラウンドでした。 海外での本格的な学びについていくことができるかが不安でした。その中でファウンデーションコースが必要だというイギリスのシステムは留学生として良かったなと感じます。学問的なベースだけでなく、エッセイやプレゼンといった実践的なスキルを学べたのが良かったですし、これからの私の学部課程においての基礎になると思います。 海外経験がなくても、環境が人を成長させてくれると私は感じています。 最後まで読んでくださりありがとうございました。皆さんの挑戦を応援しています! https://jp.education-moi.com/universities/uk/foundation

イギリス留学5年目、UCL生の1週間をのぞき見してみる?

「ロンドンに留学しています」 こう話すと、たいてい「オシャレ!」「楽しそう!」と返されます。でも実際はどうかというと、うーん……。楽しいこともありますが、毎日そんなキラキラしていないです。授業と課題、自炊とバイト、たまにやってくるホームシックと日照不足。SNSでは見えない部分が、この生活にはたくさんあります。そんな時間も全部ひっくるめて、私の留学生活を作り上げています。 今回はそんなリアルな1週間を紹介してみようと思います。これから留学を考えている人、留学生は1日をどう過ごしているのかが気になる人に届いたらうれしいです! 自己紹介:イギリスの高校からUCLへ 私は京都出身の20歳。2020年に渡英し、高校に入学。卒業後、University College London(UCL)に進学して、現在大学2年生。専攻は社会科学系で、経済や国際法、数学に環境学まで幅広く勉強しています。 https://passport-to.com/articles/3/ 住んでいるのはロンドン。都会だけど自然が多く、4月に入ると暖かくなってくるので休日には公園に行ったり、カフェの外のベンチでゆっくりしたりするのがお気に入りです。こういうひと時に、「ああ、私いまロンドンで生きているんだな」としみじみ感じます。 月曜日:全休だけど、むしろ一番ハード?! 週で唯一、授業がない全休の月曜日。だけど11時から22時までバイトしています。日本食レストランでホールを担当していて、立ち仕事+スピード勝負で、終わる頃にはいつもヘトヘト。 出勤前には、勤務先の近くにあるグリーンパークに寄って、一息つく時間をとっています。目を閉じながら深呼吸して、「今週も頑張ろう」と自分に言い聞かせています。この時間、地味に救いです。 バイト先では賄いで日本食を食べられるから幸せです!やっぱり誰かが作ってくれるご飯は美味しい。 いつもバイト前に寄るグリーンパーク 火曜日〜金曜日:授業、自習、バイト、グループ課題 火曜日から金曜日までは、授業がぎっしり……というわけでもないのですが、課題や自習、ミーティングで結局毎日フル稼働しています。 火曜日 11:00〜国際法の講義 午後:カフェや図書館で勉強 16:00〜グループ課題のミーティング 夜:友達とディナー🍽 授業やミーティングが入っていますが、他の日と比べるとちょっと余裕があります。友達と夜ご飯に行けるのはうれしくて、ご褒美タイムです。 友達と行ったカフェ 水曜日 日中:データベースの講義→中国語のセミナー 夜:課題の読み物+グループ課題のオンラインミーティング イギリスの大学は授業時間(コンタクトアワー)が少ないです。その分、自習や文献調査など自分でやる部分が多くて荷が重いです。コマ数が少なくても、全然ラクではありません。特にテスト前やレポート提出前は、ものすごいプレッシャーに押しつぶされます。 そして水曜日の夜に入りがちな予定は、グループ課題のミーティングです。日中はそれぞれ授業などがあり、なかなか集まれません。その結果、夜10時スタートなんてこともしばしば。でも、その中で「こんな考え方があるんだ!」と刺激を受けたり、ちょっとした雑談で笑ったりする時間が、実はわりと好きなのです。 木曜日 日中:経済・数学とデータベースの授業 帰宅後:連載原稿を書いたり家庭教師の準備をしたり 経済の2時間講義と数学で頭がパンパンになる日。でもこういう日は、「今日はこれだけでOK」と自分に言い聞かせるのが大事だと思っています。全部完璧にやろうとするとパンクしますからね。 金曜日 午前:数学の講義 午後:家庭教師 夕方:友達が出演している演劇を観に行く! ロンドンはミュージカルの街としても有名で、観光地としても超人気です。 私はそこまでミュージカルガチ勢ではありませんが、友達にすごく才能ある子がいます。その子が大学の演劇に出演しているのでたまに観に行きます。知人が舞台で輝いている姿を見るとなんだか不思議な気持ちになりますね。「私たち、同じ大学生だよね……?」と思ってしまうくらいプロ顔負けで、純粋に尊敬します。そしてふと、「こんな文化が身近にある街で学んでいるんだな」と、ありがたみを再確認する機会になります。 留学生活の何気ないこういう瞬間に気づきがあるから面白いのです。 土日:ちょっとリセット、でも完全には休めない 土日は授業がないです。その分、平日にはできないことにまとまった時間が使えます。休みつつも、やらなければいけないことが多いです。 土曜日 午前:平日にできなかった掃除、洗濯、買い出し 午後:ロンドン市内をぶらぶら、サンプルセールやカフェ巡り 夜:Netflixでだらだらタイム 日曜日 午前:毎週恒例、お母さんとのビデオ通話(時々、東京で大学生をしている姉も登場) 午後〜夜:翌週の予習、授業のノート整理 一人暮らしで一番つらいのはやはり孤独感に襲われることです。だから家族とつながる時間は本当に大事です。ちょっとした愚痴でも、誰かが聞いてくれるだけで気持ちが全然違います。 あとは普段忙しくてできないような込み入った料理を作ってみたりしながらリラックスします。 週末に時間をかけて作る料理 留学生活の工夫いろいろ イギリスでの生活は日本と異なる部分が多く、無理し過ぎず自分に合った習慣を見つけることが大事です。ここでは私が実践していることを紹介します。 食費節約術: 自炊が基本。野菜+卵は最強コンビで、最近はキャベツと卵のオイスターソース炒めが定番メニュー。アジアンスーパー、ほんとありがたい 時間管理: GoogleカレンダーとToDoリストで、予定とタスクを見える化 冬のメンタル対策: ロンドンの冬は暗い。光目覚まし時計、カフェの明るい照明、外に出て歩く、など試行錯誤中 光目覚まし時計 ロンドン2年目の今、少しだけ「バランス」がわかってきた ロンドン暮らし1年目の去年は、物価の高さにびっくりしました。この大円安時代においてなおさら、何もかも高く感じます。そんな中で「節約しなきゃ……」と焦り、あまり楽しめなかった部分もあったと思います。 特に周りには派手で華やかなライフスタイルを送ってる人が多く、「羨ましいな〜」と思ってしまったり、自分と比べてしまったりすることがよくありました。 でも2年目に入ってから、少しずつ自分に合ったバランスがつかめてきた気がします。例えば普段から以下のようなことをしています。 平日は基本、自炊。コーヒーも家で淹れて、タンブラーで大学へ持参 カフェはご褒美として週1〜2回くらい 週末はちょっといいレストランやバーで友達と過ごす ロンドンで学生生活を送れるのは人生の中でも限られた時期だけです。将来社会人になって、ロンドンにいられる保証はないからこそ、今しかできない経験をしておきたいと思うようになりました。 平日に作る料理 週末の味方:図書館と、がんばる人たちの背中 ありがたいことに、UCLの図書館は週末も開いています。場所によっては24時間利用可能で、深夜も灯りがついています。 私は夜型ではないため遅くまで残りませんが、土日も使えるのは本当に助かります。そして何より…… いつ行っても図書館は混んでいます。 みんな黙々と課題に取り組んでいる姿を見ると、「よし、私も頑張ろう」と自然と思えるんですよね。たぶん、勉強のモチベーションは環境の影響が大きいと思います。 人とのつながりは、何よりのライフセーバー 留学生活で一番大切だと思うのが、「人とのつながり」です。 しんどい時に「大丈夫?」と声をかけてくれる友達 情報をシェアし合える仲間(例:穴場カフェ、学割が使えるミュージカルなど) 「なんか最近落ち込んでいるな」と察し、ランチに誘ってくれる友達 こういう小さな支えの積み重ねが、留学を続ける力になっていると思います。 最近は就活も少しずつ意識し始めていて、コネクションがより重要になっていると感じました。助け合いは情報の共有から生まれることも多いのです。だから情報を持っている人と話す、自分もシェアするという姿勢は、これからもっと大切にしていきたいと思います。 🎓 最後に 留学生活はSNSで見るよりずっと地味だし、孤独だし、大変です。でも、その中で「どうやって自分の生活を整えるか」を少しずつ学んでいます。「今日は頑張ったな」と思える日も、「何もできなかった……」と落ち込む日も、どっちもあっていいと思います。完璧じゃない生活の中で、ふと見つけた自分だけのルーティンや居場所が、私にとっての“留学の醍醐味”かもしれません。 これから留学を考えてる人にとって、ほんのちょっとでも参考になったらうれしいです。そして、今留学中でバタバタしてる人へ──「がんばっているの、ちゃんと自分が知ってるよ」とお伝えしたい。 https://passport-to.com/articles/7/

英国ボーディングスクールから理系の名門大学インペリアルカレッジロンドンへ

 初めまして、Kenshuと申します。19歳で、香港で生まれ育ちました。幼少期から香港のインターナショナルスクールに通い、4年前からイギリスに留学しています。現在ロンドンのImperial College London(インペリアカレッジロンドン)でChemical Engineering(化学工学)を学んでいます。 香港で生まれ育ち、イギリス: Concord Collegeへ留学するまで 小さい頃、父のお仕事の影響で日本と香港を行き来していました。小学校から中学2年生までは香港のインターナショナルスクールに通っていました。途中、日本の中学受験をしたものの、香港に残ることにしました。2019年以降新型コロナウイルス感染症が世界各地で繰り返し流行り、深刻な問題になっている真最中、私はイギリス留学を決め、海を渡りました。2021年の9月に一人でイギリスに渡り、今までの4年間を過ごしてきました。 イギリスでの学校選びにはそれほどの時間をかけませんでした。いくつかの学校に応募し、最初に合格が決まったところに行くことにしました。私が行くことになったボーディングスクール(全寮制学校)はイングランド西部のShrewsbury(シュルーズベリー)にあるConcord College(コンコルドカレッジ)という高校です。 Concord Collegeの校舎 英国ボーディングスクール生活での戸惑いとホームシックの日々 最初の数日は英語で流暢に話し合う生徒たちを見て、会話にうまく入れなかったです。イギリス英語特有のアクセントやスラングを理解しようと必死でした。英語は何年も勉強していましたが、実際に学業や日常生活で使うのはまったく別の経験でした。 戸惑いは言語だけではありませんでした。イギリスの気候は日本とは大きく異なり、灰色の空と頻繁な雨が毎日続き憂鬱でした。食事にも全く慣れず、食堂で出会ったのはシェパーズパイやジャケットポテト、フィッシュアンドチップスばかり。日本のご飯が恋しくてたまりませんでした。 Concord Collegeのグラウンド 寮生活の思い出 Concord Collegeでは70%が寮生徒、30%が現地生です。全寮生徒には一人部屋を与えられました。私がForm4(中学3年)、Form5(高校1年)にいたときは小さい部屋でしたが、Form 6(高校2、3年)に入るともっと大きい部屋を与えられました。そこで夜遅くまで友達とゲームをしたりするのが一番の思い出です。 毎朝7時半に点呼があり、8時にダイニングホールで朝食を食べます。8時半に授業が始まり、午後4時まで9時限(1時限35分)あります。その間に昼休みと中休みが挟みます。4時に授業が終わると自由時間になり、私は毎日自由時間に昼寝をしていました。 6時半から8時10分までの100分間はprep timeという自習時間があります。全生徒が教室などに集って自習します。最初はすごく面倒で退屈な時間だなって思っていましたが勉強が忙しくなるにつれ、とても重要な時間になってきました。prep timeが終わると10時まで課外活動やクラブ活動が始まります。 課外活動 バレーボールとサッカーに打ち込んだ日々 私は学校のバレーボールとサッカーのチームに所属していました。毎週火曜日と日曜日はバレーボールの練習です。水曜日には他校との親善試合があり毎週それに向けて練習をしていました。Concord Collegeでの一番の思い出はバレーボールチームにいたことかもしれません。 一緒にバレーボールに打ち込んだ仲間たちと サッカーは毎週日曜日の午後にトレーニングがありました。イギリスはサッカー大国なのでみんなすごく上手でAチームに入るのにすごく大変でした。最終学年になった時にやっとAチームのセンターバックのスタメンをもらって嬉しかったのを鮮明に覚えています。 Aチームは日本で言う1軍のことで、全部で50人以上いる部員から15人ほどしか選ばれません。Aチームに入るには基本的に監督による評価、練習試合のパフォーマンスなどを総合的に見て選抜されます。Aチーム以外にもBチームがあり主に下の学年の生徒たちが所属します。 日本と香港には無いイベントの数々 クリスマスやハロウィーンになるとディスコやパーティーがよく開催されます。日本や香港の学校ではあまりない経験だったので友達とディスコに行ったときは圧倒されました。学外からDJを呼んでいたのでやっぱりイギリスの学校はすごいな〜って思いました。 毎年11月5日にあるBonfire Nightという日には学校で大きな花火が打ち上げられ、すごく綺麗です。 Concord Collegeで毎年Bonfire Nightで打ち上げられる花火 英国ボーディングスクールの授業内容 GCSE:理系科目が得意で、文系科目は必死 Concord Collegeのカリキュラムは、私がそれまで経験してきたものとは大きく異なっていました。最初の2年間では、GCSE(イギリスの中等教育修了試験)に取り組みます。選択科目からはHistory(歴史)、Geography(地理)、Computer Science(コンピューターサイエンス)、Statistics(統計学)の4つを履修しました。それからPhysics(物理)、Chemistry(化学)、Biology(生物)の3つの理系科目、English(英語)、Mathematics(数学)、Advanced Mathematics(応用数学)を選択しました。私は理系だったので地理、歴史、英語などの科目は苦手で、他の生徒たちについていくのに必死でした。 Concord College で一番ユニークだなって思うところがSaturday Testsという制度です。毎週土曜日に3つの科目の小テストがあります。科目は毎週ローテーションします。例えば、1週間目はMaths、Physics、Biology、2週間目はGeography、History、Computer Science、3週間目はEnglish、Statistics、Chemistryという感じです。特に2週間目はエッセイ科目が多く、その週の月曜日に復習を始めていたのですごく苦労しました。 2年目の5、6月になるとGCSEの試験が始まり、週に3、4つテストがありそれが2ヶ月間続きました。合計25テスト(9教科)を終えた後、2ヶ月間の溜まった疲れがどっと出てきてそれからの1週間は何もやる気が起きなかったです。 2年間のGCSEカリキュラムを終え、そのままConcord CollegeでA-levelに残ることを決めました。 A-Level:科目数が減り、内容が難しくなった イギリスでは2年間のGCSEを終えた後A-levelカリキュラムに2年間取り組みます。A-levelでは数学、応用数学、物理、化学を選びました。どれも理系科目で自分の得意分野でもあり、大学でChemical Engineering(化学工学)を専攻したいと思っていたのでこの4つを選択しました。 選択する科目がGCSEより少ない分、内容は難しくなり、特に物理は理解するのにすごく時間がかかりました。A-levelでもSaturday Testsは引き続き実施され、毎週2科目になりました。A-levelではGCSEとは違って授業がないfree periodという時間も増え、より自由な時間割になりました。でも私は勉強ではなくほとんどの時間を寮に戻って昼寝をしていました。 GCSEと同様、A-levelを始めてから2年目の5、6月になると試験があり、6月末までに10テストを終えました。志望大学の進学条件で、私は化学で最高評価のA*をとらなければいけなかったので化学の試験当日は落ち着かなかったのを覚えています。化学のA*を取るには90%以上得点する必要があります。そのため、化学の復習には他の教科より多くの時間を費やしていました。 A-levelが終わるとConcord Collegeから卒業し、夏休みに入りました。 https://jp.education-moi.com/boarding-schools/uk#a-level 高校の勉強と両立しながら挑んだイギリス大学受験 私はイギリスの大学に行きたいという思いが昔からあり、Personal statement(志望理由書)などの準備に力を入れていました。Engineering and Science Admission Test(ESAT)※の勉強だったり面接の準備だったり色々なことをやる必要がありました。Concord Collegeにいた最後の年は勉強と受験対策の両立で忙しくて大変でした。2025年の1月に運よくImperial College London(インペリアルカレッジロンドン)からのオファーレターをもらうことができました。今でもその瞬間だけは忘れられないです。 ※ESATは、University of Cambridge(ケンブリッジ大学)やインペリアルカレッジロンドンなどの理工系学部への出願者に課す入学試験です。 https://esat-tmua.ac.uk/about-the-tests/esat-test インペリアルカレッジロンドンに進学 今年の9月にImperial College Londonに入学し、化学工学を専攻しています。 今はロンドンで大学生活を送っていますが、振り返ってみると15歳でイギリスに渡ったとき、不安だらけでした。言葉も文化も違う環境に飛び込んで、自信をなくしたこともあります。でも、その経験を通して、今まで気づかなかった自分の強さや、新しい視野を得ることができました。これからも留学に関する情報や経験を共有していき、少しでも同じ道を考えている皆さんの参考になれたらうれしいです! https://jp.education-moi.com/article-50-imperial

【授業内容と学部進学方法】ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのファウンデーションコース

こんにちは! Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)でメディアを勉強しているKotokoです。 今回は日本の高校卒業後に受講したファウンデーションコースでの1年間をご紹介します。どんなことを学んだのか、英語力がどれくらい伸びたのかなど、リアルな体験をお伝えします! ※私が経験したのはGoldsmithsのファウンデーションコースなので、他の大学とは違う部分もあるかもしれません。あくまで1つの体験談として読んでもらえたらと思います! 前回の記事では、「ごく普通の高校生だった私がイギリスの大学に合格するまでの道のり」について書きました。まだ読んでいない方はぜひそちらもチェックしてみてくださいね! https://passport-to.com/articles/14/ ファウンデーションコースとは? ファウンデーションコースは、主に留学生を対象とした、イギリスの大学に進学するための準備プログラムです。英語力や学問的な基礎を1年間かけて学び、大学の授業についていける力を養います。 イギリスの大学は通常、A-levelやIB(国際バカロレア)などの国際的な資格を入学基準としています。日本の高校卒業資格だけではそのまま入学できないです。そのため、多くの日本人学生はこのコースを経て進学します。 https://jp.education-moi.com/universities/uk/foundation ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのファウンデーションコース キャンパスはロンドン郊外 私が受講したのは、ロンドン南東部にあるGoldsmithsが提供しているファウンデーションコースです。 キャンパスはOverground(地上を走る鉄道)のNew Cross駅から歩いてすぐです。ロンドン中心部からは電車で30分ほどかかります。近くにはRoyal Observatory(グリニッジ天文台)で有名なGreenwich Park(グリニッジ・パーク)があります。 住宅街に位置しているため、中心地ほど便利なわけではありません。その反面、落ち着いたローカルな雰囲気の中で大学生活を送ることができます。 ただし、夜は少し治安が悪いという声もあり、注意が必要なエリアだと感じます。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのRichard Hoggart Building キャンパスの雰囲気と施設 Goldsmithsは、アート、デザイン、メディア、カルチャーなどクリエイティブな分野に強いことで知られています。それを体現しているように、キャンパス全体に自由な表現があふれています。壁にはアート作品が展示されていたり、学生によるエキシビションが定期的に開催されたりしています。 キャンパスの中心にはRichard Hoggart Buildingというメインの建物があります。それを囲むようにアート系やメディア系など、専門分野ごとに建物が分かれています。 私が所属しているメディア学科にはラジオ制作のためのブースなどがあり、技術的なスキルを学ぶ環境がしっかり整っています。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: キャンパス内にあるラジオ制作のためのブース Richard Hoggart Buildingの隣には24時間利用可能な図書館があります。豊富な蔵書はもちろん、パソコンの貸し出しや印刷機、会議室なども充実しています。このように、学習をサポートする設備には困りません。 また、キャンパスの中央には芝生が広がっています。春から夏にかけてそこで昼食をとったり、お昼寝したりと、のんびりと過ごす学生が多いです。 キャンパス内にはいくつかのカフェがあります。中でもGoldsmiths Students' Union※(学生組合)が運営するカフェは、他のカフェよりも価格が手頃です。飲み物や軽食も美味しく、私のおすすめスポットです。 ※Students' Unionは学生の声を大学に届けたり、クラブ活動やイベントの企画・運営、サポートを行う組織です。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: Students’ Unionが運営するカフェのストロベリー抹茶 ファウンデーションコースの授業内容と評価方法 私はメディアについて勉強したかったので、 GoldsmithsのInternational Foundation Certificate in Media, Culture & Societyを選びました。 授業は週3日で、1日に2コマ(1コマ約1時間半)あることが多かったです。 カリキュラムは3学期制です。秋から冬までの1学期は専門分野の授業と英語の授業を受けます。冬休み明けからイースター休みまでの2学期も同じような形で授業が続きます。 3学期は復習期間で、毎週授業があるわけではないです。3回ほどの復習授業があるほか、主に最後の試験に向けて自分で勉強するスタイルでした。  専門分野の授業 ファウンデーションコースは大学での学びに備えるための準備コースであり、進学後を見据えた専門的な授業を受けられるのも魅力の一つです。 専門分野の授業では、1コマ目に大学1年次のlecture(講義)を受けます。続く2コマ目にファウンデーションコースの学生向けseminar(セミナー)が行われます。セミナーでは、先生が講義内容をわかりやすく解説してくれます。 初めて講義を受けたときは、教授の話がほとんど理解できず、正直かなり焦りました。その後のセミナーは留学生向けに行われるため、先生が簡単な英単語を使って丁寧に説明してくれたので、ほっとしたのを覚えています。 セミナーは解説を聞くだけでなく、discussion(ディスカッション)が中心です。クラスメイトは同じ学科の学生たちで、人数が少なく、アットホームな雰囲気があります。最初は緊張しながらも発言しやすかったです。専門知識の理解だけでなくスピーキング力も自然と伸ばすことができました。 評価方法 基本的に学期ごとに出されるエッセイで行われます。トピックや文字数は授業や先生によってまちまちです。ファウンデーションコースの学生にはtutor(チューター)と呼ばれる担当教員が付いていて、エッセイのテーマ決めから構成、内容まで相談することができます。チューターと一緒にプランを立てたあと、自分でエッセイを書き上げて提出します。 英語の授業(Reading/Writing/Speaking) ここでは、アカデミックな英語力を身につけるために、Reading, Writing, Speaking(リーディング、ライティング、スピーキング)の3つのスキルに分かれて授業が行われました。リスニングに関しては、授業全体が英語で行われるため、リスニング専用の授業はありませんでした。専門分野の授業と異なり、ここでは他の学部を目指している学生たちと一緒に学びました。 ここからは、スキルごとにどのような内容の授業があったのかをご紹介していきます。 Reading リーディングの授業は、1学期と2学期を通して行われました。初回の授業で、リーディングの問題がたくさん載っている冊子が配られました。そこには1週間ごとに課題が設定されており、順番に解いていく形式で進められました。 宿題は、例えば次の週がWeek 3の場合、「Week 3」と書かれた長文を読み、それに付随する設問をできるだけ自力で解いてくる、という感じでした。そして授業で答え合わせをしながら、内容に関連したディスカッションをします。 評価方法 学期末には、それまで取り組んできたのと似た問題が出題され、時間内に長文を読んで設問に答える形式のテストが行われました。 時間制限がある中で集中して解くプレッシャーもあり、特に最初のテストは思うように力を発揮できなかった記憶があります。それでも回を重ねるにつれ、読み取りのスピードや精度が上がっていくのを実感できました。 Writing リーディングの授業と同様に、ライティングの授業も1学期と2学期を通して行われました。 1学期は、基本的なエッセイの構成方法について学びました。具体的には、thesis statement(主張文)の書き方、conclusion(結論)のまとめ方、reference(参考文献の記載)の方法など、アカデミックライティングの基礎を一つひとつ丁寧に学びました。 2学期には、週ごとに構成や段落、リサーチを積み重ねながら、1本のエッセイを完成させていきました。 評価方法 2学期に提出したエッセイが評価されました。評価のポイントは、文法の正確さ、アカデミックな語彙の使い方、そしてreferenceの形式が正確かどうかなどです。授業で学んできたことを総合的に活かす機会になりました。 Speaking 1学期はプレゼンテーション、2学期はディスカッションに向けて、スピーキング力を伸ばしました。この授業では毎回出されたトピックについてクラス内でディスカッションを行います。その中でプレゼンテーションのコツや、ディスカッションで使えるフレーズなどを習得しました。 クラスメイトとのディスカッションを通して、英語で意見を述べることにも少しずつ慣れていき、話すことへの抵抗がだんだんと減っていきました。 評価方法 1学期のテストでは、プレゼンテーションを行いました。与えられたトピックに対して自分でリサーチし、引用を交えながらPowerPointを作成して、クラス内で発表しました。 2学期のテストでは、4人1組のグループでディスカッションを行いました。トピックは1週間前に発表されます。それに関連する情報を自分たちで調べて、当日のディスカッションで意見を述べました。グループディスカッションでは、他の人の意見に応じて柔軟に会話を展開する力も問われ、とても良い実践の場となりました。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: 授業前の様子 授業の雰囲気 大学1年生と一緒に受ける講義を除けば、ほとんどの授業は15人未満のクラスで行われました。最初は緊張しましたが、発言や質問がしやすい雰囲気で、自然とクラスになじむことができました。授業はキャンパス内の教室で行われ、毎週同じ教室を使っていたので安心感がありました。 先生方のスタイルは人それぞれですが、基本的にはフレンドリーで話しかけやすいです。また、わからないことも気軽に質問できました。日本と違って、授業の途中で抜けたり、お菓子を食べていたりしても注意されないなど、かなり自由な雰囲気でした。ただし、中には食べ物の匂いが気になるから教室内での飲食はやめてくださいと言う先生もいて、先生によってルールや雰囲気に違いがあると感じました。 クラスメイトの雰囲気 クラスメイトの国籍や雰囲気は、大学、進学予定の学部によって大きく異なると思います。私が受講したコースではアジア系の学生が多く、特に中国人が大半を占めていました。日本人は私を含めて4人だけで、少数のヨーロッパ系の留学生もいました。 さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちと一緒に学ぶことで、日常の会話だけでも刺激がありました。最初は緊張しましたが、少人数ということもあって自然と会話が生まれます。友達もできて、ペアワークやグループディスカッションの時間が楽しみになっていきました。 ひとつ驚いたのは、学生たちがかなりゆるいことです。時間ぴったりに授業が始まることはほとんどありませんでした。先生が来るのも生徒が集まるのも開始時間の10分後くらい、ということが多かったです。欠席者もわりといて、日本との違いを感じました。カルチャーショックというよりは、むしろ面白いなと思いました。 受講後に感じた効果と学部進学 英語はどれくらい伸びたの? ファウンデーションコースを始める前に受けたIELTSはOverall 5.5でした。それ以降はIELTSを受けていないため、数字で比較することはできません。しかし英語力は着実に伸びたと感じています。特に、英文を読むスピードが上がったと実感しています。スピーキングでも自分の考えを何とか英語で伝えられるようになりました。 中でもライティングの成長は大きいと感じました。コースを受講する前までは、英検で出題されるような短いエッセイを書くのが精一杯でした。当然引用の方法などは全くわかりませんでした。このコースを通して、エッセイの構成や書き方、参考文献の引用方法など、アカデミックライティングの基礎をしっかり身につけることができました。 正直に言うと、1年間で英語がペラペラになるのは簡単ではありませんでした。それでも英語を話すこと、そして失敗を恐れずにコミュニケーションがとれるようになったことは、自分にとって大きな成長だったと感じています。 ファウンデーションから大学1年生への進み方 私が通っていたファウンデーションコースでは、1・2・3学期に行われるテストでそれぞれ合格点を取ることができれば、そのままGoldsmithsの学士課程に進学できる仕組みでした。 そのため、普段の授業にきちんと出席し、課題やテストに真面目に取り組んでいれば、進級できないということはあまりないと思います。実際、私のクラスメイトの中で進学できなかった人は一人もいませんでした。ですので、過度に心配する必要はないと思います。 すべての試験に合格したあと、大学側から進学の手続きに関する案内メールが届きました。それに従って準備を進め、私も無事に大学1年生としての学びをスタートしました。 なお、ファウンデーションコースを修了したからといって、必ずしも同じ大学(私の場合はGoldsmiths)にしか進学できないわけではありません。成績次第では他大学への出願も可能な場合があります。 私の友人の中には、他大学への進学を希望して出願していた人もいました。その場合の出願手続きは先生がサポートしてくれるようです。ただ、保証があるのはGoldsmithsの学部であるため、私は迷わずそのまま進学しました。 ファウンデーションコースはイギリス大学留学の自信に繋がる 1年間のファウンデーションコースは、大学進学の準備だけではないのです。英語力の向上や、異文化の中での生活力を身につける貴重な経験になりました。最初は不安もありましたが、授業を通して少しずつ自信を持てるようになりました。そして大学1年生としてのスタートラインに立てたことをとても嬉しく思います。 これからイギリスでの進学を考えている方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。興味のある方はぜひ、Goldsmithsのファウンデーションコースを検討してみてくださいね! https://www.gold.ac.uk

留学生活をもっと楽しむ!イギリスから行けるヨーロッパおすすめ都市

  こんにちは!Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)でメディアを学んでいるKotokoです。 今回は、イギリス留学の大きな魅力のひとつ、ヨーロッパ旅行について私の経験や友人の話をもとに、週末でも行きやすい都市から長期休暇に楽しめる都市まで紹介します。 イギリスからはヨーロッパ諸国に行きやすい?! イギリスは地理的にも交通の面でもヨーロッパ旅行にとても便利な場所です。学生は普段勉強で忙しいですが、週末にふらっと出かけてリフレッシュすることもできます。なぜこんなにも気軽にヨーロッパ旅行ができるのでしょうか?主な理由は3つです。 LCC(格安航空会社)が豊富Ryanair(ライアンエアー)やeasyJet(イージージェット)を使えば、片道数千円で飛行機に乗れることもあります。 Eurostar(ユーロスター)で直行ロンドンからパリやブリュッセルまで電車で約2〜3時間。飛行機のように2時間前に空港に行く必要もなく、便利です。 空港アクセスが良いロンドンには複数の空港があり、ヨーロッパ各地への直行便が充実しています。 週末で行けるおすすめ都市 パリ(フランス) ロンドンからユーロスターで約2時間半!おしゃれな街並み、美味しい食べ物、歴史的建物が中心地に集まっていて、週末旅行にぴったりです。 おすすめTo Doリスト クロワッサンやバゲットを買って、エッフェル塔が見えるトロカデロ広場でピクニック ルーヴル美術館(チケットは公式サイトで事前購入がおすすめ) 夜のセーヌ川ナイトクルーズでエッフェル塔のシャンパンフラッシュを鑑賞 トロカデロ広場でピクニック ナイトクルーズで見たエッフェル塔 ブリュッセル(ベルギー) ロンドンから約2時間。落ち着いたヨーロッパらしい街並みに加え、チョコレートやワッフル、ビールといったグルメも魅力です。 おすすめTo Doリスト グラン=プラス(世界遺産の広場)を散策 本場のベルギーチョコレートを食べ比べ 名物ワッフルやフリッツ(フライドポテト)を食べ歩き ベルギーワッフル フリッツ(フライドポテト) 長期休暇におすすめ都市 学期末の休みには、時間をかけてより多くの国や都市を訪れるチャンスがあります。 ローマ(イタリア) ロンドンから飛行機で約2時間半。古代ローマ帝国の遺跡や歴史的建物が街中に点在していて、コロッセオ、フォロ・ロマーノ、トレビの泉など見どころが盛りだくさんです。そして本場のイタリアンは、どのレストランに入っても外れなし! おすすめTo Doリスト ナイトバスに乗って、コロッセオやフォロ・ロマーノの夕景を楽しむ 本場イタリアンと、定番リキュール、アペロールスプリッツを堪能する ローマでの本場イタリアン カプリ島 ➕ ポイント ローマ観光と合わせて、カプリ島などの美しい島を訪れるのもおすすめ。私は夏に青の洞窟で有名なカプリ島へ行きましたが、透き通る海と空に癒され、都会の喧騒から離れてゆったり過ごせました。 サントリーニ島(ギリシャ) ロンドンから飛行機で約4時間。エーゲ海に浮かぶサントリーニ島は、真っ白な家並みと青い屋根、そして世界的に有名な夕日が魅力です。中心地にはおしゃれなカフェやレストランも多く、地中海料理や新鮮なシーフードが楽しめます。非日常感をたっぷり味わえるスポットです。 おすすめTo Doリスト 夕焼けを眺めながらのディナー レッドビーチやブラックビーチを巡る乗馬ツアー イアの街を散策して、ストリートフード、ギロピタを食べ歩き フィラでの夕焼けを眺めながらのディナー 豚肉のギロピタ カッパドキア(トルコ) ロンドンからイスタンブールまで約4時間、その後さらに1時間のフライトで到着。少し遠いですが、奇岩が広がる不思議な景観と、空を彩る熱気球で世界的に有名なエリアです。洞窟ホテルや歴史的遺跡も点在していて、自然と文化の両方を楽しめるのが魅力。 おすすめTo Doリスト カッパドキア名物の熱気球体験!※天候によっては飛ばない日もあるので、最低3泊ほど滞在すると安心です ギョレメ周辺の名所を1日で効率よく巡れる「レッドツアー」に参加 洞窟ホテルに宿泊し、朝のテラスから空に浮かぶ気球を眺める 気球から見た景色 レッドツアーで訪れたゼルベ野外博物館 イギリス留学生向けの節約術 学生は学業で忙しく、アルバイトが難しい人も多いと思います。だからこそ、旅行のときに「いかに節約するか」がとても大事です。ここでは、私が実際の旅行で学んだ節約術を紹介します。 LCC(格安航空券)を賢く利用する RyanairやeasyJetは、予約が早ければ早いほど安くなることが多く、片道数千円でチケットを取れることもあります。荷物はできるだけ機内持ち込みのみにして、追加料金を避けるのがコツです。 旅行のピークを外す 金曜夜や月曜朝の便は料金が高くなりがち。木曜夜出発や日曜夜帰りを狙うと安くなることが多いです。 学生割引をフル活用する 現地で学生証を提示すると、美術館や交通機関で割引が受けられる場合があります。イギリスの大学の学生証が使える場所も多いので、旅行のときは必ず持参しましょう。 ヨーロッパ旅行の注意点 ヨーロッパ旅行は留学生活の大きな楽しみのひとつですが、気をつけるべき点もたくさんあります。実際にトラブルに遭わないために、最低限知っておきたい注意点をまとめました。 シェンゲン協定とビザ シェンゲン協定の締結国間(主にEU加盟国)では国境検査なしで自由に移動できます。しかしイギリスはシェンゲン協定に加盟していません。そのため、イギリスの学生ビザを持っていても、シェンゲン圏内を自由に滞在できるわけではありません。 日本国籍の留学生の場合、観光目的ならビザは不要ですが「あらゆる180日のうち最大90日間」という滞在制限があります。 また、私は旅行先からイギリスに戻るときに、よく空港の入国審査で「学生ビザを見せて」と言われました。eVisaにすぐログインできるように準備しておくと安心です(スクショはNGと言われたこともありました)。  スリ対策 ヨーロッパは観光地ほどスリが多いです。電車内、レストラン、カフェなど、いつ被害に遭うかわかりません。実際、友達はレストランでスーツケースを専用置き場に預けていたのですが、食事を終えて出るときにはなくなっていました……。 財布やパスポートは小さなポーチやウエストバッグに入れて常に身につけ、スマホをテーブルに置きっぱなしにしないなど、徹底してスリ対策をしてください。 まとめ イギリス留学は、学びの場であると同時にヨーロッパ全体を体験できる大きなチャンスです。週末の小旅行から長期休暇の周遊まで、計画次第で「学生生活でしかできない体験」が待っています。ぜひ、留学生活の一部としてヨーロッパ旅行も楽しんでみてください。 https://passport-to.com/articles/26/

人気記事

Popular articles

イギリスのNHS利用 | 留学生が知っておきたい医療サービス

イギリスの病院に行くとき、多くの人はNHS(エヌ・エイチ・エス National Health Service)という公共の医療制度を利用しています。留学生もビザ申請時に健康保険付加料(IHS)を支払えば、NHS提携の公立病院を受診できます。ですが、NHSをうまく活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があるんです。 この記事では、留学前に知っておきたいNHSの基本的な使い方や、ビザ申請時に支払うIHSについて、さらに病院やGP(かかりつけ医 General Practitioner)の違い、実際に病気になったときの流れまでわかりやすく解説します。 Haruna これまでに何度もイギリスの病院を利用している現地在住者が解説します!どんな流れで医療サービスが受けられるのか、ぜひ参考にしてみてくださいね。 イギリスのNHSって何?医療制度の基本 はじめに、イギリスの公的医療制度「NHS」の仕組みや利用方法についてわかりやすく解説します。 NHS(National Health Service)の概要 1948年にスタートしたイギリスのNHS(National Health Service)は公的な医療制度です。特徴は、多くの医療サービスが無料だったり、もしくは低料金で受けられること。留学生ももちろん対象。ビザ申請時にIHS(健康保険付加料)を支払うことで、NHSのサービスを使えます。 一部は自己負担になる場合もありますが、一般診療、救急医療、入院治療、妊産婦ケアなど幅広いサービスが無料です。 IHS(Immigration Health Surcharge)について イギリスに6か月以上滞在する留学生は、ビザ申請時に「IHS(Immigration Health Surcharge)」を支払っておくことで、ビザの開始日からNHSの医療をイギリス住民と同じように利用できるようになります。料金はビザの有効期間によります。 ビザの期間ごとのIHS料金 ビザの期間料金 ポンド/円6か月以下なし(申請がイギリス国内の場合は£388 / 約73,720円必要)6か月超〜1年未満£776 / 約147,440円 (1年分)1年£776 / 約147,440円1年超〜1年6か月以下£1,164 / 約221,160円 (1年半分)1年6か月超〜2年未満£1,552 / 約294,880円 (2年間分)2年£1,552 / 約294,880円 参考 https://www.gov.uk/healthcare-immigration-application/how-much-pay ※上記の内容は2025年5月時点での料金と為替レート(1ポンド=190円)です。IHS支払い時には最新の情報を必ずご確認ください。 オンライン上でビザ申請時にコースの開始日と終了日を入力し、デビットカードかクレジットカードで支払います。もしも支払いを忘れたり、金額が足りていないと UK Visas and Immigration(UKVI)からメールで知らされます。指定期間内に全額を支払わない場合はビザの申請が却下されてしまいます。 病院とかかりつけ医の違い(Hospital と GP) 日本では、自分の症状をベースに専門医を選んで直接病院に行くことが多いですよね。しかし、イギリスではまずかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪問し、そこから病院(Hospital)の専門医を紹介してもらう流れです。 病院の外来は基本的に紹介制で、専門的な検査や手術、入院治療が必要な場合に利用します。救急(Accident and Emergency)でなければ、基本的にはGP→病院の流れが一般的です。 GPで相談できること GPは地域の診療所、かつ最初に相談する窓口で、必要に応じて病院や専門医を紹介してくれます。風邪や体調不良、慢性的な症状など病気や健康全般について相談でき、処方箋も出してくれます。 GPで診てもらい検査に進む場合は、その結果が出てから精密検査や追加診療で専門医のいる病院に紹介されるケースが多いです。診察は対面のときもあれば、GPに行かずに電話で遠隔診療する場合もあります。 閑静な住宅地にひっそりとたたずむGP 渡英後はまず「GP登録」から始めよう イギリスに到着したら、なるべく早めに「GP(かかりつけ医)」への登録をしましょう。登録のタイミングや方法をここからお伝えします。 登録のタイミングと方法 GPの登録方法は、直接GPに行くかオンラインのどちらかです。大学によってはキャンパスに近いGPを紹介しているので、スタッフに尋ねてみましょう。 GPの登録方法 ①GPを探す NHSの公式サイト「Find a GP(GPを探す)」から、新規登録者を受け入れているか、受付時間、利用者の口コミを確認できます。自宅から近く便利なGPに登録する人が多い傾向にあります。 ②登録フォームに入力/記入する 登録フォームは、各GPのウェブサイト、NHSアプリから入手できます。GPで渡される用紙も可能です。 【登録に必要な情報】 氏名 住所 生年月日 学生ビザ証明の共有コード(Share Code) 連絡先(緊急連絡先も含む) 現在の健康状態・病歴 アレルギーの有無 服用中の薬 など 身分証明や住所証明についてはGPによります。地域内の住民のみを受け入れているGPへの登録には、住所証明を用意した方が無難です。また、なかには新規の登録者を受け入れていないGPも。 もしも、留学中に住所が変わる場合はGPへ報告しましょう。NHSの予約に関することや検査結果などが郵便で送られてくることがあります。引っ越し先が登録中のGPの地域外でも、新居に近い新しいGPに移ることができます。 GPの予約方法・診察の流れ 診察は予約制です。コロナのパンデミックを経て、多くのGPでは感染拡大を避けるために、予約をしてからGPへ来てもらう形を取っています。予約方法は、電話、もしくはオンラインです。電話予約はすぐにつながらず、かなり待たされる場合も。オンライン予約を実施しているGPでは、NHSアプリや各GPの予約サイトからリクエストできます。 私が登録しているGPの場合は、GPの予約システムからメッセージ形式で問い合わせをし、少し待ったあとにメッセージや電話で返信があります。問い合わせ内容によっては、看護師や医師と遠隔で会話し、そこで診察が終わる場合もあります。もしくは対面での予約日を決めていきます。 オンラインのいいところは、問い合わせ内容を細かくテキストで伝えられるところです。電話での会話では医療専門用語がすぐに出てこず、詳細をすべて伝えきれないことも。オンラインで履歴を確認できるため、あとで詳細を振り返るのにとても便利です。近年どんどんオンライン化が進み、以前よりサービスの手軽さが上がったと感じています。 夜間や土曜日に予約が取れることもあり、大学のスケジュールに合わせて利用できるのは留学生にとってもうれしいですね。 実際に病気になったら?病院の使い方ステップ 実際に体調を崩したとき、どうすればいいのか不安に感じる方も多いかもしれません。ここでは、症状が出てから病院で診てもらうまでの流れや、緊急時の対応まで、具体的なステップをわかりやすく解説します。いざというときの参考にしてくださいね。 【NHS利用】症状が出てから病院へ行くまで ここでは、GPや病院などNHSを利用するフローの例をご紹介します。長年NHSを利用しているなかで遭遇した、よくあるパターンをシェアさせていただきますね。 NHS利用の流れ 問い合わせ(電話、オンライン) 問診(GP、電話、ビデオ通話) 必要に応じて診察や血液検査や尿検査などの実施(処方箋のみの場合もあり) 検査結果を聞く(GPか電話の場合が多い) 治療が必要な場合は処方箋をもらう or 病院紹介 【病院紹介の場合】 病院での診察予約に関する手紙が届く(病院が指定する予約日時の記載あり) 指定された予約内容を変更したい場合は病院に電話 予約日時の希望を伝え、確定 病院で診察・検査 GPで結果を聞く(病院の検査結果がGPに送られる場合) ※追加で検査を実施する場合は医師から連絡があり、新しい予約日時を相談する流れになります。 病院はGPと違って、多くの専門科が揃っており規模が大きいです。施設が広いため、初めて訪れる場合は指定の場所を見つけるのが難しいことも。予約時間の前に早めに到着しておきましょう。 病院の内部 NHS 111の使い方 NHS 111は、電話やオンラインですぐにGPにつながらない場合や、GPの診療時間外でも相談したいときに利用できる便利なサービスです。まずは電話かオンラインで問い合わせることで、どういったアクションを踏めばいいかをアドバイスしてくれます。相談内容によって対応は変わりますが、以下のような例があげられます。 看護師からの折り返し電話を予約 夜間・週末のGP診療を案内 歯科やメンタルヘルスなどの専門サポートを紹介 登録しているGPに連絡するよう指示 薬剤師に相談するよう案内 自宅で経過観察するよう指導 NHS 111では、病院の予約・キャンセルや診断書の発行はしてもらえないので注意してください。 参考 https://www.nhs.uk/nhs-services/urgent-and-emergency-care-services/when-to-use-111/ 緊急の場合はどうする? GPの診察を待てずに急いでいる!そんなときは緊急外来(A&E)や救急車(999)を利用します。 まず、A&Eについて。 A&E(Accident and Emergency/事故・緊急外来)は、GPの予約を待っていられないほどのつらい症状や怪我があるなど、緊急性の高い場合に利用します。Accident and Emergencyのほか、Emergency Department(救急部)やCasualty(救急)とも呼びます。着いたらまず受付で症状を伝えます。 過去に利用した感想は、とにかく待ち時間が長いということです。予約を取らないことと、重症患者が優先されるため、先に着いているのに後から来た人が早く診てもらっていたりします。診察の流れは、各自の状態によって変わります。 緊急時の例 緊急性が低く深刻でないと判断→GPの予約をすすめられる、処方箋をもらう 緊急の場合→専門病棟に移り場合によっては入院 病院の正面玄関と別にある緊急外来用の入り口 緊急外来ではとても待てないような、命に関わる緊急時であれば、999へすぐ電話を。交通事故や発作など重大なシチュエーションには迷わず利用しましょう。電話で聞かれる内容は、場所、999にかけた理由、連絡先など。救急隊員の到着を待っている間ににできることや、どれくらいで着くかも教えてくれます。 黄色と緑が目印の救急車  処方薬と薬局の使い方 診療後に薬が出されたら...?ここからは、NHSの処方薬の受け取り方や薬代について、基本的な情報をわかりやすくまとめました。 薬はGPが発行する「処方箋」で薬局でもらう GPでの診察が終わり、処方薬が必要であれば処方箋が出されます。診察後にGPと連携している近隣の薬局(Bootsなど)に行き、Prescription(処方箋)というコーナーでスタッフに自分の生年月日、名前、住所を伝えると、あらかじめ用意してある薬が手渡され、支払いに進みます。 薬局内の処方薬受け取りカウンター 薬代の仕組み NHSで処方してもらう薬の料金は、2025年の時点で処方薬1品につき※£9.90(約1,880円)です。ひとつの処方箋に複数の処方薬がある場合は、すべての薬の合計金額を支払います。ですが、留学生でも18歳以下で大学やカレッジでフルタイム教育を受けている学生はNHSの薬代が無料です。 処方薬が頻繁に必要な人は、処方箋前払いシステム(Prescription Prepayment Certificate)を利用するのも手です。各自のケースが対象になるかの確認は必要ですが、利用できる場合はかなりお得です。 例えば有効期限が3か月間のPPCは、事前に£32.05(約6,090円)支払えば、有効期間中にいくつでも薬を受け取れます(一部は適用外)。PPCの購入はオンラインがメインで、申請日から有効です。申請を完了すると、メールでPPCの証明書が送られてくるので、薬を受け取るときに提示できると便利です。 ※上記の内容は2025年5月時点での料金と為替レート(1ポンド=190円)です。 参考 https://www.nhs.uk/nhs-services/prescriptions/save-money-with-a-prescription-prepayment-certificate-ppc/ 市販薬はスーパーや薬局でも買える 処方薬以外はどうでしょうか。結論として、スーパー、薬局で簡単に手に入ります。痛み止めや風邪薬、胃腸薬、花粉症などのアレルギー薬、目薬、塗り薬など種類は豊富です。自分に合えば、留学中にイギリスで薬を買って服用することもできるので、必ずしも日本から持ち込まなくてもなんとかなる場合もあります。 ※個人差がありますので、薬の調達については慎重に判断されることをおすすめします。 NHSと留学保険の違い これまでNHSのサービスについてご紹介してきましたが、イギリス留学中に本当にNHSだけあれば安心なのだろうか?と不安に思う人もいるでしょう。ここからは、NHSのサービスが対象外になる場合と、留学保険との違いについてお話ししていきます。 NHSで医療費の支払いが発生する例 処方薬1品につき£9.90(約¥1,880円)かかるとお伝えしましたが、そのほかにも支払いが発生する例があります。 ・歯科医療 ・眼科治療 ・かつらや布製の医療用サポーター NHSのサイトでは、歯科医療について、治療が始まる時点で18歳未満、または19歳未満で所定のフルタイム教育を受けている場合は、NHSでの歯科治療が無料になると伝えています(治療内容によっては費用が発生する場合もあり)。 治療費がかかる場合には、日本より高いと言われていますので、渡英までに歯の状態を診てもらうと安心ですね。 眼科の例では、街中の眼鏡屋で行っている一般的な視力検査なら£20(約3,800円)ぐらいから受けられますが、専門的な検査になるとさらに費用がかかります。眼鏡を作る場合、場所によっては学生割引が使えるので、検査の前にリサーチしてみましょう。 NHSを使って治療ができる街中の歯医者 Haruna 実は私も、イギリスで歯の詰め物が取れてしまって、数ヶ月放置したあとに日本の歯医者にかかったのですが、衛生的に良くない!こんなに放っておくなんて!とすごく怒られた記憶があります…。 留学保険で補える部分もある NHSのサービスがこれだけ充実しているのなら、留学保険はいらないんじゃ?と思う人も多いでしょう。しかし、留学保険に入ることで受けられる恩恵も多いのが事実です。 NHSの病院、つまりはイギリスの公立病院を利用するとなると、無料で診療が受けられる分、長く待たされることもザラです。問題の症状が落ち着くまでに、ある程度の時間を要すこともめずらしくないのです。その点、留学保険に入っておくことで、プライベートの私立病院が利用できます。ロンドンには日系クリニックが数件あるため、日本人ドクターに日本語でサポートしてもらえる点もありがたいです。 私がまだ学生だったころ、もうダメかと思うような辛い症状があったときや、小さな手術を受けたときもすべて留学保険が適用され、プライベートの日系クリニックを利用しました。電話一本ですぐに予約がおさえられ、スムーズな日本語のサービスが受けられたことで、改めて保険の大切さを知りました。 ※持病や既往症は補償されない場合がありますので、各保険会社に問い合わせてみてください。 医療以外のトラブルにも留学保険が活躍します。加入するプランによりますが、盗難や破損、飛行機の遅延も補償されるケースがあります。 「何がどこまでカバーされているか」知っておくと安心 NHSのサービスだけでいいの? 心配だから留学保険に入る?答えは人それぞれ。留学生のなかには、医療サービスにおいてはNHSだけでじゅうぶんだった、という人もいれば、留学保険があってよかった、という人も。しっかりとそれぞれの特性を把握したうえで、自分に合った選択をしてみてくださいね。 医療の備えは安心な留学生活の第一歩 イギリス在住の筆者も、これまでに何度もNHSのお世話になってきました。幸い、GPの受付スタッフや看護師、医師たちには毎回親切にしてもらっています。電話やオンラインでの問い合わせには、ほとんど返信があり、しっかり話を聞いてくれます。ただ、サービスの質に関してはGPによりけり、という声も多いです。GP登録をする際には、口コミをチェックしたり、同じGPに登録している学生の話を聞いたりと、下調べをしておくとより安心です。 安心して留学生活が送れるように、医療面での準備を万全にしておきましょう! https://www.nhs.uk

【実体験】イギリス留学準備術: 合格通知からビザ取得までの記録

3月に入り、イギリスの大学や大学院から合否結果が届いてきたと思います。大学からオファー(合格通知)を受け取るといよいよ本格的な留学準備が始まります。入学までには多くの手続きがあり、スムーズに進めるためには計画的な準備が必要です。本記事では、オファーを受け取った後の具体的な準備プロセスについて、僕の経験を踏まえて詳しく解説していきます。 合格結果の確認と入学手続き 出願してからオファーをAcceptするまで 合格結果が届く時期は大学や学科によって異なり、ここは待つしかありません。僕は出願した5校のうち4校は2月初旬までに結果が届きました。しかし第一志望の大学だけ3月までオファーが来ず、もどかしさを覚えました。遅くて7月ごろに結果が出る場合もあるそうなので、気長に待つことが大事だと思います。UCASのTrackシステムをこまめにチェックしましょう。 オファーの種類(Conditional・Unconditional) イギリスの大学からのオファーには、「条件付きオファー(Conditional Offer)」と「無条件オファー(Unconditional Offer)」の2種類があります。条件付きオファーは、IELTSスコアや最終成績の提出といった特定の条件を満たすことで合格となります。UCASで出願した全ての大学から合否が届いた後は、Firm Acceptance(第一希望)とInsurance Acceptance(第一希望に合格できなかった場合の第二希望)の大学とコースを選択します。第一希望の大学からUnconditional Offerをもらった場合はInsurance Acceptanceを選択する必要はありません。 オファーを受け取った後の対応 自分が受け取ったのが条件付きオファーの場合は手続きを早めに済ませることが大切です。通常、オファーの承諾期限が設定されているため、遅れないように注意しましょう。一部の大学ではInternational Students(留学生)がオファーを承諾する際、デポジット(Deposit - 入学金)の支払いが必要です。この金額は大学によって異なりますが、£1,000~£5,000が一般的です。支払期限も設けられているため、期日を確認して早めに対応しましょう。 不合格だった場合の選択肢(Extra・Clearing) もし出願した全ての大学が不合格(Unsuccessful)だったとしても、結果をもらった後に追加で一つのコースに出願できる「エキストラ(Extra)」と定員に達していないコースに出願できる「クリアリング(Clearing)」というシステムがUCASにあります。Extraは2月末から7月初旬まで、Clearingは7月中旬から9月~10月ごろまで行われます。期待した結果が出なかった場合でも諦めずに他の大学やコースにトライしてみましょう。  イギリス学生ビザ(Student Visa)の申請を徹底解説 イギリスでの長期留学には学生ビザ(Student Visa)が必要です。申請にはいくつかの書類が必要で、その用意やビザ発行までに時間がかかります。とにかく早めの行動が大事です。  必要書類 CAS 大学からのオファーを承諾し、パスポートなどの書類を提出すると、「CAS(Confirmation of Acceptance for Studies)」という入学許可証が発行されます。CASはビザ申請に必須な書類で、入学証明となる番号(CASナンバー)が書かれています。発行には通常数週間かかりますので、余裕を持って手続きを進めましょう。  パスポート パスポートの有効期間が留学期間をカバーしている必要があります。期限が短い場合、事前に更新しておきましょう。申請時にパスポートを提出し、そこにビザが発給されることになります。また、見開き2ページ以上の余白ページがあることも確認しておきましょう。  過去のパスポート 過去10年間の渡航歴を聞かれた時、昔使っていたパスポートがあると便利です。ただし、トランジットで立ち寄り、滞在期間が1日未満だった国も渡航歴に含まれます。こういった場合はパスポートにその記録がない時があります。できるだけ正確な情報を書くことが推奨されているので、僕は法務省の出入国在留管理庁というところで自分の渡航歴に関する開示請求を行いました。500円程度で調べてもらえます。https://www.moj.go.jp/isa/publications/privacy/record.html 英語力の証明書 大学によってビザ申請時に英語力の証明を求めるところもあります。GCSEやIBなどのスコアで証明できる場合と、イギリス政府が認定するSELT(Secure English Language Test)の結果しか受け付けてくれない場合があります。このSELTはイギリスのビザ取得専用の英語力試験です。中には「IELTS for UKVI」や「Pearson PTE Academic UKVI」などがあります。IELTSとは異なるもので、指定のスコアを満たすため改めて受験する必要があります。 申請費用と健康保険料(IHS) 申請時にはビザ申請料(£490)の支払いが必要です。さらにIHS(Immigration Health Surcharge)という健康保険料(£776×コースの年数)も支払います。IHSを支払うと、イギリス滞在中にNHS(国民保健サービス)を原則無料で受けられます。 ビザ申請の流れ 書類の準備ができたら、イギリス政府のUKVI(UK Visas and Immigration)の公式サイトから専用の申請フォームに情報を入力し、書類をオンラインで提出します。オンライン上の手続きが済んで、申請料及びIHSを支払うとVFS Globalのビザ申請センターの来館予約ができるようになります。日本には東京と大阪にビザ申請センターがあります。予約した日にパスポートを提出し、生体認証情(指紋と顔写真)を登録します。審査は通常3週間ほどかかり、終了しないとパスポートが返却されません。ビザはパスポートと共に返却されます。ビザ申請センターで受け取るか、郵送してもらうかを選べます。 審査開始後に財政能力証明書の提出を要求される場合があります。これはイギリスでの生活費をカバーできる資金があることを証明するためのものです。ロンドンの大学で勉強する場合は£12,492以上。ロンドン以外の場合は£10,224以上(授業料を除く)。つまりロンドンでの生活費: £1,438/月、ロンドン以外での生活費: £1,136/月: 9ヶ月分の生活費をカバーできる証明が必要です 。預金通帳や金融機関の取引明細書を英文に翻訳したものが必要です。あらかじめ準備しておくとビザ申請がスムーズに進むでしょう。  より詳しい流れについては下のサイトに説明してあるので、確認してください。https://www.westminster.ac.uk/sites/default/public-files/general-documents/student-visa-application-guide-applying-from-outside-uk-v2.pdf  申請は「何事も早めに」が鉄則! 前述の通りビザの審査には通常3週間ほどかかると言われています。繁忙期にはそれ以上の時間がかかることもあります。ビザ発行が渡英日に間に合わずフライトを変更せざるを得なかった友達が何人かいました。審査期間が多少長くなってもいいように、早めに必要書類を集めて申請することが大事です。「ビザ申請ドットコム」や「IMMIGRATION.UK」といったビザ申請を代行してやってもらえるサービスがあり、書類の翻訳など自分でできるか不安があった僕は活用しました。利用すれば必要な書類を揃えて代行者に提出するだけです。その後の申請フォームの入力やビザ申請センターの予約などは全部やってもらえます。  寮とシェアハウスの探し方 ビザ申請と並行して、イギリスでの住居を確保する必要があります。選択肢としては大学が運営している大学寮、民間の学生寮、シェアハウスなどがあります。 大学寮 vs 民間の学生寮の違い 同じ大学の人と交流できる大学寮は、初めての留学で最も安全で便利な選択肢だと思います。特にロンドンなどの都市部では、民間の賃貸物件の家賃が高いです。そのため、大学寮を利用することでコストを抑えられます。僕は大学1年の時に大学寮で暮らして、2、3年の時は民間の学生寮で暮らしていました。民間の学生寮だと、ロンドン中の大学から学生が集まるので他大学生との交流が深まります。ただし、これらの寮は人気が高く、申込期限が早いです。オファーを受け取ったらすぐに申し込むことをお勧めします。早めに申し込みをしなかったせいで、キャンパスから遠い場所にあったり、家賃が高い寮しか残っていなかったりという話も友達から聞きます。 大学が寮の情報を発信していますし、部屋の予約ができるResidence(住居)のサイトやWebポータルにも情報があるので、そこのSNSなどに登録して最新情報をチェックしましょう。  僕が住んでいた民間の学生寮 シェアハウス探しの注意点と便利サイト シェアハウスは費用を抑えつつ、学生のみならず現地の人々と交流できる点が魅力的です。ただし、契約詐欺や知らない人とシェアしなければいけないというリスクもありますので、信頼できるサイトを利用して物件を探し、可能であれば現地で内見してから契約を結ぶことが望ましいです。住居探しには、Rightmove(https://www.rightmove.co.uk/)やZoopla(https://www.zoopla.co.uk/)などの物件検索サイトが便利で、よく使われています。また、SpareRoom(https://www.spareroom.co.uk/)を利用すれば、ルームシェアの相手を見つけることもできます。  必須手続き: eVisaについて 返却されたパスポートに載っているビザはあくまで仮のEntry Clearance Visa(入国許可証)というもので、発行されてから90日まで有効です。正式なビザはeVisa(Online immigration status)という電子書類です。UKVIから送られてくる案内に従い、オンライン上でビザの申請番号やパスポート番号を登録して、アカウントを作成します。 イギリスに入国する際、パスポートのビザだけでなくeVisaの提示が求められる場合があります。そのため渡航前に手続きを済ませておくといいでしょう。これまではBRP(Biometric Residence Permit)カードという物理的な書類だったのでした。2025年の1月からオンラインに置き換わりました。 今回紹介したプロセスの他にも航空券を予約したり、持ち物を準備したりするなど、渡英までにやっておく必要があることはたくさんあります。それらについてはまた別の記事で書きますので、楽しみにしていただければ幸いです。CASやビザの発行などには思っている以上に時間がかかるものもあります。留学生活がスムーズに始められるよう、計画的に準備を進め、安心して渡英しましょう。  https://www.gov.uk/student-visa

UCL現役大学生の留学体験記!イギリス留学のリアルと道のり

京都からイギリスへ: UCL大学留学を決めるまで 自己紹介・バックグラウンド  はじめまして。Nanaです。京都市出身で、中学まで地元で過ごし、高校からイギリスの学校に進学しました。  現在は、University College London(UCL、ユニバーシティカレッジロンドン)でArts and Sciences(アーツアンドサイエンス)学科で勉強しています。一つの専門分野を3年間かけて学ぶ一般的なイギリスの大学とは異なり、この学科ではリベラルアーツ教育に似ていて、文理問わず幅広い分野の科目・デパートメントの授業を取ることができます。  留学を決意したきっかけ 中学2年生の時にスイスでサマースクールに参加した体験が留学を志した原点です。いろいろな国から生徒が来ていて、英語だけでなく、ドイツ語、イタリア語、フランス語などを操る同年代の生徒と出会いました。言語がもたらす新しい人との出会い、つながりや発見に心躍らされました。私もグローバルな世界で過ごしたいと強く思った経験でした。 学校選びから出発まで 本格的に留学を考え始めたのは中学2年生の冬あたりでした。サマースクールで訪れたスイス、友人がすでに留学していたアメリカとイギリスを留学先の候補にしましたが、結局イギリスとアメリカの学校に出願し、先にオファーが来たイギリスの学校に入学することに決めました。 友人に紹介してもらった留学エージェントを通して、学校の選定、受験、インタビュー(面接)を経て、イギリス南西部にあるTaunton School International(TSI、トーントンスクールインターナショナル)への入学が決まりました。インタビュー(面接)や試験はすべて、オンラインで行いました。 Taunton School International(トーントンスクールインターナショナル) の校舎 しかし、この時期(2020年)にちょうど新型コロナウイルス感染症が流行り始め、4月に予定していた渡英は先送りされてしまいました。イギリスには行けなかったものの、学校側がいち早くオンライン授業を導入したため、4月-6月の1学期間は日本の自宅で授業を受けました。思い描いていた留学の始まりではありませんでしたが、振り返ってみればホームシックにならず、少しずつ英語に慣れていく良い機会だったと思います。 TSIではGCSEと呼ばれる中学課程に当たるものを1年間学習しました。2年目からはLancing College(ランシングカレッジ)という現地校に入学し、A-level経済、数学、応用数学、日本語を履修し、受験を経て、UCLに入学しました。 Lancing College(ランシングカレッジ)のチャペル UCL大学生のキャンパスライフ ロンドンならではの魅力と学びの日々 現在通っているUCLはロンドン中心部にあり、1826年に設立された大学で、150を超える国から学生が集まる国際性と400以上のコースを提供し幅広い研究分野を持っているのが特徴です。ロンドンという大都市ならではの刺激的な環境もあり、学びだけでなく生活面でも多くの発見がある大学です。 University College London(UCL)に入学 リベラルアーツ型の学び: Arts and Science学科の特徴 大学ではArts and Science(アーツアンドサイエンス)と呼ばれるリベラルアーツの学科で勉強しています。この学科はイギリスの大学にしてはとてもユニークです。イギリスの大学では基本的に高校で専攻した教科を中心により深く学びます。例えば高校で経済を専攻すると大学でも経済学部やビジネス系の学部に進み、その学部で必修授業をとります。 しかし私の学部では多くの学問の知識をいかに融合させて社会課題の解決策にアプローチするのかに重きを置いています。こういった学問を英語ではInterdisciplinary studiesと呼び、分野横断的(学際的)な学びを意味します。社会課題を解決するのにもさまざまな切り口や専門知識が必要なうえ、分野が異なる人々と協力することも欠かせません。そのようなことを中心に学んでいます。 そのため、履修する授業の半分以上を自分で選択できます。学科の中で、3年間を通して全く同じクラスの組み合わせを取っている学生は誰一人いません。こういった環境が自分の学習生活を唯一無二にします。 実際に履修している授業紹介 私が今年取っている科目は、Principle of international public law(国際法)、Mathematical analysis, Real analysis(解析学)、Database system(データベースシステム)、Macroeconomics/Open and Closed economy(マクロ経済学)、Quantitative methods(定量調査)、Sustainable energy(持続可能エネルギー)、Mandarin(中国語)です。 分野がバラバラでそれぞれ全く関係なさそうに見えますが、Sustainable energyで学ぶエネルギー政策はMacroeconomicsの経済政策につながっていたり、Quantitative methodsで習得する基礎プログラミングはDatabase systemで応用できたりと、他の学生とは違った視点で問題の解決法を見いだすことができます。 課外活動とロンドンでの暮らし 日本語を教えるJapan Societyでの活動 授業外では、Japan Societyと呼ばれるソサエティ(サークル)に参加していて、2週間に1度、学生に日本語を教えています。 Finance and Economics Societyで得た学びと人脈 また、Finance and Economics Societyにも参加しており、週1くらいの頻度で開催されるロンドンの投資銀行などの金融業界で働く方によるセミナーに参加しています。UCLのネットワークはかなり広く、トップ企業で働く卒業生も多いので、いろんな人から話を聞けるチャンスがたくさんあります。 ロンドンの美術館・博物館巡りで深める学び ロンドンには大英博物館(British Museum)やナショナルギャラリー(National Gallery)など、たくさんの権威ある美術館と博物館が集まっていて、ほとんどが入場無料ということもあり、休日にはなるべく行くようにしています。 昨年取ったSocial Theoryの授業ではオリエンタリズム(西洋が東洋をどのようにとらえていたのかを研究する学問領域)のトピックを扱ったのでテムズ川畔にあるTate Britain(テート・ブリテン) の絵画を見に行きました。 Colonialism(植民地主義)などのトピックを考える際、博物館の作品は貴重なソースとなり、実際に鑑賞することでコンテンツの理解をより深めることができます。 高校留学・大学留学を通じて得た学び 広がった視野と情報へのアンテナ 留学して良かったことは、視野が広がったことと得られる情報が増えたことです。異なる文化や価値観を持つ人たちと関わる中で、自分が当たり前だと思っていた考え方が、実は国や環境によって大きく異なることに気づきました。Taunton School時代のルームメートはブルンジ人でした。初めて聞く国からの生徒だった彼女とどうしても話をしたくて、どんな国なのか、何語を話すのかなどを調べた記憶があります。 多様な視点を学べる国際的なクラスメートとの出会い 授業では、さまざまなバックグラウンドを持つクラスメートと意見を交わす機会が多く、同じテーマでも多様な視点があることを学べたのは、とても刺激的でした。日本では、自分がどの政党を支持しているか、政策まで議論することはなかったですが、イギリスでは自国の政策はもちろん、他のヨーロッパ諸国の政策まで網羅している学生も何人かいて、意識の高さがうかがえました。 経済の授業では特に、GDP(国内総生産)成長率やインフレ、利子率を必ず頭に入れておく習慣ができました。円安など、身の回りで起きていることが身につけた知識で理解できるようになっていくのが楽しかったです。 英語力と自己発信力の向上 また、英語でコミュニケーションを取る力が自然と身につき、自信を持って自分の意見を発信できるようになったのも大きな成長です。さらに、留学生活を通じて新しい友人や経験に出会い、自分自身の挑戦する力や柔軟性も養われたと感じています。 留学生活で感じた辛さと乗り越えた経験 言語の壁とコミュニケーションの葛藤 留学で辛かったことのひとつは、最初の頃に感じた言語の壁です。英検2級を取得後に渡英しましたが、授業では、ネイティブスピーカーや先生たちのスピードについていけなかったです。留学当初は宿題を終わらせるのにも、クラスメートの3倍時間がかかりました。 授業がわかるようになっても、友達との会話や冗談を理解し、話すまでにはかなり時間がかかりました。小学校の間に英会話塾に週1で通っていましたが、実際に会話しようとすると、自分のシャイな性格も相まって単語が出てこない場面が多くあり、自分の意見を思うように表現できず、もどかしさを感じることがありました。 辞書を片手に専門用語と格闘する日々 大学に入ってからは、専門的な単語も多くて、今でも辞書は手放せません。ですが、一つ一つの単語の意味を調べる習慣がついたことで、理解できない単元があっても、わかるまで調べたり文献を読んだりして、人一倍深い学びを得たと思います。 これからイギリス留学を目指す人へのメッセージ 留学は挑戦の連続ですが、ぜひ恐れずに一歩踏み出してみてください。その経験が、自分自身を大きく成長させ、未来への大きな力になるはずです。 https://jp.education-moi.com/article-51-ucl https://www.ucl.ac.uk

【イギリス高校留学】15歳で親元を離れたボーディングスクールでの生活

私は15歳から親元を離れ、イギリス留学を始めました。大学もイギリスで、卒業後もしばらく滞在していたため、気づいたら14年間イギリスにいることになっていました。苦あり楽ありの留学体験をお届けします。 イギリス全寮制高校への道: 留学を決意するまで 小さい頃、父の仕事でアメリカに行っていたことがあり、英語には多少自信がありました。しかし、滞在は4歳から6歳までのわずか2年半だったため、帰国し中学生になった頃には英語力がかなり落ちていました。ある日、母と当時の英語の家庭教師からの要望に応じ、英語のエッセイを書いてみました。すると「アメリカの小学校2年生レベルだね」と言われ、ショックを受けました。これを機に、英語をちゃんと勉強しようと決意しました。 ちょうどその頃、インターナショナルスクールに通っていた2つ上の兄がイギリスの大学に進学したいと言ったので母と3人でイギリスの大学の下見に行くことになりました。自分にとって未知の国だったイギリスに惹かれていたのと、いつかは留学したいという思いが相まって、ついでに高校も見ようと母と決めていました。 ノッティンガムシャーの高校見学 複数の大学や高校を巡り、その中のひとつの高校にとても良い印象を持ちました。イギリス東中部、Nottinghamshire(ノッティンガムシャー州)のWorksop(ワークソップ)というところにある高校です。先生が優しく、校舎も広くてかっこよく、生徒達の行儀もとてもよかったです。みんな紳士的で礼儀正しく、先生方の指導が行き届いていることが伝わってきました。 若くして単身留学することを心配していた母も、このしっかりした校風が気に入りました。校長先生とお話をし、その後校舎見学をしました。また、私が医学部志望だったため、英語力をネイティブ並みに上げる必要があると言われ、もうその夏から入学することを勧められました。もともとイギリスでそのまま医学部に行くつもりはなかったのですが、先生方や両親と相談し、見学に行った2ヶ月後には留学を決心しました。 学校の校舎 イギリス高校留学|ボーディングスクールの生活とは? 寮のシステムと制服 イギリスに着いてすぐ、寮長さんや寮母さんに挨拶しました。説明を受け、私はYear 10(日本の中学3年に該当)に入学しました。日本の中学に相当する学年では制服が決まっています。ブレザー、シャツ、スカート、そしてcravatと呼ばれるネクタイのようなものに加え、靴下も学校指定のものを着用しました。 この学校には数種類の寮があり、女子は学期中ずっと過ごす「Full boarding(フルボーディング)」用、平日だけ暮らす「Weekly boarding(ウィークリーボーディング)」用、そして「Daily student(夜には家に帰る通学生)」用の寮がそれぞれ1つです。男子寮はDaily studentと住み込みの生徒が混ざっていて5~6つの寮がありました。各寮には30~40人くらいの生徒がいました。 1つの寮には最下級生のYear 9(中学2年生)から最上級生のYear 13(高校3年生)までが一緒に暮らしており、2、3人部屋もあれば1人部屋もあります。新入生は基本的に多人数部屋に割り振られ、最高学年の生徒は1人部屋が与えられました。私は最初3人部屋に入りました。その後2人部屋になったり3人部屋になったりの繰り返し。最終学年になったらついに1人部屋を手に入れました。毎学期、部屋のメンバーは先生が決めて変えていました。 校長先生の住むお家。学校の入口のすぐ隣にある 深夜の勉強と寮のおきて 渡英当初の英語力では会話についていくのが精一杯で、授業は全く理解できませんでした。現地の生徒ばかりの学校で、私の学年にいた留学生は他に男子2人だけでした。英語の授業以外は現地の生徒達と一緒に受けるため、取り残されないように懸命でした。深夜と早朝の時間を活用し、ひたすら教科書の翻訳をする日々が続きました。 ある明け方、普段電気が点いている部屋が消灯されたので階段に座って勉強していました。すると寮母さんが駆けつけてきて、「Yui、こんな時間に勉強しないの!ここはアラームがついているの。勉強は日中だけでも十分なのだから夜はしっかり休みなさい」と注意されてしまいました。どうやらこの階段にはアラームが設置されていて、人が入ると寮母さんなどの責任者だけが知らされるようになっていました。それ以来、夜中の勉強はやめました。 ホームシックと戦う日々 寮生活はとても厳しく、朝1回、お昼前に1回、お昼後から夕方にかけて3回、そして夕飯後の宿題時間に3回、点呼がありました。そして寝る前には先生が各部屋を回って携帯電話を没収し、電気も強制的に消されます。しかしほとんどの子は偽物の携帯を預けていました。 留学した最初の年はスマホもWi-Fiもなかったので私はガラケーを使っていました。インターネットは共用のパソコンルームのみで使うことができます。家族と連絡を取るときは国際電話でした。 週に1回、Skypeが使えるパソコンを予約して家族とビデオ通話することができました。しかし世界中から留学生が来ているので常に予約枠の取り合いでした。日本との時差の関係で都合の良い時間帯が限られ、目当ての時間枠が取られてしまってよく落ち込んでいたものです。 最初の1年間はホームシックでほぼ毎日泣いていました。言葉があまり通じなかったため友達もできなかったです。「かわいそう」と寄ってきてくれる生徒や授業で一緒になった生徒とたまに話す程度でした。都会ではなかったので、アジア人が少なく、奇異の目で見られているように感じました。 留学1年目の冬。膝下まで雪が積もるほどの大雪でした 辛かった陸軍の訓練 私の学校はCCF(Combined Cadet Force)という連合将校養成隊の時間があり、Army(陸軍)の訓練をしました。陸軍の他に、Navy(海軍)、Royal Air Force(空軍)もあり、現地の生徒は選択が可能でした。その頃、私たち留学生は選べず、一番人数の多い陸軍に自動的に振り分けられました。軍隊用の重たい迷彩服を着て寒い中2時間くらいマーチングし、銃の練習や匍匐前進などをするのはとても苦痛でした。また、落ち葉や枝を集めたり、数人組で運動させられたりと、グループでの活動が多かったです。友達の少ない私には楽しくはありませんでした。 礼拝の時間でスピーチに挑戦 一方で、週5回の朝のChapel(礼拝)の時間は比較的平和な時間だと感じました。讃美歌を歌い、お話を聞くだけの時間でした。木曜と土曜日以外の曜日に毎週、礼拝が行われました。日曜日だけ、朝の礼拝は全校生徒ではなく、寮生のみの参加で人数が少なかったです。そのため留学生にも皆の前で話をする機会が与えられました。 私も数回日曜日にスピーチした後、全校生徒の前で話す機会をもらい、3.11の出来事などを話しました。現地の生徒が多かったので、彼らにとって海外に触れられる貴重な機会だったと思います。その他、日本や中国の祝日の時には文化のお話もしました。 日本ではクリスマスは外で過ごし、お正月は家族で過ごすものだと伝えたら、イギリスとは真逆なので驚かれました。話した内容に興味を持ってくれ、それをきっかけに会話が弾むことがよくありました。先生方は、私たち留学生が学校に溶け込めるよう、常に様々な工夫をしてくれていました。 チャペル 深める交流: スポーツとイベントの舞台裏 ハリーポッターの世界!イギリスならではのスポーツ イギリスのBoarding school(ボーディングスクール・全寮制学校)特有のスポーツの時間もありました。季節や性別によって競技が分けられています。秋には男女共にもホッケー、冬は女子がネットボール、男子がラグビー、夏は水泳、クリケット、クロスカントリー、ラウンダースなどから自由に選択できました。 ハリー・ポッターに出てくるような寮対抗の大会や他校との試合もありました。他校との試合では、全生徒が実力別に分けられ、相手校の同じレベルのチームと戦います。そして試合後は相手チームと一緒にSupper time(おやつの時間)があり、ポテトやパン、フルーツ、ケーキなどを一緒に食べました。 ラグビーコートが9面もある広大な敷地を持つ学校。裏にはゴルフコースも プロムやダンスパーティー 年に数回、寮ごとのパーティーがあり、他の寮の子も主催寮の生徒に招待されれば参加できました。男子寮が開催するダンスパーティーに出席する際はProm(プロム)に行くような感じのドレスアップをしました。また、冬休みに入る前は各寮の寮生全員が一丸となって練習したダンスを全校生徒の前で発表するイベントもありました。 その他にも私はInternational Eveningを主催したことがあります。各国の生徒が協力して国の料理を作り、みんなでビュッフェスタイルで食べるイベントです。先生方に協力していただき、ダイニングホールとキッチンを借りて行いました。そこで日本人チームはトンカツを作りました。 日本人チームが作ったトンカツ 英国ボーディングスクールの授業内容 1年目はGCSEを勉強しており、Science(理科)、Mathematics(数学)、English as a Second Language(英語), Religion(宗教学)とStudent Selected Studies(選択科目)でした。選択科目にはGeography(地理)、History(歴史)、Art(美術) , Design and Technology(デザインとテクノロジー)、Food and Nutrition(料理と栄養学)などがありました。 私は理系だった上、英語の授業についていくのに必死だったこともあり選択科目ではArt、Design and Technology、そしてFood and Nutritionを選択しました。英語がネイティブの生徒はフランス語なども選択可能でしたが、留学生は必ずEnglish as a Second Language(ESL)をとらなければならず、他の言語は選択できませんでした。ESL以外の授業は全て現地の生徒たちと一緒でした。 私は日本で購入した電子辞書をどの授業にも持っていき、常に単語の意味を調べながら受けていました。最初の1年は辞書を使用して試験を受けることが許されていました。試験の際には先生から英和辞典が手渡され、それを使って試験に挑んでいました。 イギリス高校留学で得たこと 先生のサポートに感激した日 特に印象に残っているのは理科の授業で試験が返却された時のことです。私は60%しか得点できず、周りの不真面目な子たちと同じくらいの点数でとても悔しかったのですが、先生は私の努力を褒めてくれました。 しかし他の生徒がそれを聞いて「でも辞書を使ってるしね」と嫌味を言いました。それに対し先生は「じゃあ君は他の国に行ってその国の言語でテストを受けた場合、辞書を使えばこの点数取れるのか?簡単なことではないよ、母国語で受けても簡単じゃないんだから」と返してくれました。この先生のサポートは今でも忘れられません。このように素晴らしい先生方がたくさんいる学校でした。  Comfort zoneに戻るか挑戦を続けるかの決断 渡英してから1年経った時の夏休みに帰国した際、正直イギリスに戻るか少し悩みました。友達が少なく、授業も難しい。でもやっと英語にも慣れてきたこと、そして何よりも先生方の期待に応えたい気持ちがあり、もう1年、せめてGCSEだけでも終えようと、戻る決心をしました。 重たい足を引きずり、再び寮に戻ると、先生が「戻ってきてくれてよかった」と声をかけてくれました。複雑な心情で戻ってきたけれど先生方がいれば頑張れると思いました。 私の学年に新しい留学生が増え、寮にも何人か入ってきました。英語が全く話せなかった中国人の生徒が1人いて、その子に英語を教えながら暮らしていたらいつの間にか自信もつき、留学生活が楽しくなっていました。そして授業にもついていけることに気が付きました。友達も増え、去年から同じクラスだった生徒達に「Yui、英語すごく上達したね」と言われたときは本当に嬉しかったです。 おかげでGCSEは良い成績で卒業できました。次回はA-level、やホストファミリー、休暇の過ごし方について書きたいと思います。 https://passport-to.com/articles/9/

新着記事

New articles

NEW

キングスカレッジロンドン: 学科の先生インタビュー編「リベラルアーツって何を学ぶの?」

前回の記事では僕のKing’s College London(キングスカレッジロンドン)での経験を踏まえてLiberal Arts(リベラルアーツ)という分野を紹介しました。今回は実際にリベラルアーツを教えている先生目線のリベラルアーツをお届けします。 https://passport-to.com/articles/22/ キングスカレッジロンドン副学部長のChris先生に聞く インタビューしたのはChristopher Holliday先生です。Chris先生は学科内で人気が高く、現在Department of Interdisciplinary Humanities(学際的人文学部)のDeputy Director(副学部長)を務めています。取材を通して先生のバックグラウンドやリベラルアーツ学科発足当時の話などからリベラルアーツの魅力を探ることができました。 Yuki お久しぶりです!僕たちが卒業してからの、今のキングスのリベラルアーツはどのような感じですか? 久しぶりだね!君たちがいた頃、キングスのリベラルアーツは一つのプログラムでしたが、ちょうど2024/25年度からDepartment of Interdisciplinary Humanitiesが設立されて、正式な学部になりました!これによってリベラルアーツの修士課程も近々始まる予定です。 Yuki そうなんですね!今日はよろしくお願いします。 Chris先生の経歴 ウォーリック大学での学び Yuki まずは先生自身のこれまでの経歴について詳しく教えてください。 私はUniversity of Warwick(ウォーリック大学)でFilm and Television Studies(映画・テレビ学)を専攻していました。今のイギリスの学習環境は、私が学生だった頃に比べて大きく変わっています。 当時の大学は「義務教育で扱わない特殊な科目を勉強できる場所」と認識されていました。私はそれまで全く触れたことがない映画とテレビという分野にすごく惹かれて大学で勉強することにしました。今だとGCSE(中等教育修了試験)でもFilm Studies(映画学)やArt(芸術)などの科目を勉強することができるようになりましたね。 ウォーリックで学んだ3年間はとても充実し、楽しかったです。卒業して1年間のギャップイヤーを経て、MA(Master of Arts - 文学修士)を取るため再びウォーリック大学に戻ってきたのも、私のUndergraduate(学部課程)での経験があってこそでした。 キングスカレッジロンドンでPhDを取得し、そのまま教員に 私の家族のほとんどが教師です。そして自分もそれに続くような形で、2009年からキングスの教員になりました。キングスは自分がアニメーション研究でPhD(博士号)を取った大学でもあります。 最初はアニメーションなどの専門分野を教えていました。その後徐々にInterdisciplinarity(学際性)に興味を持ち、私の担当は当時新設されたばかりのリベラルアーツプログラムにシフトしていきました。 リベラルアーツ内でMajor(専攻)やMinor(副専攻)を決める教育スタイル自体はアメリカ由来のもので、当時イギリスでは珍しかったです。キングスはイギリスで初めてリベラルアーツ学習を取り入れた大学の一つで、創設してから十数年経ちます。まだまだ始まったばかりですね。 映画研究からリベラルアーツに転換 Yuki 先生自身が映画学から、リベラルアーツにシフトしていったきっかけは何ですか? 私は2009年にキングスに着任してから6年間映画学科の授業を担当していました。2015年に当時創設されて3年ぐらいのリベラルアーツの教員から、リベラルアーツで映画学を担当できる教員を探していると声がかかり、Open Day(オープンデイ - 日本でいうオープンキャンパス)で模擬講義を担当することになったのがきっかけです。 オープンデイの模擬講義を準備する過程でリベラルアーツのプログラムや学生が学べる科目の種類、異なる科目間のバランスについて理解しました。そこで「つながり」という考え方に気づいたんです。 学生たちは異なる分野に興味を持って来るのですが、リベラルアーツではそれらがどのように交差し合うかを、少しメタ認知的に考えるように促すことが大事だと感じました。異なる学問分野の境界を超えて繋がるものは何か、ということです。 例えば、リベラルアーツで専攻や副専攻として「植民地主義」や「1930年代のアメリカ史」を選ぶことはできませんが、それらは「人種」や「ジェンダー」「セクシュアリティ」といった概念の一つでもあります。 トピックの中には専攻分野や学問の枠組みだけでは語れない「つながり」や「見えない糸」のようなものが存在して、リベラルアーツではそういったものを様々な科目を通して考えることができます。 決まったカリキュラムはなく、学生自身が学びたいことを選ぶ リベラルアーツは、学生一人ひとりに合わせてカスタマイズされた学位を学生自身がキュレートし作り上げていくところだとよく説明します。複数の分野を勉強したい学生も、一つのことだけをやりたい学生も、最終的には独学者のようになっていきます。自分が選んだ自分だけのカリキュラムを通して、身につけた知識がどのように議論で役立つかを学んでいくのです。 私自身、リベラルアーツの教員として学生と同じ経験をするような立場でした。私はSingle Honours(単一専攻)の出身で、映画学を履修したから映画の分野で働くものだと思っていました。 しかしこういった学際的なプログラムの中に自分の居場所を見つけ、今はリベラルアーツの映画学科の担当として、様々な分野を映画学に結びつける役割を担っています。映画学からリベラルアーツへ移った時は自分の知識が部門にどう貢献できるのか見つける必要があったんです。 キングスカレッジロンドンのリベラルアーツプログラム立ち上げ秘話 Yuki なるほど。一からリベラルアーツのプログラムを立ち上げていくプロセスはどうでしたか? リベラルアーツを定義するところから始まり 最初の頃は、どういうプログラムにしていくか、どんな学びを提供するのか、プログラム自体を定義していくプロセスでした。その中で定めたガイドラインがありました。まず一つ目はアメリカの専攻・副専攻のモデルの導入です。つまり、選択科目によって履修単位の半分以上を特定の専攻科目に割きつつ、他の分野からも組み合わせて履修できる、というシステムです。 キングスのリベラルアーツのオフィスがあるVirginia Woolf Building 文系中心のプログラムに もう一つはArts and Humanities(人文芸術分野)に焦点を当てました。つまり、科目は人文学中心で、数学や自然科学を取り入れないということです。リベラルアーツで理数系科目を必修にしている大学もあります。しかしキングスでは私たちの目指す学位を構築するために何を含めるべきかを考えた結果、理数系科目を含めないと決定したのです。 私たちの制度を真似て、リベラルアーツに独自の要素を導入する大学も出てきたみたいです。ただ、学生たちから理数系科目を履修できないかと聞かれることはあります。その際、専攻することはできないと伝えますが、それに近い内容を扱うモジュールを紹介しますね。 専攻の枠組みだけでも、学生が履修できる科目を語り尽くせないくらい多いです。 学生の知的好奇心を刺激 色々考えるうちにリベラルアーツのコンセプトは学生のIntellectual curiosity(知的好奇心)を刺激するものだなと感じました。一つの分野に集中する必要がないため、「何をしたいかわからない」「やりたいことはたくさんあるが、どれが自分に本当に合っているのかはっきりしない」もしくは「色々な分野を勉強してみたい」といった悩みを持つ学生に響きますし、リベラルアーツ自体そういった学生向けによくデザインされていると思います。 このプログラムには、学生が学びの過程で選択をする瞬間がたくさんあるというのも知的好奇心を掻き立てると思います。プログラム自体、まず様々なスタート地点が用意されています。全く触れたことのない分野を選ぶのか、ずっと興味があって勉強してきた分野を追究するのか、自分なりのユニークな学びが選択できます。 その後、学生はどうやって異なる分野が結びつくのかを見つけ出します。学生たちに様々なスタート地点が用意されていて、それぞれ違うモジュールを取り入れることで、無限の組み合わせを作ることができることがリベラルアーツの特徴だと思います。 どんな専攻を選んでも語れるテーマ その中で、リベラルアーツのコアモジュールというものもあります。学生が3年間の中で履修するコアモジュールは“Lives of London” “Writing Liberal Arts” “Space, Power, Agency” “Translation across Disciplines”の4つです。これらは全部「コンセプト(概念)」を基盤に構成されています。「ロンドン」「ライティング(書くこと)」「空間・権力・主体性」「分野横断的な翻訳(応用)」といったテーマを中心に授業を進めていきます。 これらのテーマに共通することは「様々な学問分野にまたがるコンセプトやアイデア」であり、授業作りをするときはこういったものを大切にしています。そうすることで、教室にどんな学生が座っていても——大学の中での学びに限らず、それ以前の知識・経験がどのようなものであっても——必ずそのテーマに関して「語れること」があるようになっているんです。 授業は「patience enough(我慢強く)」、そして「open enough(開かれた)」設計にしていて、どの分野を専攻・勉強していても、授業中に出てくる概念について自分の視点から意見を語れるようにしています。 そしてクラスで一番大事にしているのは、学生の意見が「informed(情報に基づいている)」「valid(正当なもの)」となるようにする点です。授業が「concept driven(テーマやコンセプトに基づいている)」であること。私たちは皆、共通の「奇妙で好奇心をそそるオブジェクト(テーマ)」について、何かしら語るべきものを持っている——そうした前提で授業をデザインしています。そうすることにより学生たちがそれぞれの入口を見出すことができるようになっているのです。 5005通りのモジュールで唯一無二の学びを選択 Yuki 無限の可能性があるプログラムだなと改めて実感します。 リベラルアーツプログラムの教員として、これまでたくさんの学生に巡り合いましたが、同じモジュールの組み合わせを持っていた学生はいないと思います。このプログラムでは5005通りのモジュールの組み合わせがあります。学生たちが勉強していく中で、私たちが気づかなかった分野間の繋がりを発見してくれたりもするのでこの学問に終わりはないと思います。 リベラルアーツを学ぶ学生ならではの苦悩 多様な選択肢をじっくり悩めんだ先にある成長 キングスのリベラルアーツでは今でも科目が増え続けています。たくさんの選択肢に直面し、学生たちが不安になってしまうこともあるかもしれないです。これはリベラルアーツ教育に必ず付いてくる「リスク」だと思います。悩んだ末にそれを乗り越えて、自分だけのプログラムが完成するときは学生自身にとって自分の知的好奇心が実る瞬間だと思います。 Yuki たくさんの選択肢がある、というのはまさに僕がリベラルアーツ学科を選んだ大きな理由の一つでした。3年間はとても充実しましたが、同時に不安を感じていたのも確かです。実は3年目の終わりになっても、将来どの専門分野に進みたいのかをはっきり決められなかったんです。それでも最終的には、とても実践的で大きな経験になりました。というのも、現在働いている中で、一つの決断を下すだけでも、先生がおっしゃったように様々な視点が必要になるからです。そうした視点を持つことで、より論理的で、より効果的な判断ができるようになります。私にとって、異なる分野を学びながら点と点を繋げる力を培えたことは、とても大きな収穫でした。 そうですね、「つながり」とか「断絶」とか、そういうものが異なる分野の間にどうあるのかを見出すこと、これこそが学生にこうしたモジュールを受けてもらう理由なんです。分野同士の重なりや交差、分岐を体験してもらうためなんですね。同じ資料を読んでいても、別の科目のなかで取り上げられると、違う結論にたどり着くこともあります。 様々な学問分野を学べるからこそ身に付く強み よく学生から聞く不安は、「単一専攻よりも薄められたバージョンをやらされているんじゃないか」です。でもそんなことは決してなくて、むしろ複数の学部や学科の内容にアクセスできて、異なる分野の要素を組み合わせて学んでいくことができるんです。 それ以外にも1年間の留学をすることができる機会があったり、語学を履修できたり、インターンシップを受けることができるモジュールもあって、内容が濃いものになっています。 もうひとつの不安は、君が言ったような「リベラルアーツが自分の今後のキャリアにどう繋がっていくのか」という点ですが、これも心配はいりません。 もちろん学生は、自分の専攻や副専攻の分野でさらに研究を深め、そのキャリアに進むこともできるし、プログラム内で少しだけ触れた分野をさらに究めることだって可能です。単一専攻の学生と同じくらい一つの分野でしっかり訓練されているので、後から専門性を深めることも十分にできるんです。 学びの選択肢が多いことは学生のキャリアを妨げるものではありませんし、単一専攻の学生と特別違うこともありません。ただ、そこにたどり着くための道筋が少し違う、というだけなんです。 Yuki 本日はありがとうございました! 次回はリベラルアーツの学びとしての広がり、キングスのリベラルアーツプログラム卒業生の進路についてもっと深掘りしていくので、お楽しみに! https://www.kcl.ac.uk/study/undergraduate/courses/liberal-arts-ba

留学生活をもっと楽しむ!イギリスから行けるヨーロッパおすすめ都市

  こんにちは!Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)でメディアを学んでいるKotokoです。 今回は、イギリス留学の大きな魅力のひとつ、ヨーロッパ旅行について私の経験や友人の話をもとに、週末でも行きやすい都市から長期休暇に楽しめる都市まで紹介します。 イギリスからはヨーロッパ諸国に行きやすい?! イギリスは地理的にも交通の面でもヨーロッパ旅行にとても便利な場所です。学生は普段勉強で忙しいですが、週末にふらっと出かけてリフレッシュすることもできます。なぜこんなにも気軽にヨーロッパ旅行ができるのでしょうか?主な理由は3つです。 LCC(格安航空会社)が豊富Ryanair(ライアンエアー)やeasyJet(イージージェット)を使えば、片道数千円で飛行機に乗れることもあります。 Eurostar(ユーロスター)で直行ロンドンからパリやブリュッセルまで電車で約2〜3時間。飛行機のように2時間前に空港に行く必要もなく、便利です。 空港アクセスが良いロンドンには複数の空港があり、ヨーロッパ各地への直行便が充実しています。 週末で行けるおすすめ都市 パリ(フランス) ロンドンからユーロスターで約2時間半!おしゃれな街並み、美味しい食べ物、歴史的建物が中心地に集まっていて、週末旅行にぴったりです。 おすすめTo Doリスト クロワッサンやバゲットを買って、エッフェル塔が見えるトロカデロ広場でピクニック ルーヴル美術館(チケットは公式サイトで事前購入がおすすめ) 夜のセーヌ川ナイトクルーズでエッフェル塔のシャンパンフラッシュを鑑賞 トロカデロ広場でピクニック ナイトクルーズで見たエッフェル塔 ブリュッセル(ベルギー) ロンドンから約2時間。落ち着いたヨーロッパらしい街並みに加え、チョコレートやワッフル、ビールといったグルメも魅力です。 おすすめTo Doリスト グラン=プラス(世界遺産の広場)を散策 本場のベルギーチョコレートを食べ比べ 名物ワッフルやフリッツ(フライドポテト)を食べ歩き ベルギーワッフル フリッツ(フライドポテト) 長期休暇におすすめ都市 学期末の休みには、時間をかけてより多くの国や都市を訪れるチャンスがあります。 ローマ(イタリア) ロンドンから飛行機で約2時間半。古代ローマ帝国の遺跡や歴史的建物が街中に点在していて、コロッセオ、フォロ・ロマーノ、トレビの泉など見どころが盛りだくさんです。そして本場のイタリアンは、どのレストランに入っても外れなし! おすすめTo Doリスト ナイトバスに乗って、コロッセオやフォロ・ロマーノの夕景を楽しむ 本場イタリアンと、定番リキュール、アペロールスプリッツを堪能する ローマでの本場イタリアン カプリ島 ➕ ポイント ローマ観光と合わせて、カプリ島などの美しい島を訪れるのもおすすめ。私は夏に青の洞窟で有名なカプリ島へ行きましたが、透き通る海と空に癒され、都会の喧騒から離れてゆったり過ごせました。 サントリーニ島(ギリシャ) ロンドンから飛行機で約4時間。エーゲ海に浮かぶサントリーニ島は、真っ白な家並みと青い屋根、そして世界的に有名な夕日が魅力です。中心地にはおしゃれなカフェやレストランも多く、地中海料理や新鮮なシーフードが楽しめます。非日常感をたっぷり味わえるスポットです。 おすすめTo Doリスト 夕焼けを眺めながらのディナー レッドビーチやブラックビーチを巡る乗馬ツアー イアの街を散策して、ストリートフード、ギロピタを食べ歩き フィラでの夕焼けを眺めながらのディナー 豚肉のギロピタ カッパドキア(トルコ) ロンドンからイスタンブールまで約4時間、その後さらに1時間のフライトで到着。少し遠いですが、奇岩が広がる不思議な景観と、空を彩る熱気球で世界的に有名なエリアです。洞窟ホテルや歴史的遺跡も点在していて、自然と文化の両方を楽しめるのが魅力。 おすすめTo Doリスト カッパドキア名物の熱気球体験!※天候によっては飛ばない日もあるので、最低3泊ほど滞在すると安心です ギョレメ周辺の名所を1日で効率よく巡れる「レッドツアー」に参加 洞窟ホテルに宿泊し、朝のテラスから空に浮かぶ気球を眺める 気球から見た景色 レッドツアーで訪れたゼルベ野外博物館 イギリス留学生向けの節約術 学生は学業で忙しく、アルバイトが難しい人も多いと思います。だからこそ、旅行のときに「いかに節約するか」がとても大事です。ここでは、私が実際の旅行で学んだ節約術を紹介します。 LCC(格安航空券)を賢く利用する RyanairやeasyJetは、予約が早ければ早いほど安くなることが多く、片道数千円でチケットを取れることもあります。荷物はできるだけ機内持ち込みのみにして、追加料金を避けるのがコツです。 旅行のピークを外す 金曜夜や月曜朝の便は料金が高くなりがち。木曜夜出発や日曜夜帰りを狙うと安くなることが多いです。 学生割引をフル活用する 現地で学生証を提示すると、美術館や交通機関で割引が受けられる場合があります。イギリスの大学の学生証が使える場所も多いので、旅行のときは必ず持参しましょう。 ヨーロッパ旅行の注意点 ヨーロッパ旅行は留学生活の大きな楽しみのひとつですが、気をつけるべき点もたくさんあります。実際にトラブルに遭わないために、最低限知っておきたい注意点をまとめました。 シェンゲン協定とビザ シェンゲン協定の締結国間(主にEU加盟国)では国境検査なしで自由に移動できます。しかしイギリスはシェンゲン協定に加盟していません。そのため、イギリスの学生ビザを持っていても、シェンゲン圏内を自由に滞在できるわけではありません。 日本国籍の留学生の場合、観光目的ならビザは不要ですが「あらゆる180日のうち最大90日間」という滞在制限があります。 また、私は旅行先からイギリスに戻るときに、よく空港の入国審査で「学生ビザを見せて」と言われました。eVisaにすぐログインできるように準備しておくと安心です(スクショはNGと言われたこともありました)。  スリ対策 ヨーロッパは観光地ほどスリが多いです。電車内、レストラン、カフェなど、いつ被害に遭うかわかりません。実際、友達はレストランでスーツケースを専用置き場に預けていたのですが、食事を終えて出るときにはなくなっていました……。 財布やパスポートは小さなポーチやウエストバッグに入れて常に身につけ、スマホをテーブルに置きっぱなしにしないなど、徹底してスリ対策をしてください。 まとめ イギリス留学は、学びの場であると同時にヨーロッパ全体を体験できる大きなチャンスです。週末の小旅行から長期休暇の周遊まで、計画次第で「学生生活でしかできない体験」が待っています。ぜひ、留学生活の一部としてヨーロッパ旅行も楽しんでみてください。 https://passport-to.com/articles/26/

インペリアル合格者が教えるPersonal Statementの書き方 | イギリス大学進学

こんにちは、インペリアルカレッジロンドン1年のKenshuです!今回はイギリスの大学に応募するために必要なPersonal Statement(PS)について話していこうと思います。僕も最初はPSってなに?何をしたらいいの?ってすごく迷ったのでこの記事が参考になれば嬉しいです。 https://passport-to.com/articles/27/ イギリスの大学に出願する時はUCASを使って各大学に応募します。大学によって出願書類の一つにPSという志望書みたいなエッセイがあります。今回はPSで書く内容とコツなどを共有していこうと思います。 Personal Statementとは? Personal Statementはなぜ自分が選んだ専攻をやりたいかや自分の特技、経験を大学側にアピールするエッセイです。4000文字以内という制限があるため内容の選択と構成がとても重要になってきます。 また、僕が出願したときまでは自由形式でしたが、2025年の出願からは3つの質問形式になりました。それぞれの質問に360文字以上で回答する必要があります。全体で4000文字以内にする点は変わらないです。 質問は以下の3つです。 Question 1: Why do you want to study this course or subject? Question 2: How have your qualifications and studies helped you to prepare for this course or subject? Question 3: What else have you done to prepare outside of education, and why are these experiences useful? 📢こちらの記事と動画にもパーソナルステートメントの形式や書く内容について詳しく解説しています↓ https://youtu.be/llu2jjukrWk PSでなにを書けばいいの? PSは色々な書き方があります。ここでは僕が書いたことや僕がやっておいてよかったことなどを紹介するので絶対にこれをやってください!というわけではないです。参考程度にしていただけたら嬉しいです。 PSでは一般的に以下のようなことを書きます。 ・その専攻を選んだきっかけ・Extra Curricular(課外活動) 場合によっては将来の目標や大学で学びたいことを最後に少し触れると、志望理由からゴールまでの筋の通った流れができ、全体に一貫性が出ます。 内容1: その専攻を選んだきっかけ PSでは自分がどれほどのその専攻に対する熱意があるのかを大学側に示すチャンスです。なぜ興味を持ったのか、なぜ学びたいのかを書きます。例えば小さい頃の経験や疑問、自分が読んだ本、見た映画やニュース、家族の影響など色々なきっかけがあると思います。 僕はChemical Engineering(CE/化学工学)に応募したので最初のパラグラフでは小さい頃からあった水道水などのWater Treatment(水処理)に関する疑問、最近読んだCEの本の中のQuoteを切り抜き、これらのことでCEに惹かれたなどを書きました。 専攻を選んだきっかけを書くときのポイントとしては、その専攻と自分の関わりをできるだけ具体的にして、それがどう学びたい学問に繋がっているかを書くことです。僕は、小さい頃からの疑問から始まり、本を読み、インターンをやり、その過程で自分が選んだ専攻をやりたいと思ったなどと関連性を持って書くことです。(色々な書き方があるので参考程度に) 内容2: Extra Curricular(課外活動) 一口に課外活動と言っても色々なことがあり、主に、 インターンシップ 自由研究 ボランティア コンペティション 学校内での委員会やクラブ などが書けます。これらについて、一つずつ説明していきます。 課外活動はなんでもいいからとりあえずやるのではなく、自分の専攻に関することや、リーダーシップやチームワークが示せることをやると一番いいです。 また、活動を書くだけではなくそこから得た学びを書くことがポイントです。 1. インターンシップ PSに書く内容のうち、インターンシップは高く評価されます。やりたい分野の企業や大学の研究室などでのインターン経験は自分がいかにその分野に熱心なのか、説得力を持って伝えられます。 僕はForm 6とForm 7の間の夏休み中にインターンを2つやりました。 1つ目は日本の城西大学の理学部と薬学部の研究室インターンです。ここでは実際に城西大学の研究室に行き、テーマに沿って研究を進めて、最後にプレゼンテーションをするという内容でした。 インターンシップの内容 2つ目は実際にCEをメインとする企業にインターンとして工場訪問やChemical Engineersが実際にやっている仕事などをやりました。 これら2つのインターンに関する内容が僕のPSの大半を占めていました。インターンでは知識を実際にどう活かせるのかを経験するため、現場を理解している学生であるという印象を大学側に与えられます。 2. 自由研究 A-LevelのカリキュラムではEPQ(Extended Project Qualification)という科目があります。これは正式な科目ではなくA-Levelの半分のQualificationがもらえます。そのためA-Levelを3教科とEPQを取っている人が多いです。(学校によってはEPQを取っていない場合もあります) EPQで自分のやりたい研究(リサーチ)ができ、文系だと例えば論文を書き、理系だと実際に実験などをやり最後にレポートを書きます。 また、研究テーマが志望理由と結びついていると専攻への関心の深さを示すことができます。EPQでなくてでも自発的に研究をすることも書けます。 3. ボランティア ボランティアやNPO活動などもPSに書ける内容です。これらのことをリーダーシップやチームワークに結びつけてアピールすることができます。僕は日本で留学を広めるNPOで活動をしました。専攻と直接関係がなくても人と協力することや社会に貢献することが重要です。  4. コンペティション 各種試合や大会の受賞歴はPSにおいて強いアピールポイントになります。必ずしも大規模な全国大会でなくても問題ないです。学校内や地域レベルのコンテストでも、自分の専攻や興味と関連づけて書けば十分に価値があります。 例えば理系ならサイエンスフェアや数学コンテスト、文系ならエッセイコンテストやディベート大会などが挙げられます。重要なのは「なぜその経験が自分にとって意味があったのか」「そこからどんな学びを得たのか」を説明することです。僕はSMC(Senior Mathematics Challenge)やBPhO(British Physics Olympiad)などに参加しました。 5. 学校内での委員会やクラブ活動 学校内での活動も非常に効果的です。特にリーダーシップやチームワークなどを必要とする立場であれば、大学側は高く評価します。例えばPrefect(生徒会)、House Captain※などの役割は責任感を示せますし、部活やクラブ活動でのキャプテンやメンバーとしての経験も強調できます。 僕の場合はHouse Captainを務めた経験があり、それを通じて培ったリーダーシップ・問題解決力・他の生徒をまとめる力についてPSに書きました。 ※イギリスの学校には生徒をいくつかのグループに分けるHouse System(ハウス制度)があり、House CaptainはそのHouseのリーダーです。Houseはイメージでいうとハリーポッターシリーズに出てくるグリフィンドールやスリザリンのような集まりです。 最後に Personal Statement は自分自身を大学側にアピールする大事な機会です。しっかり準備をして、自己分析をすることで心惹かれるエッセイを作ることができます。僕自身何回も書き直しを重ね、自分の思いを伝えることができたと思っています。この記事が少しでも皆さんの参考になり、Personal Statementの作成に役立つことを願っています。 https://www.ucas.com/applying/applying-to-university/writing-your-personal-statement/the-new-personal-statement-for-2026-entry

イギリス医学部留学記:グラスゴー大学で学んだ5年間と研修医生活

こんにちは!Yuiです。イギリスに15歳の時に単身留学し、2022年にUniversity of Glasgow(グラスゴー大学)の医学部を卒業しました。前回までは大学に入る前までのことでしたので今回は医学部での経験について書きたいと思います。 https://passport-to.com/articles/6/ https://passport-to.com/articles/9/ イギリスの医学部受験 当時(2016年頃)のイギリスにはスコットランドを含め、医学部を持つ大学は30校ほどしかなく、すべて国立大学でした。定員は大学によって異なりましたが、留学生は全体の7.5%までという決まりがありました。 UCASを通して出願し、Medicine(医学科)は最大4校まで受けられますが、大学によって必要な試験が異なりました。A-levelなどでの良い成績はもちろんのこと、UKCAT(今はUCAT)やBMAT(現在は廃止だそうです―詳しくはこちらを参照ください)などの適性検査が必要でした。 それをクリアすると最大の難関は面接でした。面接では世界中の留学生が集められ、シンガポールやマレーシア、ヨーロッパからの志望者が待合室にいました。 イギリスの医学部選びのポイント PASSPORT運営元の留学エージェント「Moi Education」の医学部のページにもあるように、大学によって入試も異なればその大学の教え方も異なります。そのため、自分に合った方針の大学や、学生の多さなどを考慮して4つまでの大学を選びます。 授業スタイル イギリスの医学大学の授業はPBL(Problem Based Learning)、Traditional learning(伝統的な授業)あるいは両者混合のIntegrated learning style(統合型授業)という教え方の違いがありました。 PBLとは、レクチャーではなく小さいグループに分かれて話し合いながら勉強をするという方法です。Traditional learningはレクチャーのみで勉強する方法です。主にオックスフォード大学とケンブリッジ大学がそれを実施していました。ほとんどの大学がPBLを取り入れていて、統合型授業(PBLとレクチャーの混合)の場合とPBLだけの大学がありました。私が卒業したグラスゴー大学は統合型授業を採用していて、それも選んだ理由の一つでした。 私はそれに加え、あまり大きすぎない大学が良かったのと、当時数少なかった解剖学の授業で実際の人体の解剖ができると言われていた大学だったことを理由にグラスゴー大学を選びました。 グラスゴー大学医学部1、2年目の時間割: 解剖学 グラスゴー大学の医学部は他の理系の学部と別なので入学直後から医学の勉強が始まりました。最初から皮膚の構造について授業がありました。スコットランドに着いたばかりの私にはスコティッシュアクセントが難しく、教授のほぼ全員がグラスゴーの人だったので授業を聞き取るのにも苦労したのを覚えています。 入学したときにもらったgoody bagに入っていたもの 1年目のレクチャーは朝に医学部のホールで行われ、お昼休憩の後は解剖学などラボの時間でした。ホルマリンに漬けられたご遺体がいくつもある部屋に入り、実際にメスを渡されて解剖していきます。週ごとに習っているトピックに合わせて教授の指示に従って解剖していきました。始める前にはご献体くださった方に感謝の気持ちを込めてお祈りをしました。 週2くらいの頻度でPBLがあり、それ以外はレクチャーでした。PBLではレクチャーで習っていることと同じ内容で、患者さんの事例が渡され、担当の先生(教授ではなく医師)を含めてグループでディスカッションを行います。 PBLの授業で先生が描いた膵臓とその周辺の臓器 PBLの他にもVS(Vocational Studies)という授業があり、同じくグループに分かれます。この授業ではコミュニケーション力を上げたり、道徳的な話し合いをしたりする場でした。Breaking bad news(癌の診断報告といった残念な結果の告知の仕方など)や怒りを表す患者さん、そして性病の診断結果の報告など、難しいコミュニケーションの場でどう対応するかを習いました。 先生がまず見本を見せたあとグループ内で話し合います。その後1人ずつカメラのついた部屋に行き、患者役のボランティアさんに対して指定されたやり取りを行います。グループ全員で1人ずつのパフォーマンスを評価します。とても緊張しますが、毎週のようにあったので段々と慣れていき、自信がつきました。 病院実習の始まり 1年目は1ヶ月に1、2回だけ、病院に行ってグループでBedside Teachingがありました。これは実際に入院している患者さんに先生が許可をとり、患者さんの病名を知らない状態でグループごとに質問をし、病名を当てる授業でした。その後その病気について話し合い、学ぶ場でした。やはり最初の方でこれを経験できるのはとても楽しかったです。時々GP(General Practitioner/かかりつけ医)にも行き、GPでよくみられる病気の話や、対処法、そして在宅医療などの勉強もしました。 2年目からは2週間に1回くらいに増え、3年生では週2回ほどありました。 魔の3年目 グラスゴー大学では3年次が一番きついとされていました。最初の15週間は週3回朝から晩までレクチャーを受け、残りの2日は一日病院実習か、GP実習でした。時々レクチャーの時間の代わりにCBL(Case Based Learning)というPBLよりも実習につなげたグループ(私は正直PBLとの違いはあまり感じませんでした)での授業もありました。 その15週間が終わると、とても大きな大事な試験があり、それに合格すると本格的な実習が始まるのでした。 急な臨床実習漬けの毎日 試験合格の翌週から実習が始まりました。数人ごとに病院と科が分けられます。だいたい同じ病棟には1人、多くても2人でした。私は最初にCCU(Coronary Care Unit/冠動脈疾患集中治療室)に割り振られ、病棟に着きましたが私を待っているような人はいませんでした。みんな忙しなく動いている中ぽつんと立ち止まっていると、看護師さんが話しかけてくれました。医学部生だと言うと、「医師はみんなあっち行ってるよー」とだけ言われ、どうしたらいいかわかりませんでした。 そのまま動けないでいると、HCA(Healthcare Assistant)の方が荷物置き場を教えてくれ、荷物を置いて出てくると看護師さんが「もしかして臨床実習初めて?」と察してくれました。そうだと伝えると、医師を一緒に探し、紹介してくれました。 医師からはなんの指示もなく、とりあえず「Follow me」とだけ言われたので、ただひたすら必死について回りました。このように臨床実習では教えてくれそうな医師を捕まえ、同行していいか聞き、医師の仕事を見学します。運が良ければ結構教えてくれる医師もいて、運が悪ければ邪魔扱いされながら1日を過ごしました。 回診の時間には医師と一緒に病室を巡回し、ただよくわからないままついて回りました。決められた授業などがある時は抜けて授業に行き、大学から与えられたチェックリストをこなしていかなければなりませんでした。そのチェックリストには「問診をする」「循環器の身体診察をする」「血圧を測る」「心雑音を聞く」「心筋梗塞の患者さんの話を聞く」などいくつもの項目がありました。 GlasgowにあるQueen Elizabeth University Hospital その科の臨床実習が終わるまでにチェックリストの項目をすべて達成し、その科の医師からサインをいただき、提出することが必須でした。その他にもPhysiotherapist(理学療法士)やOccupational therapist(作業療法士)などの医療従事者について回る日もありました。 一応それぞれの科にEducational Supervisor(教育担当指導医)という実習生担当の先生(医師)がいて、実習が始まった数日後に1回、終わる時に1回ミーティングをします。しかしみんなとても忙しいので記憶にあまりないくらいその2回以外は関わってくれず、ミーティングの時間を確保するのも一苦労でした。最後に出席率や態度、やる気が評価されると“Merit”が与えられました。 3年生は一般内科と一般外科をいくつか回りました。3年目が終わると、Intercalationといって一旦医学部から抜け、他の学士号(提携している科目のみ)を1年で取得することのできるコースもありました。私は残念ながらやりませんでしたが、それで学士号をもう一つ取得することで就職に有利になることもあります。 4年目: 本格的な病院実習へ 4年生になると授業はほぼ病院内で行われるので、キャンパスに行くことはほとんどありませんでした。色々な病院を回るので車がないと不便でした。 コロナの後からできた医学生専用のscrubs(医療用白衣) 更に10週間ずつ一般内科と一般外科を回り、レベルアップしたチェックリストをこなすと同時にPortfolioの提出が必要でした。それには自分が選んだ患者さんのケースレポートと、その病気についての論文らしきものを書きました。 その合間にも授業があり、一般外科と一般内科が終わるとまた試験がありました。それに合格すると他の科の実習が始まりました。 私の代はここでコロナのパンデミックが始まり、一時中断になりました。 5年目と最終試験: OSCEとは 最終学年では最終試験に向けての勉強はもちろんのこと、実習や課題もひたすら出されました。神経内科、形成外科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、産婦人科、小児科、救急科、精神科そしてGPを回りました。それぞれのチェックリスト、そしてレポートは相変わらず必須でした。 それに加え、Prescribing Safety Assessmentという処方するための試験もあり、それにも合格しないと卒業して研修医が始まってから処方だけできないことになるのです。ただしこの試験は当時おそらく年3回くらいチャンスがあり、研修医1年目の終わりまでに合格すればいいとのことでした。 実習の終了から試験までわずか2週間しかなく、実習も毎日5時まである中で勉強するのは大変でした。筆記試験では記述問題と選択問題の2つがありました。それに加え、OSCE(Objective Structured Clinical Examination/客観的臨床能力試験)という臨床試験もありました。 OSCEでは小部屋にそれぞれ試験監督の先生とボランティアの他の学年の学生や役者さん、病院の患者さんのいずれかがいます。受験生は1人ずつ部屋のドアの前に立ち、1回目の笛が鳴るとドアに貼ってあるInstructionを読みます。そこには「あなたは2年目の医者です。患者は38歳の女性、主訴は頭痛。問診をし、CNS examinationをしなさい」などという情報があります。2回目の笛が鳴るとノックをして部屋に入り、自己紹介から始めます。 そこでコミュニケーション力、理解力、知識、そして与えられた項目を正しく実施するかなどで総合得点がつけられます。試験監督がその後質問をしてくることもあります。患者さん役の人があえて難しく反応してくることもあり、対応力を試されます。 このような形式の試験を連続で4つ行い、それが4日間続きました。 この試験もある一定の数を合格しないと卒業できません。毎年多くの学生が落第しますが、筆記は得意でもOSCEのせいで落第してしまった学生も少なくありませんでした。 そのくらい重要でしたので、試験勉強しながらも週末に何人かの友達と集まり、3、4時間かけてお互いに模擬OSCEをして練習しあいました。 イギリスの医学部卒業後と研修医生活 今は変わってしまいましたが、私たちの代は最終試験の前にもう一つ適性検査があり、その結果に応じて研修先の病院が決められました。現在はこの試験は廃止され、研修医の勤務先はランダムになったそうです。しかし、これも不評のため再び変更される可能性もあるようです。 最終試験に無事合格すると6月末に卒業式があり、そこからは正式に自分のことをドクターと呼べます。そして8月の最初の水曜日から与えられた病院で研修医が始まります。最初は仮免許状態で働くのですが、オピオイドの処方ができないなどの小さな制限以外は他のジュニアドクターとほぼ同じでした。 医学部の卒業式典の様子 卒業式 研修医の時にも担当のSupervisorがいて、定期的に業務の経過報告をします。お給料も入り、本格的に医者としての仕事ができ、医学生の時よりも毎日が充実していて楽しかったです。 研修医の間も同じくチェックリストのようなものがあり、しっかりとすべてをこなさないといけませんでした。授業も週1でお昼休みにあったのでその出席や、ケースレポート、先輩医師とのディスカッションなど、仕事の合間を縫って行わなければなりませんでした。CAPSというClinical procedure(臨床手技)のチェックリストもありました。 同期や他の医療従事者からの評価も必要で、それをすべてクリアすると2年目に上がれます。2年目は本免許になるのでできることが少し増え、同様にクリアすると研修医修了書がいただけます。 その後のキャリアは人それぞれで、専門医になったり、いろいろな科を転々としたりするなどさまざまです。最近ではイギリスの医師免許の書き換えだけで行けるオーストラリアに1、2年行く人も増えました。 最後に 医学部の勉強は決して楽ではなく、試験のたびに涙しながら勉強していました。卒業の日を夢見て頑張ってきたからこそ、最終試験に合格した時の気持ちは今も忘れられません。 医者の道を進んで本当に良かったと思いますし、私を育ててくれたグラスゴー大学にも感謝の気持ちでいっぱいです。

会員登録

会員限定記事やイベント情報を受け取ろう!

Subscribe  Sign In