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キングスカレッジロンドン「リベラルアーツって何を学ぶの?」学科の先生インタビュー②

前回の記事ではKing’s College London(キングスカレッジロンドン)のDepartment of Interdisciplinary Humanities(学際的人文学部)のDeputy Director(副学科長)であるChristopher Holliday先生にリベラルアーツ教育についてのインタビューを行いました。

Christopher Holliday先生

キングスカレッジロンドンの学際的人文学部の副学科長。専門は視覚文化教育。リベラルアーツプログラムの創立に携わった教員の一人。University of Warwick(ウォーリック大学)でFilm and Television Studies(映画・テレビ学)分野のBA(学士号)とMA(修士号)を取得し、キングスカレッジロンドンでFilm Studies(映画研究)のPhD(博士号)を取得した。

リベラルアーツ特集の最終回となる本記事ではインタビューの続きをお送りします。リベラルアーツの学びとしての広がり、キングスカレッジロンドンでリベラルアーツを学習することの意義、そしてキングスのリベラルアーツ課程の卒業生の進路などについてお話しいただきました。

近年注目を集めているリベラルアーツ

前回の記事でChris先生へのインタビューを通じてキングスのLiberal Arts(リベラルアーツ)課程について詳しく聞きました。リベラルアーツでは学生は複数分野を自由に組み合わせて履修し、自分だけの学位を“キュレート”する学び方が特徴で、分野横断的な「つながり」を考える力が養われます。必修のコアモジュールでは、概念やテーマを通じて多様な視点から議論することを重視しており、知的好奇心を刺激する設計になっているということを教えていただきました。

Yuki
Yuki

リベラルアーツはアメリカ発祥の学問ですが、ここ最近イギリスはもちろん日本でもリベラルアーツ教育を取り入れる大学が多くなってきたなと感じます。先生にとってリベラルアーツ教育が世界に広まっている理由はなんだと思いますか?

一つの分野に絞り込まない学際性

長い学問の歴史の中で、Single honours(単一専攻課程)のような「一つに分野を絞り込む」はむしろ最近の考え方なんです。

人間はもっと知的好奇心が旺盛な生き物だと思っています。それなのに、17歳や18歳という若い時期に、「この3年間はこの一つの分野だけ」というものを決めさせるのは大きすぎる決断ですし、少し早すぎるかもしれないです。そんなに若いうちに、なぜ自分を無理に限定しなければならないのか、と。それがリベラルアーツのInterdisciplinary(学際的)な考え方が学生に響く理由の一つだと思います。

リベラルアーツの授業が行われたキングスカレッジロンドンのStrand Campus
リベラルアーツの授業が行われるキングスカレッジロンドンのStrand Campus

学生は、まだ世界のことも、自分自身のことも模索している段階にいます。私たちはそういった学生たちに選択肢を広く持てるようにしておくことが大事だと思っています。彼らが「無理やり一つの学問に押し込められている」と感じないようにする。もちろんリベラルアーツでも一つか二つの分野に集中することはできますが、最終地点を変えたくなった時のために選択肢を開いておくことができるんです。

単一学問だけでは社会課題を解決できない

そしてもう一つは、現実の社会にある多くの課題を解決するには、学際的な発想が必要とされているという点です。

今の社会に存在する課題は一つの分野の知識や一つの利害関係者だけでは解決できません。複数の分野を横断して考えられること、異なるオーディエンスに向けて同時に発信できること、そういう力が必要です。ですから、こうした学際的な学位プログラムは、社会の現実によりしっかりと結びつけるよう作られています。

決して「専門性を平板化する」ことが目的ではなく、むしろ自分の専門分野は自分が思っている以上に他分野を横断できる、ということを学ぶのです。それが学生を訓練する上で大切なんです。

現代の世の中はかつてないほど複雑になっていて、そこから生まれる課題は、一つの学問だけの視点で簡単に解決できるものではありません。だからこそ、学際的な枠組みや視点を学生に身につけてもらい、それを実際の社会の中で応用できるようにする。そういった教育が、これからの世界にますます必要とされるのだと思います。

イギリス、そしてキングスカレッジロンドンでリベラルアーツを学ぶ意義

Yuki
Yuki

なるほど。ではイギリス、そしてキングスカレッジロンドンでリベラルアーツを勉強するということは学生にどのようなものをもたらすと思いますか?

汎用性の高い人材を育成

イギリスのリベラルアーツの学位は、幅広いスキルを身につけて、非常に適応力の高い人材を育てるためのものになっています。その結果、様々な進路に進む可能性が開かれています。

授業中の様子
授業中の様子

そして汎用性の高い「批判的思考」「異なるオーディエンスに向けたライティング」「問題解決」「コミュニケーション」といったスキルも同時に養われます。

こうした学際的な学びに焦点を当てていること、それによって得られるスキルは、非常に高い就業適性を持つものになっていると思います。つまり、多様な分野を横断して考えることのできる柔軟性と多様性を得られることが強みです。

ロンドン全体をキャンパスとして活用

キングスのような場では、単なる知識の寄せ集めではなく、それらの知識を活かして実際に幅広い分野に進んでいけるようなリベラルアーツ教育を設計しています。特定の学問分野に加えて、メディアやコミュニケーション、クリエイティブ産業、教育、国際関係など、幅広い分野で学び、将来に備えることができます。

他にもキングスカレッジロンドンでは大学の立地を最大限に活かしています。イギリスでリベラルアーツを提供している大学は他にもありますが、クリエイティブ産業などと直接的なつながりを持ち、インターンシップのモジュールを提供できているところは多くありません。

文化施設との距離も近く、劇場や博物館、テート美術館で授業をすることもできます。それはロンドン中心部にあるキングスだからできる強みです。その強みを活かして私たちはロンドンという都市全体をキャンパスとして活用しています。

“Lives of London”モジュールが最初の実践の場

ロンドンは学際的学習の実験室のような場所で、少し歩くだけで、すぐに学際的な思考を必要とする対象に出会える場所です。

私たちは、ロンドンという都市を理解するにはどんな学問分野が必要なのかを学生に問いかけるようにしており、Lives of Londonというモジュールを1年次に提供しています。ここで学ぶのは単なるロンドンの地理や歴史などではなく、ロンドンという都市を通して、リベラルアーツ教育をどう展開できるのかということです。

だから、知的好奇心・探究心が旺盛な人にとって、ここでの学びは本当に価値のあるものになると思います。そして私たちはそういう学生に世界に出て変化を生み出してほしいと願っています。キングスでのリベラルアーツの学位は、まさにそれを可能にするための準備をしっかり整えてくれるものになっています。

Yuki
Yuki

Lives of Londonは僕の一番好きなモジュールでした。大学を卒業して、リベラルアーツの友達数人とまだ連絡をとっているんですが、彼らのお気に入りでもあったみたいですよ。あのモジュールはリベラルアーツそのものについて学べただけでなく、ロンドンに来て数ヶ月しか経っていない中で「自分自身について考えるための場所」を見つけられたように感じました。私にとって、大学1年目にあのモジュールを受けることができたことは本当にワクワクしましたし、刺激的でした。

このロンドンを学ぶというモジュールは過去に「主に留学生だけに向けてのものなんじゃないか」という批判が出たことがありました。もちろん留学生がこのモジュールから多くを学べるのは確かですが、当然ロンドンで育った学生にとっての学びの機会も含まれるべきだと思います。だからこそ“Lives of London”という名前をつけているんです。

ロンドンで育った人にとっての「地域としてのロンドン」とロンドンの外から来た人にとっての「ランドマークとしてのロンドン」は全く異なります。どこで育ったのか、どんな背景を持っているのか——そうしたことがロンドンでの経験を大きく形作るので、私たちはその点についてもきちんと考慮するようにしています。

リベラルアーツの学位全般に言えることですが、基本的に「世界で起きていることをリアルタイムで追っていく」ことが大事です。だからシラバスもその時々のロンドンで起きていることに合わせて更新します。例えば授業の一環でタイムリーな展覧会に行ったり、授業に合った演劇を観に行ったりします。そうやってコアモジュールを「世界に応答するもの」にしているんです。

Lives of Londonはその最たる例です。というのもロンドンを中心に据えているわけですから。都市というもの、特にロンドンという場所は常に変化していて、生き生きと動いている存在です。だからこそ私たち教員も、それに敏感である必要があるんです。

キングスカレッジロンドン: リベラルアーツ学生の進路

Yuki
Yuki

リベラルアーツ課程で今まで印象に残っている学生はいますか?卒業生の皆さんはリベラルアーツでの経験を活かして、どのような進路を進んでいますか?

正直なところ、私たちの学科は発足してからそれほど時間が経っていないので、卒業生の進路について把握できているのはまだ一部に限られます。それぞれがどんな分野に進んでいるのか、すべてはわかっていないんですね。

ただ、何人か印象に残っている学生はいます。例えばメガ・ハリシュはインドのバンガロール出身で、詩や散文を書くクィア作家です。

※Queer(クィア)とは性的マイノリティを包括的に表す言葉。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど。作品のジャンルでもある。

彼女はキングスでのリベラルアーツの第1期生で、リベラルアーツソサエティの初代会長も務めていました。今も学生に向けてリベラルアーツの学位について話をしに戻ってきてくれることがあります。学科の立ち上げ期から関わってきた存在として、すごく印象的な人ですね。

それからレベッカ・ガイザー。彼女は5年ほど前に卒業したのですが、自分で劇団を立ち上げて「RJGプロダクション」という制作会社を運営しています。いくつか注目度の高いプロジェクトにも携わってきました。

今思い返してみると、彼女は音楽専攻でもなかったのは面白いですね。レベッカのように、入学時と卒業時で自分の将来のイメージが大きく変わる学生をよく見かけます。彼女の場合も、様々なモジュールを受講していく過程で、関心が大きく変わっていったんだと思います。

もうひとりはエマニュエル・ドット。私のアニメーションの授業を取っていた学生です。専攻は政治学で、副専攻として映画を選んでいました。エッセイの指導をしたこともあります。彼女は今、環境政策の分野で活躍していて、持続可能性に関する議論の中で大きな成果を上げています。

それにしても、学生たちが入学時に私が想像していたものとは全く違う進路に進んでいくのを見るのは本当に面白いことです。

Yuki
Yuki

本当に色々な学生がいて、先生としても彼等の進路を見届けるのは興味深いんじゃないですか

そうですね!様々な学生が集まって行われるセミナーが楽しいのはまさにその部分で、異なる伝統知を持った学生たちが集まるからこそ、議論がすごく生き生きとするんです。どんな視点が飛び出してくるか、教員側でも本当に予測できないんです。

「この仕事に同じ一日はない」とよく言われますが、本当にその通りで、特にリベラルアーツ課程ではまさにそうなんです。学生自身が日によって違う学部や学科の内容を取り扱っていて、同じ一日なんて存在しない。私たち教員チームとしても、その活気を強く感じています。

多様な視点が交差する教室から生まれる学び

Yuki
Yuki

先生は映画学科の授業も担当していたとのことで、その時とリベラルアーツの授業を担当するときの違いは感じますか

違いはいくつもあります。これはリベラルアーツの授業を行う時によくあることなんですが、どうしても自分の専門分野に引き寄せて話してしまいがちなんです。授業を作る時はそれを避けて、特定の分野に偏りすぎないシラバスを作らなければなりません。

リベラルアーツ授業へのこだわり

例えば、古典専攻の学生や政治学専攻の学生がいる中で、私が映画の例ばかりを使うと、映画を専攻していない、あるいは映画に興味のない学生を置き去りにしてしまいます。常にバランスが必要なんです。そのため、私たちのモジュールはチームティーチングで行うことが多いです。

キングスのリベラルアーツのオフィスがあるVirginia Woolf Building
キングスのリベラルアーツのオフィスがあるVirginia Woolf Building

異なる分野の教員が週ごとに教えるスタイルで、学生は複数の視点から学ぶことができます。私たち教員も自分の専門を活かしながら、授業全体が一方的に偏らないように心がけています。

授業を作る中で特に重視しているのがリーディングです。複数の分野からテキストを集め、特定の専攻に閉じない、学際的な視点を持った資料を用意します。もちろん、必要に応じて特定分野に即したものを選ぶこともありますが、基本的には異なる学問の交差点を意識しています。

リベラルアーツの教員としてのやりがい

正直なところ、リーディングを設計する作業は、私にとってこの仕事の中で最も好きな部分の一つです。教育者としてモジュールを設計するのは非常にやりがいがありますし、リベラルアーツだからこそ挑戦的でもあります。そして、普段は読まないような研究に触れられたり、一緒に教える同僚から専門的な知識を学べたりするのも、大きな魅力です。教員として、この学位プログラム全体は本当にやりがいのあるものです。

教員として学生を見てきた中で特に印象的なのは、学生が最初はこれを受けたいというモジュールのリストを持ってきても、卒業する時にはそのリストの中のモジュールを結局一つもやらなかったというケースですね。その間に自分の情熱を育てたり、新しい興味を見つけたりするんです。

リベラルアーツの一番大事な点はそこにあると思います。自分は何を知っているのか、その知識がどう変化していくのかを学ぶことができるんです。だから本当にやりがいがあります。それぞれの学生がこれまで辿ってきた学びのお祝いとなる卒業式は私の大好きな日です。

キングスカレッジロンドンのリベラルアーツの未来

Yuki
Yuki

先生自身、このキングスカレッジロンドンでのリベラルアーツの将来はどんなものになっていくと思いますか?

学生がより多くの分野を学ぶ機会を持てるように、様々な経路を開いて行きたいと思います。

特に今力を入れているのは大学院レベルでの発展です。現在、私たちは新しいリベラルアーツの修士(MA)課程を設計中ですが、そもそも「リベラルアーツの修士課程」とは何か、それはどうあるべきかという課題に直面しています。

修士課程は通常、学部課程より専門分野を絞っています。例えば映画を学び、修士課程でアニメーションや個別のジャンルを研究する、といった具合です。でも私たちは大学院レベルでそれをそのまま踏襲するつもりはありません。学際的な人文系として、幅広さを維持しつつ、学部課程の単純な再現にはならないようにしています。

つまり、「リベラルアーツのMAとは何か」「何を学生に訓練させるのか」「学部課程とどう違うのか」を真剣に考えながら設計しているんです。

もちろん、修士課程ができれば、その数年後には博士(PhD)課程の設立も考えていくと思います。MAについて今はあまり詳しく話せませんが、数年以内には形になると思います。そして、学部でリベラルアーツを楽しんだ学生が、そのまま修士課程に進めるような道も提供したいと思っています。キングスでのリベラルアーツの変化というものは、そこから生まれると思います。

リベラルアーツを志す人たちへ

Yuki
Yuki

それは楽しみですね!最後にどのような人たちにこのリベラルアーツが向いていると思うか、もしイギリスでリベラルアーツを勉強することを目指している人たちに何かメッセージがあったらお願いします。

まず、自分の知的好奇心に従うことはいつでも大事だと思います。もし興味を持っているものが一つの学問分野に収まりきらないなら、リベラルアーツ課程はまさにあなたのために作られていると言えます。

この学位は、Major(専攻)以外で厳密に決めなければならない部分は少なく、柔軟性が組み込まれています。もちろん、留学生にとっても同じことが言えます。1学期や1年間の留学などを通じて、様々な知的環境で学ぶことができ、異なる専門性や知識に触れることができます。

特定の分野の内容ももちろん学びますが、それと同時に「学ぶとはどういうことか」「学生であるとはどういうことか」を学ぶ機会にもなります。

自分の学位をどう組み立てるかを振り返ったり、大学という場を通して知識がどう生み出されるのかを理解したりするんです。私たちはモジュールやシラバス、リーディングリストが、学生にとって単に受け取って学ぶだけでなく、そこから自分で問いを立てて探究できるものにしているんです。だから特定の学問分野に収まる興味関心がない学生にとっても、リベラルアーツはとても適しています。

それに加えて、イギリスに来て異なる教育制度の中で学び、異なる専門性を持つ人たちから学ぶことができるのも大きな魅力です。そして、そうした学びを通じて、あなたもまた他の人に何かを教えることができる。そうしたグローバルな文化体験の質というものは重要で、まさに異なる専門性や世界の様々な地域から人々を集めて学ぶことを目的としています。

Yuki
Yuki

ありがとうございました!

さらに前回の記事はこちら↓

King’s College Londonについて詳しく知りたい人はこちら↓

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Imperial College Londonの方がより先生がストイックな気がします。短時間の授業で色々なことをカバーするので、スピードがとにかく速い。一方、キングスの先生は優しくて、ゆっくり丁寧に教えてくれたかな。他にもインペリだと、授業以外で数学に触れられる時間がキングスよりも多いです。他の大学との交流会があって、University of Warwick(ウォーリック大学)とお互いに研究内容を発表し合うイベントもありました。 Q:イギリスでの学びを通して、自分の中の価値観や姿勢が変わったと感じる部分はありますか? はい。特に「考えること」に対する姿勢が変わりました。やはり数学って「どう考えるか」「なぜそう考えたのか」というプロセス自体が凄く重視されます。学びを通じて、僕自身も単に答えを求めるのではなく、「問いを立てること」「考え続けること」の重要性に気づくきっかけになりました。同じ志を持った仲間が周りにいると、それだけでモチベーションが上がるし、日々の学習の刺激にもなります。教授のレベルも驚異的だったりします。すごい人は本当にありえないレベルです。どんな質問にも即座に正確に返してくれるんです。そういった本当に頭のいい人たちの中で学べるのは貴重な体験です。多文化環境の中で数学を学ぶことで、様々な価値観に触れ、自分の考え方も広がったなって感じます。 数学を学ぶ上で必要な特質 Q:数学を学ぶことに向いているのはどんな人だと思いますか? 僕は大きく分けて3タイプいると思います。一つ目は数学が好きな人。特に証明や定義、ロジカルな部分に面白みを感じる人。二つ目は数学が得意な人。これは他の分野に特に興味がないけれど、数学の力を何かに応用したいと思っている人です。僕が勉強した分野はPure Mathematics(純粋数学)でしたが、Mathsには他にもBiomathematics*やApplied Mathematics**みたいに色々な分野があります。Mathematicsは大学1年目で、他のNatural Science(自然科学)の分野で習う数学の内容を全部カバーしてくれたりするので、大学後のキャリアに繋げることもできたりします。そもそも論理を組み立てる力っていうのも養うことができますしね。で、最後は暇な人。 *Biomathematics=生物数学 - 生物学的現象を数理モデルや数式を用いて解析・予測する分野**Applied Mathematics=応用数学 - 現実世界の問題を数学的に定式化し、解決に導くことを目的とする分野 Q:笑笑 いや、でも本当に。究極的には、数学って紙と鉛筆と自分の頭だけで無限に楽しめる「最強の暇つぶし」なんです。広大なラボや膨大な量の本もいらないからコストがかからない。でも、その中でフェルマーの最終定理みたいな300年かけても解けない問題がまだ存在したり、Millennium Prize Problems(ミレニアム懸賞問題)という一つの問題に100万ドルの懸賞金がかけられていたりする世界なので、自分で考えて問題に挑戦すること自体が面白いっていうのはありますね。 Q:一緒に暮らしていて気づいたけど、すごい長い時間をかけて宿題とかやってるよね。1ヶ月間ぐらいあった試験期間とかは本当に大変そうなのが伝わってきました。 Mathsに興味ある人って、忍耐力が本当に必要だと思います。僕は一問解くのに3日ぐらいかかったこともあります。逆にそれぐらいかけて、解けなかったこともあります。問題を解いていくというプロセスを根気よくやっていかないと、数学が嫌いになることもあると思います。これだけ忍耐力が必要なのに試験になると、タイムリミットがある中で問題を解かないといけなくなるから、本当に試験が嫌いです。 Q:でも中学で初めて興味を持って、大学を経て大学院でも続けて勉強しているってことは本当にMathsに興味があるってことなんですね。 うん。ただ、試験はゴミです笑笑 Q:じゃあ最後に、好きな数字はなんですか? 2かな。まず2は最小の素数であること。2によって線分が成り立つこともあるし、自乗っていうのもすごく使いやすいのもある。んー、でもCharacteristics of field 2(標数2の体)の時はクソめんどくさいんだよな。でも、結局2なんだよな。 Q:やっぱりよくわかんないわ数学笑笑 文系の僕にとって、数学はずっと“遠い世界”でした。しかし、岡野くんとのインタビューを通じて、その世界が少しだけ近づいた気がします。 「深く考える」「論理を積み重ねる」「わかるまで粘る」。それらは数学に限らず、あらゆる学問や人生にも通じる価値かもしれません。 https://www.imperial.ac.uk/mathematics

キングスカレッジロンドン: 学科の先生インタビュー編「リベラルアーツって何を学ぶの?」

前回の記事では僕のKing’s College London(キングスカレッジロンドン)での経験を踏まえてLiberal Arts(リベラルアーツ)という分野を紹介しました。今回は実際にリベラルアーツを教えている先生目線のリベラルアーツをお届けします。 Christopher Holliday先生 キングスカレッジロンドンの学際的人文学部の副学科長。専門は視覚文化教育。リベラルアーツプログラムの創立に携わった教員の一人。University of Warwick(ウォーリック大学)でFilm and Television Studies(映画・テレビ学)分野のBA(学士号)とMA(修士号)を取得し、キングスカレッジロンドンでFilm Studies(映画研究)のPhD(博士号)を取得した。 https://passport-to.com/articles/22/ キングスカレッジロンドン副学部長のChris先生に聞く インタビューしたのはChristopher Holliday先生です。Chris先生は学科内で人気が高く、現在Department of Interdisciplinary Humanities(学際的人文学部)のDeputy Director(副学部長)を務めています。取材を通して先生のバックグラウンドやリベラルアーツ学科発足当時の話などからリベラルアーツの魅力を探ることができました。 Yuki お久しぶりです!僕たちが卒業してからの、今のキングスのリベラルアーツはどのような感じですか? 久しぶりだね!君たちがいた頃、キングスのリベラルアーツは一つのプログラムでしたが、ちょうど2024/25年度からDepartment of Interdisciplinary Humanitiesが設立されて、正式な学部になりました!これによってリベラルアーツの修士課程も近々始まる予定です。 Yuki そうなんですね!今日はよろしくお願いします。 Chris先生の経歴 ウォーリック大学での学び Yuki まずは先生自身のこれまでの経歴について詳しく教えてください。 私はUniversity of Warwick(ウォーリック大学)でFilm and Television Studies(映画・テレビ学)を専攻していました。今のイギリスの学習環境は、私が学生だった頃に比べて大きく変わっています。 当時の大学は「義務教育で扱わない特殊な科目を勉強できる場所」と認識されていました。私はそれまで全く触れたことがない映画とテレビという分野にすごく惹かれて大学で勉強することにしました。今だとGCSE(中等教育修了試験)でもFilm Studies(映画学)やArt(芸術)などの科目を勉強することができるようになりましたね。 ウォーリックで学んだ3年間はとても充実し、楽しかったです。卒業して1年間のギャップイヤーを経て、MA(Master of Arts - 文学修士)を取るため再びウォーリック大学に戻ってきたのも、私のUndergraduate(学部課程)での経験があってこそでした。 キングスカレッジロンドンでPhDを取得し、そのまま教員に 私の家族のほとんどが教師です。そして自分もそれに続くような形で、2009年からキングスの教員になりました。キングスは自分がアニメーション研究でPhD(博士号)を取った大学でもあります。 最初はアニメーションなどの専門分野を教えていました。その後徐々にInterdisciplinarity(学際性)に興味を持ち、私の担当は当時新設されたばかりのリベラルアーツプログラムにシフトしていきました。 リベラルアーツ内でMajor(専攻)やMinor(副専攻)を決める教育スタイル自体はアメリカ由来のもので、当時イギリスでは珍しかったです。キングスはイギリスで初めてリベラルアーツ学習を取り入れた大学の一つで、創設してから十数年経ちます。まだまだ始まったばかりですね。 映画研究からリベラルアーツに転換 Yuki 先生自身が映画学から、リベラルアーツにシフトしていったきっかけは何ですか? 私は2009年にキングスに着任してから6年間映画学科の授業を担当していました。2015年に当時創設されて3年ぐらいのリベラルアーツの教員から、リベラルアーツで映画学を担当できる教員を探していると声がかかり、Open Day(オープンデイ - 日本でいうオープンキャンパス)で模擬講義を担当することになったのがきっかけです。 オープンデイの模擬講義を準備する過程でリベラルアーツのプログラムや学生が学べる科目の種類、異なる科目間のバランスについて理解しました。そこで「つながり」という考え方に気づいたんです。 学生たちは異なる分野に興味を持って来るのですが、リベラルアーツではそれらがどのように交差し合うかを、少しメタ認知的に考えるように促すことが大事だと感じました。異なる学問分野の境界を超えて繋がるものは何か、ということです。 例えば、リベラルアーツで専攻や副専攻として「植民地主義」や「1930年代のアメリカ史」を選ぶことはできませんが、それらは「人種」や「ジェンダー」「セクシュアリティ」といった概念の一つでもあります。 トピックの中には専攻分野や学問の枠組みだけでは語れない「つながり」や「見えない糸」のようなものが存在して、リベラルアーツではそういったものを様々な科目を通して考えることができます。 決まったカリキュラムはなく、学生自身が学びたいことを選ぶ リベラルアーツは、学生一人ひとりに合わせてカスタマイズされた学位を学生自身がキュレートし作り上げていくところだとよく説明します。複数の分野を勉強したい学生も、一つのことだけをやりたい学生も、最終的には独学者のようになっていきます。自分が選んだ自分だけのカリキュラムを通して、身につけた知識がどのように議論で役立つかを学んでいくのです。 私自身、リベラルアーツの教員として学生と同じ経験をするような立場でした。私はSingle Honours(単一専攻)の出身で、映画学を履修したから映画の分野で働くものだと思っていました。 しかしこういった学際的なプログラムの中に自分の居場所を見つけ、今はリベラルアーツの映画学科の担当として、様々な分野を映画学に結びつける役割を担っています。映画学からリベラルアーツへ移った時は自分の知識が部門にどう貢献できるのか見つける必要があったんです。 キングスカレッジロンドンのリベラルアーツプログラム立ち上げ秘話 Yuki なるほど。一からリベラルアーツのプログラムを立ち上げていくプロセスはどうでしたか? リベラルアーツを定義するところから始まり 最初の頃は、どういうプログラムにしていくか、どんな学びを提供するのか、プログラム自体を定義していくプロセスでした。その中で定めたガイドラインがありました。まず一つ目はアメリカの専攻・副専攻のモデルの導入です。つまり、選択科目によって履修単位の半分以上を特定の専攻科目に割きつつ、他の分野からも組み合わせて履修できる、というシステムです。 キングスのリベラルアーツのオフィスがあるVirginia Woolf Building 文系中心のプログラムに もう一つはArts and Humanities(人文芸術分野)に焦点を当てました。つまり、科目は人文学中心で、数学や自然科学を取り入れないということです。リベラルアーツで理数系科目を必修にしている大学もあります。しかしキングスでは私たちの目指す学位を構築するために何を含めるべきかを考えた結果、理数系科目を含めないと決定したのです。 私たちの制度を真似て、リベラルアーツに独自の要素を導入する大学も出てきたみたいです。ただ、学生たちから理数系科目を履修できないかと聞かれることはあります。その際、専攻することはできないと伝えますが、それに近い内容を扱うモジュールを紹介しますね。 専攻の枠組みだけでも、学生が履修できる科目を語り尽くせないくらい多いです。 学生の知的好奇心を刺激 色々考えるうちにリベラルアーツのコンセプトは学生のIntellectual curiosity(知的好奇心)を刺激するものだなと感じました。一つの分野に集中する必要がないため、「何をしたいかわからない」「やりたいことはたくさんあるが、どれが自分に本当に合っているのかはっきりしない」もしくは「色々な分野を勉強してみたい」といった悩みを持つ学生に響きますし、リベラルアーツ自体そういった学生向けによくデザインされていると思います。 このプログラムには、学生が学びの過程で選択をする瞬間がたくさんあるというのも知的好奇心を掻き立てると思います。プログラム自体、まず様々なスタート地点が用意されています。全く触れたことのない分野を選ぶのか、ずっと興味があって勉強してきた分野を追究するのか、自分なりのユニークな学びが選択できます。 その後、学生はどうやって異なる分野が結びつくのかを見つけ出します。学生たちに様々なスタート地点が用意されていて、それぞれ違うモジュールを取り入れることで、無限の組み合わせを作ることができることがリベラルアーツの特徴だと思います。 どんな専攻を選んでも語れるテーマ その中で、リベラルアーツのコアモジュールというものもあります。学生が3年間の中で履修するコアモジュールは“Lives of London” “Writing Liberal Arts” “Space, Power, Agency” “Translation across Disciplines”の4つです。これらは全部「コンセプト(概念)」を基盤に構成されています。「ロンドン」「ライティング(書くこと)」「空間・権力・主体性」「分野横断的な翻訳(応用)」といったテーマを中心に授業を進めていきます。 これらのテーマに共通することは「様々な学問分野にまたがるコンセプトやアイデア」であり、授業作りをするときはこういったものを大切にしています。そうすることで、教室にどんな学生が座っていても——大学の中での学びに限らず、それ以前の知識・経験がどのようなものであっても——必ずそのテーマに関して「語れること」があるようになっているんです。 授業は「patience enough(我慢強く)」、そして「open enough(開かれた)」設計にしていて、どの分野を専攻・勉強していても、授業中に出てくる概念について自分の視点から意見を語れるようにしています。 そしてクラスで一番大事にしているのは、学生の意見が「informed(情報に基づいている)」「valid(正当なもの)」となるようにする点です。授業が「concept driven(テーマやコンセプトに基づいている)」であること。私たちは皆、共通の「奇妙で好奇心をそそるオブジェクト(テーマ)」について、何かしら語るべきものを持っている——そうした前提で授業をデザインしています。そうすることにより学生たちがそれぞれの入口を見出すことができるようになっているのです。 5005通りのモジュールで唯一無二の学びを選択 Yuki 無限の可能性があるプログラムだなと改めて実感します。 リベラルアーツプログラムの教員として、これまでたくさんの学生に巡り合いましたが、同じモジュールの組み合わせを持っていた学生はいないと思います。このプログラムでは5005通りのモジュールの組み合わせがあります。学生たちが勉強していく中で、私たちが気づかなかった分野間の繋がりを発見してくれたりもするのでこの学問に終わりはないと思います。 リベラルアーツを学ぶ学生ならではの苦悩 多様な選択肢をじっくり悩めんだ先にある成長 キングスのリベラルアーツでは今でも科目が増え続けています。たくさんの選択肢に直面し、学生たちが不安になってしまうこともあるかもしれないです。これはリベラルアーツ教育に必ず付いてくる「リスク」だと思います。悩んだ末にそれを乗り越えて、自分だけのプログラムが完成するときは学生自身にとって自分の知的好奇心が実る瞬間だと思います。 Yuki たくさんの選択肢がある、というのはまさに僕がリベラルアーツ学科を選んだ大きな理由の一つでした。3年間はとても充実しましたが、同時に不安を感じていたのも確かです。実は3年目の終わりになっても、将来どの専門分野に進みたいのかをはっきり決められなかったんです。それでも最終的には、とても実践的で大きな経験になりました。というのも、現在働いている中で、一つの決断を下すだけでも、先生がおっしゃったように様々な視点が必要になるからです。そうした視点を持つことで、より論理的で、より効果的な判断ができるようになります。私にとって、異なる分野を学びながら点と点を繋げる力を培えたことは、とても大きな収穫でした。 そうですね、「つながり」とか「断絶」とか、そういうものが異なる分野の間にどうあるのかを見出すこと、これこそが学生にこうしたモジュールを受けてもらう理由なんです。分野同士の重なりや交差、分岐を体験してもらうためなんですね。同じ資料を読んでいても、別の科目のなかで取り上げられると、違う結論にたどり着くこともあります。 様々な学問分野を学べるからこそ身に付く強み よく学生から聞く不安は、「単一専攻よりも薄められたバージョンをやらされているんじゃないか」です。でもそんなことは決してなくて、むしろ複数の学部や学科の内容にアクセスできて、異なる分野の要素を組み合わせて学んでいくことができるんです。 それ以外にも1年間の留学をすることができる機会があったり、語学を履修できたり、インターンシップを受けることができるモジュールもあって、内容が濃いものになっています。 もうひとつの不安は、君が言ったような「リベラルアーツが自分の今後のキャリアにどう繋がっていくのか」という点ですが、これも心配はいりません。 もちろん学生は、自分の専攻や副専攻の分野でさらに研究を深め、そのキャリアに進むこともできるし、プログラム内で少しだけ触れた分野をさらに究めることだって可能です。単一専攻の学生と同じくらい一つの分野でしっかり訓練されているので、後から専門性を深めることも十分にできるんです。 学びの選択肢が多いことは学生のキャリアを妨げるものではありませんし、単一専攻の学生と特別違うこともありません。ただ、そこにたどり着くための道筋が少し違う、というだけなんです。 Yuki 本日はありがとうございました! 次回はリベラルアーツの学びとしての広がり、キングスのリベラルアーツプログラム卒業生の進路についてもっと深掘りしていくので、お楽しみに! https://www.kcl.ac.uk/study/undergraduate/courses/liberal-arts-ba

イギリスの大学の成績評価方法と課題をこなすコツ【現役ロンドン大学生が伝授】

こんにちは!Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)でメディアを勉強しているKotokoです。 今はちょうど大学1年目が終わって夏休みに入り、1年次の成績も出ました。今回は、1年生の間に受けた授業のテストや課題をもとに、成績の評価方法についてお伝えしたいと思います。なお、ここで紹介する評価方法は私が通っているGoldsmithsでの一例であり、大学や専攻によって異なる場合があります。参考としてご覧ください。 イギリスの大学の学期と成績評価方法の概要 まず、イギリスの大学は日本と違い、秋入学で、秋(9〜12月)、冬(1〜3月)、夏(4〜6月)の3学期制を採用しているところが多いです。 また、評価方法も日本のように期末試験だけに重きを置くのではなく、エッセイや課題提出、プレゼンテーションなど多様な評価方法をバランスよく取り入れているのが特徴です。 私は1年生で秋タームに3つ、春タームに3つの授業を受けました。夏タームは授業がなく、主にテスト期間として設定されていたため、今回は秋と春の授業に絞って評価方法を詳しく紹介していきます。 ゴールドスミスカレッジ: 秋タームの授業と評価方法 Introduction to Promotional Media この授業では、私の専攻であるPromotional Mediaの基礎について、歴史的背景や主要な理論を中心に学びました。広告、PR、ブランディングといったプロモーションの役割や、メディアとの関係性について、理論的に深掘りする内容でした。 評価方法①:エッセイ(800 words) – 30% 授業で扱った理論を使って、ある事例を分析する課題でした。初めての大学の評価課題だったこともあり、リサーチや構成にかなり時間がかかりましたが、テーマが身近だったので、取り組みやすかったです。 評価方法②:エッセイ(2000 words) – 70% 先生が提示した7つのテーマから1つを選び、授業で学んだ内容を活かして深く掘り下げる課題でした。最低5つの学術文献を引用する必要があり、リサーチ力と論理構成力が求められました。プレッシャーはありましたが、時間をかけてじっくり書き上げることができました。 Introduction to Marketing この授業では、マーケティングの基本についてセミナー形式で学びました。 評価方法①:エッセイ(1500 words) – 50% 授業で学んだマーケティングの理論を使って、最近のマーケティング関連ニュースを分析するという課題でした。冬休み前の提出だったので普段の授業の予習と並行して進める必要があり、正直なところ計画的に取り組むのが難しかったです。 評価方法②:試験(1時間半) – 50% 夏タームに行われた手書きの筆記試験で、当日提示された3つの質問の中から2つを選び、エッセイ形式で回答します。お題が事前に知らされなかったので、重要な理論や研究者の名前をしっかり暗記して、スペルミスなく書く必要がありました。私にとって、この試験が最も難しく感じました。 カフェで試験勉強に取り組んでいる様子 Writing for the Media この授業は、これまで紹介した2つの授業とは違って、より実践的な内容でした。専攻生全員が2つのグループに分けられ、少人数で行われたのも特徴です。授業時間も1〜2時間ではなく、お昼休みを挟んで午後4時ごろまで続く長めの授業です。先生との距離も近く、実際に手を動かしながら学ぶスタイルでした。主に、新聞記事やSNS投稿など、“書くこと”に特化したメディア表現について学びました。 評価方法①:エッセイ(1000 words) – 30% 授業で習った理論を使って、SNS投稿など実際のメディアの例を1つ選び、分析するという課題でした。 評価方法②:ポートフォリオ制作 – 70% 自分で1つキャンペーンを考案し、そのキャンペーンに関する以下の内容を含んだポートフォリオ(2500〜3000 words)を作成しました: スローガンと概要 Q&A(インタビュー内容を記事化) プレスリリース ソーシャルメディア投稿(10個) 冬休み明けの提出だったため、冬休み期間を使ってじっくり取り組むことができました。実際に手を動かして作る経験ができる授業で、学びがとても濃かったです。 また、このポートフォリオ制作に向けて、フォーマティブ課題※としてプレゼンテーションを行う機会がありました。これは成績には含まれませんが、先生からのフィードバックをもとに自分の企画をより良いものにブラッシュアップできたので、実践に活かせる貴重な時間でした。 ※評価の種類 イギリスの大学では、評価には大きく分けてFormative Assessment(フォーマティブ評価)とSummative Assessment(サマティブ評価)の2種類があります。 フォーマティブ評価:成績には影響しない練習課題やプレゼンテーションなどを指し、学びの途中でフィードバックをもらうためのものです。自分の理解度を確認したり、本番課題の準備をしたりする目的で行われます。 サマティブ評価:最終成績に反映される正式な課題(レポート、試験、ポートフォリオなど)で、学期の終わりや一定のタイミングで提出します。 ゴールドスミスカレッジ: 春タームの授業と評価方法 Culture and Cultural Study この授業では、「文化」という広いテーマを、歴史、メディア、ジェンダー、ポピュラーカルチャーなど様々な視点から学びました。講義スタイルで進行し、理論的な内容が多かったのが特徴です。 評価方法:エッセイ(1000 words×2) – 各50% 春休みの2週間の間に、出された10個のトピックの中から2つを選んでエッセイを書く形式でした。 また、これに先立ち、春休み前にはフォーマティブ課題として500 wordsのエッセイがありました。TikTokの動画を選び、授業で習った材料を使って分析する内容です。私は先生からもらったフィードバックをもとに春休み中の本番エッセイに活かしました。 Media Art この授業では、メディアアートとは何かについて、様々なジャンルのメディアアート作品を通して学びました。 評価方法:メディアアート・プロジェクト(動画+エッセイ) – 100% この授業の評価は1つの課題に集約されていて、メディアアート・プロジェクトとして、自分で1〜2分の動画作品を制作し、さらにその作品のコンセプトや使用した手法などを900 wordsのエッセイで解説するものでした。動画はTikTokやCapCutなどの編集アプリを自由に使って制作し、YouTubeにアップロードして提出しました。春休み明けの提出だったため、時間をかけて仕上げることができました。 またこの課題に向けたフォーマティブ課題として、春休み前にエキシビションレポート(750〜800 words)がありました。メディアアートの展示を実際に見に行き、そこで出会ったアートワークとアーティストについて分析する内容で、本課題に向けた良い準備になりました。実際に自分で作品をつくるというユニークな経験ができた授業で、表現と分析を同時に学べる貴重な機会でした。 Tate Modernで見たCildo Meireles Web Design この授業は、先に紹介したWriting for Mediaと同様に、少人数グループでの実践的な内容でした。授業は朝10時から夕方4時までの長時間で、じっくりと制作に取り組める環境でした。 授業では、秋タームに作成したキャンペーンのポートフォリオをもとに、Webサイトを一から制作し、そのアクセス状況をGoogleアナリティクスを使って分析することが求められました。 評価方法①:Webサイトプランの提出 – 10% どんなWebサイトを作るか、ロゴやカラーなどのデザイン要素をまとめた企画書を提出しました。 評価方法②:Webサイトポートフォリオ – 90% 完成したWebサイトのリンクに加え、500〜800 wordsのGoogleアナリティクスを用いたアクセス分析レポート、そして1000〜1500 wordsのSelf-reflective essay(自分がWebサイト制作を通じてどのように成長したかを振り返るアカデミックなエッセイ)を含むポートフォリオを提出しました。 この授業では、企画から制作、分析、振り返りまで一連のプロセスを実践的に学べ、非常に充実した内容でした。 最終評価の仕組み ここまで秋タームと春タームでの各授業の評価方法をご紹介しましたが、最終的にPass(合格)かどうかは、それぞれの授業で得た成績の合計点に基づいて判断されます。私の通うGoldsmithsでは、各授業の評価で40%以上を取るとその授業はPassとみなされます。 秋の授業の評価結果は、冬休み明けに発表され、冬の授業は春休み明けに発表されます。そして、それらを合わせた1年次全体の成績は夏休みの初め頃に届きました。 私は無事すべての授業に合格することができましたが、万が一落ちてしまった場合でも、夏休み中に再提出や再試験の機会があるので、あまり過度に心配する必要はないと思います。 イギリスの大学で良い評価をとるためのコツ 実際に1年間、課題やエッセイに取り組んでみて、「これは大事だな」と感じたポイントを紹介します。 課題の指示書は注意深く読む エッセイやプレゼンの課題には、必ずassignment brief(指示書)があります。そこにはトピックだけでなく、フォーマット(段落構成・引用方法など)や評価基準も書かれています。書いている途中でも、何度も見返してちゃんと指示通りにできているか?を確認することがとても大事です。 言いたい内容を最初に伝える 英語のエッセイやプレゼンでは、最初のパラグラフで自分の主張やトピックをはっきりと伝えるのが基本です。これをthesis statementと言います。日本語の文章のように結論を最後に持っていくのではなく、英語では最初に要点を伝えるスタイルが好まれるので、意識してみてください。 指定のリーディングから引用する 授業ごとに、先生が選んだreading list(リーディングリスト)があります。そこに載っている文献や資料からの引用は、課題の評価を上げる上でとても効果的です。先生が大事と思っている資料を理解し、それを課題で活用することで、評価につながりやすくなります。 大学のサポートを活用する 多くの大学には、留学生や英語が母語でない学生向けに、文法やエッセイ構成を見てくれるAcademic Writing Supportのようなサポートがあります。Goldsmithsにも図書館にそのスタッフがいて、私は毎回予約してチェックしてもらっていました。質問もできて、エッセイの質がかなり上がるのでとてもおすすめです。 エッセイや課題で使える便利ツール&ウェブサイト 1年間を通して、課題などを進める中で先生や友達から教えてもらった、勉強に役立つ便利なツールを3つ紹介します。 Canva 私はプレゼン資料(パワーポイント)の作成や、エッセイの構成を考えるためのマインドマップとしてよくCanvaを使っていましたが、他にもチラシや履歴書(CV)、Webサイトまで簡単に作成できるのでとても便利です。テンプレートが豊富で、初心者でも見やすくおしゃれなデザインがすぐに作れます。私も春タームのWeb Designの授業でマインドマップをCanvaで作りました。 Web Designの授業で作ったマインドマップ My Bib My Bibでは、エッセイの最後に載せるreference list(参考文献リスト)を簡単に作ることができます。まず、大学に指定されている引用スタイル(例:Harvardなど)を選び、そのあと参考文献のタイトルやURLなどを入力すると、自動的にリストに追加してくれます。In-text citation(文中引用)にも対応していて、私はエッセイを書くときに毎回使っています。 Plagiarism / Grammar Checker エッセイを書くときに特に注意したいのがplagiarism(盗作)です。誰かの文章をそのまま使うときは “ ”(ダブルクォーテーション)で囲む必要がありますし、パラフレーズ(言い換え)をする場合も出典を明記する必要があります。私はエッセイを書き終えたら、Plagiarismで自分の文章をチェックし、無意識に盗作になっていないか確認しています。 同じサイトにはGrammar Checkerの機能があり、文法やスペルミスをチェックできます。特にイギリス英語とアメリカ英語でスペルが違う単語(例:colour / color)なども見直せるので、提出前の最終チェックにおすすめです。 まとめ ファウンデーションコースと比べて、大学1年生では毎週の予習(リーディングリストに沿った文献を読むこと)が増え、最初は少し大変に感じました。でも、留学生でもしっかり授業に参加し、課題にも時間に余裕を持って取り組めば、十分やっていけると実感しました。 今回紹介した授業の内容や評価スタイル、アドバイス、便利なツールなどが、これから入学される方や1年次を迎える方の少しでも参考になれば嬉しいです。 そして何より大切だと感じたのは、わからないことは遠慮せず質問すること、大学のサポートサービスを積極的に活用すること、そして無理をしすぎず、自分のペースを大事にすることです。 これからの大学生活が、皆さんにとって実りあるものになりますように。応援しています! https://passport-to.com/articles/16/

【授業内容と学部進学方法】ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのファウンデーションコース

こんにちは! Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)でメディアを勉強しているKotokoです。 今回は日本の高校卒業後に受講したファウンデーションコースでの1年間をご紹介します。どんなことを学んだのか、英語力がどれくらい伸びたのかなど、リアルな体験をお伝えします! ※私が経験したのはGoldsmithsのファウンデーションコースなので、他の大学とは違う部分もあるかもしれません。あくまで1つの体験談として読んでもらえたらと思います! 前回の記事では、「ごく普通の高校生だった私がイギリスの大学に合格するまでの道のり」について書きました。まだ読んでいない方はぜひそちらもチェックしてみてくださいね! https://passport-to.com/articles/14/ ファウンデーションコースとは? ファウンデーションコースは、主に留学生を対象とした、イギリスの大学に進学するための準備プログラムです。英語力や学問的な基礎を1年間かけて学び、大学の授業についていける力を養います。 イギリスの大学は通常、A-levelやIB(国際バカロレア)などの国際的な資格を入学基準としています。日本の高校卒業資格だけではそのまま入学できないです。そのため、多くの日本人学生はこのコースを経て進学します。 https://jp.education-moi.com/universities/uk/foundation ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのファウンデーションコース キャンパスはロンドン郊外 私が受講したのは、ロンドン南東部にあるGoldsmithsが提供しているファウンデーションコースです。 キャンパスはOverground(地上を走る鉄道)のNew Cross駅から歩いてすぐです。ロンドン中心部からは電車で30分ほどかかります。近くにはRoyal Observatory(グリニッジ天文台)で有名なGreenwich Park(グリニッジ・パーク)があります。 住宅街に位置しているため、中心地ほど便利なわけではありません。その反面、落ち着いたローカルな雰囲気の中で大学生活を送ることができます。 ただし、夜は少し治安が悪いという声もあり、注意が必要なエリアだと感じます。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジのRichard Hoggart Building キャンパスの雰囲気と施設 Goldsmithsは、アート、デザイン、メディア、カルチャーなどクリエイティブな分野に強いことで知られています。それを体現しているように、キャンパス全体に自由な表現があふれています。壁にはアート作品が展示されていたり、学生によるエキシビションが定期的に開催されたりしています。 キャンパスの中心にはRichard Hoggart Buildingというメインの建物があります。それを囲むようにアート系やメディア系など、専門分野ごとに建物が分かれています。 私が所属しているメディア学科にはラジオ制作のためのブースなどがあり、技術的なスキルを学ぶ環境がしっかり整っています。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: キャンパス内にあるラジオ制作のためのブース Richard Hoggart Buildingの隣には24時間利用可能な図書館があります。豊富な蔵書はもちろん、パソコンの貸し出しや印刷機、会議室なども充実しています。このように、学習をサポートする設備には困りません。 また、キャンパスの中央には芝生が広がっています。春から夏にかけてそこで昼食をとったり、お昼寝したりと、のんびりと過ごす学生が多いです。 キャンパス内にはいくつかのカフェがあります。中でもGoldsmiths Students' Union※(学生組合)が運営するカフェは、他のカフェよりも価格が手頃です。飲み物や軽食も美味しく、私のおすすめスポットです。 ※Students' Unionは学生の声を大学に届けたり、クラブ活動やイベントの企画・運営、サポートを行う組織です。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: Students’ Unionが運営するカフェのストロベリー抹茶 ファウンデーションコースの授業内容と評価方法 私はメディアについて勉強したかったので、 GoldsmithsのInternational Foundation Certificate in Media, Culture & Societyを選びました。 授業は週3日で、1日に2コマ(1コマ約1時間半)あることが多かったです。 カリキュラムは3学期制です。秋から冬までの1学期は専門分野の授業と英語の授業を受けます。冬休み明けからイースター休みまでの2学期も同じような形で授業が続きます。 3学期は復習期間で、毎週授業があるわけではないです。3回ほどの復習授業があるほか、主に最後の試験に向けて自分で勉強するスタイルでした。  専門分野の授業 ファウンデーションコースは大学での学びに備えるための準備コースであり、進学後を見据えた専門的な授業を受けられるのも魅力の一つです。 専門分野の授業では、1コマ目に大学1年次のlecture(講義)を受けます。続く2コマ目にファウンデーションコースの学生向けseminar(セミナー)が行われます。セミナーでは、先生が講義内容をわかりやすく解説してくれます。 初めて講義を受けたときは、教授の話がほとんど理解できず、正直かなり焦りました。その後のセミナーは留学生向けに行われるため、先生が簡単な英単語を使って丁寧に説明してくれたので、ほっとしたのを覚えています。 セミナーは解説を聞くだけでなく、discussion(ディスカッション)が中心です。クラスメイトは同じ学科の学生たちで、人数が少なく、アットホームな雰囲気があります。最初は緊張しながらも発言しやすかったです。専門知識の理解だけでなくスピーキング力も自然と伸ばすことができました。 評価方法 基本的に学期ごとに出されるエッセイで行われます。トピックや文字数は授業や先生によってまちまちです。ファウンデーションコースの学生にはtutor(チューター)と呼ばれる担当教員が付いていて、エッセイのテーマ決めから構成、内容まで相談することができます。チューターと一緒にプランを立てたあと、自分でエッセイを書き上げて提出します。 英語の授業(Reading/Writing/Speaking) ここでは、アカデミックな英語力を身につけるために、Reading, Writing, Speaking(リーディング、ライティング、スピーキング)の3つのスキルに分かれて授業が行われました。リスニングに関しては、授業全体が英語で行われるため、リスニング専用の授業はありませんでした。専門分野の授業と異なり、ここでは他の学部を目指している学生たちと一緒に学びました。 ここからは、スキルごとにどのような内容の授業があったのかをご紹介していきます。 Reading リーディングの授業は、1学期と2学期を通して行われました。初回の授業で、リーディングの問題がたくさん載っている冊子が配られました。そこには1週間ごとに課題が設定されており、順番に解いていく形式で進められました。 宿題は、例えば次の週がWeek 3の場合、「Week 3」と書かれた長文を読み、それに付随する設問をできるだけ自力で解いてくる、という感じでした。そして授業で答え合わせをしながら、内容に関連したディスカッションをします。 評価方法 学期末には、それまで取り組んできたのと似た問題が出題され、時間内に長文を読んで設問に答える形式のテストが行われました。 時間制限がある中で集中して解くプレッシャーもあり、特に最初のテストは思うように力を発揮できなかった記憶があります。それでも回を重ねるにつれ、読み取りのスピードや精度が上がっていくのを実感できました。 Writing リーディングの授業と同様に、ライティングの授業も1学期と2学期を通して行われました。 1学期は、基本的なエッセイの構成方法について学びました。具体的には、thesis statement(主張文)の書き方、conclusion(結論)のまとめ方、reference(参考文献の記載)の方法など、アカデミックライティングの基礎を一つひとつ丁寧に学びました。 2学期には、週ごとに構成や段落、リサーチを積み重ねながら、1本のエッセイを完成させていきました。 評価方法 2学期に提出したエッセイが評価されました。評価のポイントは、文法の正確さ、アカデミックな語彙の使い方、そしてreferenceの形式が正確かどうかなどです。授業で学んできたことを総合的に活かす機会になりました。 Speaking 1学期はプレゼンテーション、2学期はディスカッションに向けて、スピーキング力を伸ばしました。この授業では毎回出されたトピックについてクラス内でディスカッションを行います。その中でプレゼンテーションのコツや、ディスカッションで使えるフレーズなどを習得しました。 クラスメイトとのディスカッションを通して、英語で意見を述べることにも少しずつ慣れていき、話すことへの抵抗がだんだんと減っていきました。 評価方法 1学期のテストでは、プレゼンテーションを行いました。与えられたトピックに対して自分でリサーチし、引用を交えながらPowerPointを作成して、クラス内で発表しました。 2学期のテストでは、4人1組のグループでディスカッションを行いました。トピックは1週間前に発表されます。それに関連する情報を自分たちで調べて、当日のディスカッションで意見を述べました。グループディスカッションでは、他の人の意見に応じて柔軟に会話を展開する力も問われ、とても良い実践の場となりました。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ: 授業前の様子 授業の雰囲気 大学1年生と一緒に受ける講義を除けば、ほとんどの授業は15人未満のクラスで行われました。最初は緊張しましたが、発言や質問がしやすい雰囲気で、自然とクラスになじむことができました。授業はキャンパス内の教室で行われ、毎週同じ教室を使っていたので安心感がありました。 先生方のスタイルは人それぞれですが、基本的にはフレンドリーで話しかけやすいです。また、わからないことも気軽に質問できました。日本と違って、授業の途中で抜けたり、お菓子を食べていたりしても注意されないなど、かなり自由な雰囲気でした。ただし、中には食べ物の匂いが気になるから教室内での飲食はやめてくださいと言う先生もいて、先生によってルールや雰囲気に違いがあると感じました。 クラスメイトの雰囲気 クラスメイトの国籍や雰囲気は、大学、進学予定の学部によって大きく異なると思います。私が受講したコースではアジア系の学生が多く、特に中国人が大半を占めていました。日本人は私を含めて4人だけで、少数のヨーロッパ系の留学生もいました。 さまざまなバックグラウンドを持つ学生たちと一緒に学ぶことで、日常の会話だけでも刺激がありました。最初は緊張しましたが、少人数ということもあって自然と会話が生まれます。友達もできて、ペアワークやグループディスカッションの時間が楽しみになっていきました。 ひとつ驚いたのは、学生たちがかなりゆるいことです。時間ぴったりに授業が始まることはほとんどありませんでした。先生が来るのも生徒が集まるのも開始時間の10分後くらい、ということが多かったです。欠席者もわりといて、日本との違いを感じました。カルチャーショックというよりは、むしろ面白いなと思いました。 受講後に感じた効果と学部進学 英語はどれくらい伸びたの? ファウンデーションコースを始める前に受けたIELTSはOverall 5.5でした。それ以降はIELTSを受けていないため、数字で比較することはできません。しかし英語力は着実に伸びたと感じています。特に、英文を読むスピードが上がったと実感しています。スピーキングでも自分の考えを何とか英語で伝えられるようになりました。 中でもライティングの成長は大きいと感じました。コースを受講する前までは、英検で出題されるような短いエッセイを書くのが精一杯でした。当然引用の方法などは全くわかりませんでした。このコースを通して、エッセイの構成や書き方、参考文献の引用方法など、アカデミックライティングの基礎をしっかり身につけることができました。 正直に言うと、1年間で英語がペラペラになるのは簡単ではありませんでした。それでも英語を話すこと、そして失敗を恐れずにコミュニケーションがとれるようになったことは、自分にとって大きな成長だったと感じています。 ファウンデーションから大学1年生への進み方 私が通っていたファウンデーションコースでは、1・2・3学期に行われるテストでそれぞれ合格点を取ることができれば、そのままGoldsmithsの学士課程に進学できる仕組みでした。 そのため、普段の授業にきちんと出席し、課題やテストに真面目に取り組んでいれば、進級できないということはあまりないと思います。実際、私のクラスメイトの中で進学できなかった人は一人もいませんでした。ですので、過度に心配する必要はないと思います。 すべての試験に合格したあと、大学側から進学の手続きに関する案内メールが届きました。それに従って準備を進め、私も無事に大学1年生としての学びをスタートしました。 なお、ファウンデーションコースを修了したからといって、必ずしも同じ大学(私の場合はGoldsmiths)にしか進学できないわけではありません。成績次第では他大学への出願も可能な場合があります。 私の友人の中には、他大学への進学を希望して出願していた人もいました。その場合の出願手続きは先生がサポートしてくれるようです。ただ、保証があるのはGoldsmithsの学部であるため、私は迷わずそのまま進学しました。 ファウンデーションコースはイギリス大学留学の自信に繋がる 1年間のファウンデーションコースは、大学進学の準備だけではないのです。英語力の向上や、異文化の中での生活力を身につける貴重な経験になりました。最初は不安もありましたが、授業を通して少しずつ自信を持てるようになりました。そして大学1年生としてのスタートラインに立てたことをとても嬉しく思います。 これからイギリスでの進学を考えている方にとって、少しでも参考になれば嬉しいです。興味のある方はぜひ、Goldsmithsのファウンデーションコースを検討してみてくださいね! https://www.gold.ac.uk

インペリアル合格者が教えるPersonal Statementの書き方 | イギリス大学進学

こんにちは、インペリアルカレッジロンドン1年のKenshuです!今回はイギリスの大学に応募するために必要なPersonal Statement(PS)について話していこうと思います。僕も最初はPSってなに?何をしたらいいの?ってすごく迷ったのでこの記事が参考になれば嬉しいです。 https://passport-to.com/articles/27/ イギリスの大学に出願する時はUCASを使って各大学に応募します。大学によって出願書類の一つにPSという志望書みたいなエッセイがあります。今回はPSで書く内容とコツなどを共有していこうと思います。 Personal Statementとは? Personal Statementはなぜ自分が選んだ専攻をやりたいかや自分の特技、経験を大学側にアピールするエッセイです。4000文字以内という制限があるため内容の選択と構成がとても重要になってきます。 また、僕が出願したときまでは自由形式でしたが、2025年の出願からは3つの質問形式になりました。それぞれの質問に360文字以上で回答する必要があります。全体で4000文字以内にする点は変わらないです。 質問は以下の3つです。 Question 1: Why do you want to study this course or subject? Question 2: How have your qualifications and studies helped you to prepare for this course or subject? Question 3: What else have you done to prepare outside of education, and why are these experiences useful? 📢こちらの記事と動画にもパーソナルステートメントの形式や書く内容について詳しく解説しています↓ https://youtu.be/llu2jjukrWk PSでなにを書けばいいの? PSは色々な書き方があります。ここでは僕が書いたことや僕がやっておいてよかったことなどを紹介するので絶対にこれをやってください!というわけではないです。参考程度にしていただけたら嬉しいです。 PSでは一般的に以下のようなことを書きます。 ・その専攻を選んだきっかけ・Extra Curricular(課外活動) 場合によっては将来の目標や大学で学びたいことを最後に少し触れると、志望理由からゴールまでの筋の通った流れができ、全体に一貫性が出ます。 内容1: その専攻を選んだきっかけ PSでは自分がどれほどのその専攻に対する熱意があるのかを大学側に示すチャンスです。なぜ興味を持ったのか、なぜ学びたいのかを書きます。例えば小さい頃の経験や疑問、自分が読んだ本、見た映画やニュース、家族の影響など色々なきっかけがあると思います。 僕はChemical Engineering(CE/化学工学)に応募したので最初のパラグラフでは小さい頃からあった水道水などのWater Treatment(水処理)に関する疑問、最近読んだCEの本の中のQuoteを切り抜き、これらのことでCEに惹かれたなどを書きました。 専攻を選んだきっかけを書くときのポイントとしては、その専攻と自分の関わりをできるだけ具体的にして、それがどう学びたい学問に繋がっているかを書くことです。僕は、小さい頃からの疑問から始まり、本を読み、インターンをやり、その過程で自分が選んだ専攻をやりたいと思ったなどと関連性を持って書くことです。(色々な書き方があるので参考程度に) 内容2: Extra Curricular(課外活動) 一口に課外活動と言っても色々なことがあり、主に、 インターンシップ 自由研究 ボランティア コンペティション 学校内での委員会やクラブ などが書けます。これらについて、一つずつ説明していきます。 課外活動はなんでもいいからとりあえずやるのではなく、自分の専攻に関することや、リーダーシップやチームワークが示せることをやると一番いいです。 また、活動を書くだけではなくそこから得た学びを書くことがポイントです。 1. インターンシップ PSに書く内容のうち、インターンシップは高く評価されます。やりたい分野の企業や大学の研究室などでのインターン経験は自分がいかにその分野に熱心なのか、説得力を持って伝えられます。 僕はForm 6とForm 7の間の夏休み中にインターンを2つやりました。 1つ目は日本の城西大学の理学部と薬学部の研究室インターンです。ここでは実際に城西大学の研究室に行き、テーマに沿って研究を進めて、最後にプレゼンテーションをするという内容でした。 インターンシップの内容 2つ目は実際にCEをメインとする企業にインターンとして工場訪問やChemical Engineersが実際にやっている仕事などをやりました。 これら2つのインターンに関する内容が僕のPSの大半を占めていました。インターンでは知識を実際にどう活かせるのかを経験するため、現場を理解している学生であるという印象を大学側に与えられます。 2. 自由研究 A-LevelのカリキュラムではEPQ(Extended Project Qualification)という科目があります。これは正式な科目ではなくA-Levelの半分のQualificationがもらえます。そのためA-Levelを3教科とEPQを取っている人が多いです。(学校によってはEPQを取っていない場合もあります) EPQで自分のやりたい研究(リサーチ)ができ、文系だと例えば論文を書き、理系だと実際に実験などをやり最後にレポートを書きます。 また、研究テーマが志望理由と結びついていると専攻への関心の深さを示すことができます。EPQでなくてでも自発的に研究をすることも書けます。 3. ボランティア ボランティアやNPO活動などもPSに書ける内容です。これらのことをリーダーシップやチームワークに結びつけてアピールすることができます。僕は日本で留学を広めるNPOで活動をしました。専攻と直接関係がなくても人と協力することや社会に貢献することが重要です。  4. コンペティション 各種試合や大会の受賞歴はPSにおいて強いアピールポイントになります。必ずしも大規模な全国大会でなくても問題ないです。学校内や地域レベルのコンテストでも、自分の専攻や興味と関連づけて書けば十分に価値があります。 例えば理系ならサイエンスフェアや数学コンテスト、文系ならエッセイコンテストやディベート大会などが挙げられます。重要なのは「なぜその経験が自分にとって意味があったのか」「そこからどんな学びを得たのか」を説明することです。僕はSMC(Senior Mathematics Challenge)やBPhO(British Physics Olympiad)などに参加しました。 5. 学校内での委員会やクラブ活動 学校内での活動も非常に効果的です。特にリーダーシップやチームワークなどを必要とする立場であれば、大学側は高く評価します。例えばPrefect(生徒会)、House Captain※などの役割は責任感を示せますし、部活やクラブ活動でのキャプテンやメンバーとしての経験も強調できます。 僕の場合はHouse Captainを務めた経験があり、それを通じて培ったリーダーシップ・問題解決力・他の生徒をまとめる力についてPSに書きました。 ※イギリスの学校には生徒をいくつかのグループに分けるHouse System(ハウス制度)があり、House CaptainはそのHouseのリーダーです。Houseはイメージでいうとハリーポッターシリーズに出てくるグリフィンドールやスリザリンのような集まりです。 最後に Personal Statement は自分自身を大学側にアピールする大事な機会です。しっかり準備をして、自己分析をすることで心惹かれるエッセイを作ることができます。僕自身何回も書き直しを重ね、自分の思いを伝えることができたと思っています。この記事が少しでも皆さんの参考になり、Personal Statementの作成に役立つことを願っています。 https://www.ucas.com/applying/applying-to-university/writing-your-personal-statement/the-new-personal-statement-for-2026-entry

ごく普通の高校生がロンドンの大学生に: 留学までの道のり

はじめまして。Kotokoです。現在、Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)のMA Promotional Media(プロモーショナルメディア修士課程)に通っています。今回は、東京で生まれ育った私が2023年にロンドンへ来るまでの道のりを皆さんにシェアしたいと思います。 英語が身近にあった幼少期〜高校時代 私は、小・中学校は地元の学校に通い、友達と外で遊ぶのが日課の、ごく普通の子どもでした。昔から海外に行く機会はあまりなかったものの、父はアメリカの大学を卒業していることから外国人の方との交流は他の人より多く、その影響もあって英語を勉強したいと思うようになりました。 高校は都立の外国語コースがある学校に進学しました。このコースでは、数学や理科の授業が少ない分、普通科で行われる文法に加え、ディスカッションや英作文に力を入れた授業がありました。 受験英語は得意な方でしたが、スピーキングやリスニングの能力はあまり高くなく、英語が少し得意な高校生だったと思います。 きっかけは「留学プロジェクト・次世代リーダー育成道場」 そんなふうに高校生として日々を過ごしていたある日のこと。学校の先生から、東京都が主催する留学プロジェクト(次世代リーダー育成道場)について全体に案内がありました。そしてこれが、私の運命を大きく変えることになるのです。 海外の高校に1年留学できる「次世代リーダー育成道場」とは 「次世代リーダー育成道場」は、東京都教育委員会が実施している、都立高校・中等教育学校・都立中学校に在籍し、校長の推薦を受けた生徒を対象とした留学支援プログラムです。この制度では、参加者は海外の高校に1年間通いながらホームステイをすることができます。派遣時期により冬出発のオセアニア地域と夏出発の北米地域の2つのコースから選べます。 出典: 東京都教育委員会「次世代リーダー育成道場」公式サイト (https://www.ryu.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/about.php) このプログラムは事前・事後研修もあり、留学中のみならず学ぶチャンスが多くあります。 ① 留学前の国内事前研修 研修は月に2回程度、主に日曜日に実施されます。参加者全員が集まり、語学力の向上に加えて、講演会などを通じて日本の伝統・文化・歴史への理解を深め、自分の目標について考える機会も得られます。 この事前研修の中でも特に重要なのがゼミナール研究です。 研修生はそれぞれ現代社会の課題を見つけ、国内での調査を行いながら、留学先での調査へとつなげていく研究のアウトラインを作成します。そして、留学期間を通じてこの研究を発展させ、論文としてまとめていきます。 ②ホームステイをしながら送る留学生活 現地の高校に入学し、授業を受けながら実践的な英語力を養います。 また、ホームステイ先が用意され、現地の家族との交流や多文化に触れる体験を通して、大きな成長が期待されます。 ③帰国後の成果発表会 留学での経験や学びをしっかりと形にするために、帰国後には成果発表会が行われます。 そこで出発前から取り組んできたゼミナール研究の成果を発表し、自らの成長や仲間たちの変化を改めて感じることができます。 ここまで紹介してきたように、語学力だけでなく、文化理解や社会課題への探究心を育てられるこのプログラムですが、実はもうひとつ大きな魅力があります。それは、費用面のハードルが非常に低く、手の届きやすいプログラムであるという点です。 参加するための費用は? 費用は、渡航費・滞在費・学費などの基本的な留学経費として80万円が必要です。 それ以外にかかる費用(パスポート取得、ビザ申請、保険、健康診断、予防接種、事前研修への交通費、制服代や教材費など)は、別途約70万円が自己負担となります。 そのため、総額はおよそ150万円です。しかし、通常の1年留学(200〜400万円程度)と比べると、非常にリーズナブルです。多くの生徒にとって現実的な選択肢となっています。 ※1ポンド=190円で換算しています 募集人数 令和7年度の募集人数は、A(冬出発)コース、B(夏出発)コースともにそれぞれ75名以内、合計150名以内となっています。 ただし、募集人数を含めた詳しい要項は毎年変わります。最新の情報は東京都教育委員会の公式ホームページに掲載されます。必ずその年度の次世代リーダー育成道場研修生募集要項でご確認ください。 コロナで留学断念!でも再び現れたチャンス ここまで次世代リーダー育成道場の概要や費用、応募条件について紹介してきましたが、実は私自身もこのプログラムに応募し、無事に合格。研修生として参加することができました。 しかし残念ながら、私が参加した年はコロナ禍と重なってしまいました。そのため本来予定されていたオセアニア地域への留学は叶いませんでした。それでも、事前研修を通して語学力だけでなく、社会課題への関心や自分自身の目標について深く考える機会を得ることができました。この経験から、日本を飛び出して、もっと広い世界を自分の目で見てみたいという思いが一層強くなりました。 そして高校3年生の夏前、幸運にも父のロンドン転勤が決まりました。これをきっかけに、ロンドンの大学を目指してみようと本気で決意したのです。 ロンドン大学に出願するまでの道のり: ファウンデーションコース 私はただ英語が好きなだけで英語力に自信もなくA-levelやIBといったイギリスの学部に直接入学が可能な国際教育資格を持っているわけではなかったのでFoundation Course(ファウンデーションコース)に入ることにしました。このことを担任の先生に相談すると、留学エージェントを紹介されました。それ以降、出願手続きやビザ申請など、専門的なサポートをエージェントにしてもらいました。 https://jp.education-moi.com/universities/uk/foundation 海外大学の情報収集 まず、大学で何を学べるのかを調べることから始めました。イギリスの大学では、1年次から専攻分野の学習が始まります。そのため出願時に専攻を決めておく必要があります。また、イギリスにはビジネス、アート、コンピューターなど、幅広い分野の学科があるため、自分に合った学科を見つけることができます。 私はメディアに興味があったので、「ロンドン」「メディア」「大学」といったキーワードで調べ、各大学の公式サイトで学費や必要なIELTSスコアを確認しながら検討を進めました。その結果、Goldsmiths, University of London(ロンドン大学ゴールドスミスカレッジ)とUniversity of Westminster(ウェストミンスター大学)それぞれのファウンデーションコースに出願することにしました。 必要書類について 出願を決めてから、各大学のファウンデーションコースのウェブページから必要書類や資格を調べました。大学によって多少異なりますが、一般的に求められる書類は以下のとおりです: 高校の成績証明書(英文) 卒業証明書(英文) 高校の先生からの推薦状1通(英文) personal statement(志望動機をまとめた英文エッセイ) パスポートのコピー IELTSスコア 私の通っていた高校には非常勤のALT(外国語指導助手)がいました。その先生に添削してもらいながらエッセイを完成させました。英文の成績証明書は英語の先生に相談したら作成してくれました。これらの書類がそろったら、留学エージェントに提出し、出願を代行してもらいました。 イギリスの大学出願は、UCAS(Universities and Colleges Admissions Service/ ユーカス)という専用のプラットフォームを通して行う必要があり、操作や手続きが少し複雑です。私の経験から言えば、エージェントのサポートを受けるのがおすすめです。 IELTSの勉強と必要スコア獲得 情報収集や必要書類の準備と並行して、IELTS対策もしっかりと進めました。  当時高校3年生だった私は、英検2級しか持っておらず、正直なところIELTSって何?という状態からのスタートでした。まずは出題傾向を理解することから始め、4技能それぞれに対して計画的に対策しました。ここでは、私が行った対策をスキル別にまとめましたので、ぜひ参考にしてみてください! Reading 時間内に問題を解けることを目標に、毎日時間を測って大問ごとに練習していました わからなかった単語はノートに意味と一緒にメモ。オリジナル単語帳を作って通学時などに繰り返し復習。毎日少しずつ語彙を増やすことを意識していました 私が作った単語帳 自作の単語帳では、左側に単語を、右側に品詞と意味を書いています。使い方も同時に調べました。特殊な使い方をする単語には例文をつけて使い方までマスターできるようにしています。 Listening 専門的な語彙も出てくるため、問題を解くだけでなく、BBCニュースを定期的に視聴して耳を慣らしました 特に聞き取れなかった単語は、スペルや発音をしっかり確認しました。意味はわかるのに聞き取れないのを防ぐようにしていました。ここでも単語帳が大活躍しました Writing 毎日1~2行でもいいので英語で日記をつけ、自分の考えを英語で表現する練習をしました。わからない表現は調べながら書くことで、語彙力と構文力が自然と身につきます 問題集を解き終わったら、ただ答え合わせするのではなく、英語の先生に添削してもらい、文法の細かいミスや表現の言い換えなどを学びました Speaking 動画に英語・日本語の同時字幕をつけられる拡張機能「Language Learning with Netflix」を使って、日常会話で使われるフレーズを中心にshadowing(シャドーイング)の練習をしました 学校のALTにお願いして、放課後に会話練習をさせてもらいました。最初は緊張してなかなか声をかけられませんでしたが、先生は初心者に慣れているので、思い切ってお願いすることが上達の近道だと感じました このような形で、4技能バランスよくIELTS対策を行っていました。 もちろん、高校3年生だったので定期テストもありました。成績も出願に必要な書類のひとつです。そのためテスト勉強とIELTS対策を並行してコツコツ取り組むことが大切です。 また、英検と違ってIELTSは受験料が通常 27,500円と高額です。そのため何度も気軽に受けることはできませんでした。そこで、留学エージェントが提供していた模擬テスト(公式IELTSの受験料の1/4ほど)を活用して、実力を確認したうえで本番に臨みました。 その結果、必要スコアであるoverall 5.5を無事に取得し、出願に至りました。 ロンドン大学ゴールドスミスカレッジに無事合格! 2月中には、出願していた2校どちらからも結果が届きました。ありがたいことに両方とも合格し、第一希望のGoldsmiths, University of London(ゴールドスミス大学)に進学することを決めました。 ただし、2月の時点ではまだ高校を卒業していなかったため、合格はConditional Offer(条件付きオファー)という形式でした。その後、高校を卒業し、証明書を提出したことでUnconditional Offer(無条件オファー)に切り替わり、ビザの申請手続きへと進むことができました。 メモ イギリスの大学からの合格通知には、大きく分けてConditional Offer(条件付きオファー)とUnconditional Offer(無条件オファー)の2種類があります。 ・Conditional Offer(条件付きオファー)→あとでIELTSスコアの提出や高校の卒業成績が一定以上であることなど、いくつかの条件をクリアすれば正式に合格になる ・Unconditional Offer(無条件オファー)→すでにすべての条件を満たしている場合に出される、正式な合格通知 詳しくはこちらの解説記事にわかりやすく説明されています。 イギリス留学: 出発までの日々 高校を卒業した後も、英語の勉強は続けていました。IELTS対策のときに使っていた単語帳を引き続き活用し、新しい単語にできるだけ多く触れるよう意識していました。それに加えて、今度は会話で使えるカジュアルなフレーズを中心に学ぶようにしました。 特に、私が今でも続けているのが、InstagramやTikTokで紹介されている英語フレーズの動画を活用した学習です。さらに、特定のフレーズが映画やドラマの中でどのように使われているかを検索できるplayphrase.meというサイトを使って、実際に使われる生きた英語を身につけるよう心がけていました。 もちろん、勉強だけでなく友達との時間も大切にしていました。イギリスに行ってしまうと日本の友達と気軽に会うのが難しくなります。高校卒業後の時間は、思い出をたくさん作る良い機会でもありました。 そうしているうちにあっという間に8月になり、イギリスでの大学生活がスタートしました。 イギリスへ飛び立った ロンドンで見た景色ービッグベン 「普通の高校生」だった自分が今思うこと この体験談を読んでいただければ分かるかと思いますが、私は特別な存在ではなく、どこにでもいる「英語が好きな高校生」でした。そんな私が今、ロンドンの大学に通いながら、毎日新しい発見に満ちた日々を過ごしています。 もちろん、言葉の壁は高く、今も決して楽な毎日ではありません。それでも、日本では出会えなかった人々や経験に触れ、かけがえのない学びを得ています。 だからこそ、皆さんに伝えたいです。英語が好きという気持ちと、努力があれば、イギリス留学は決して夢ではないです。この記事が、少しでも「自分も挑戦してみたい」と思うきっかけになってくれたら、とても嬉しいです。応援しています! 続きの記事も見てくださいね! https://passport-to.com/articles/16/ 次世代リーダー育成道場: https://www.ryu.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp ロンドン大学ゴールドスミス校公式サイト: https://www.gold.ac.uk

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イギリスのNHS利用 | 留学生が知っておきたい医療サービス

イギリスの病院に行くとき、多くの人はNHS(エヌ・エイチ・エス National Health Service)という公共の医療制度を利用しています。留学生もビザ申請時に健康保険付加料(IHS)を支払えば、NHS提携の公立病院を受診できます。ですが、NHSをうまく活用するためには、いくつかのポイントを押さえておく必要があるんです。 この記事では、留学前に知っておきたいNHSの基本的な使い方や、ビザ申請時に支払うIHSについて、さらに病院やGP(かかりつけ医 General Practitioner)の違い、実際に病気になったときの流れまでわかりやすく解説します。 Haruna これまでに何度もイギリスの病院を利用している現地在住者が解説します!どんな流れで医療サービスが受けられるのか、ぜひ参考にしてみてくださいね。 イギリスのNHSって何?医療制度の基本 はじめに、イギリスの公的医療制度「NHS」の仕組みや利用方法についてわかりやすく解説します。 NHS(National Health Service)の概要 1948年にスタートしたイギリスのNHS(National Health Service)は公的な医療制度です。特徴は、多くの医療サービスが無料だったり、もしくは低料金で受けられること。留学生ももちろん対象。ビザ申請時にIHS(健康保険付加料)を支払うことで、NHSのサービスを使えます。 一部は自己負担になる場合もありますが、一般診療、救急医療、入院治療、妊産婦ケアなど幅広いサービスが無料です。 IHS(Immigration Health Surcharge)について イギリスに6か月以上滞在する留学生は、ビザ申請時に「IHS(Immigration Health Surcharge)」を支払っておくことで、ビザの開始日からNHSの医療をイギリス住民と同じように利用できるようになります。料金はビザの有効期間によります。 ビザの期間ごとのIHS料金 ビザの期間料金 ポンド/円6か月以下なし(申請がイギリス国内の場合は£388 / 約73,720円必要)6か月超〜1年未満£776 / 約147,440円 (1年分)1年£776 / 約147,440円1年超〜1年6か月以下£1,164 / 約221,160円 (1年半分)1年6か月超〜2年未満£1,552 / 約294,880円 (2年間分)2年£1,552 / 約294,880円 参考 https://www.gov.uk/healthcare-immigration-application/how-much-pay ※上記の内容は2025年5月時点での料金と為替レート(1ポンド=190円)です。IHS支払い時には最新の情報を必ずご確認ください。 オンライン上でビザ申請時にコースの開始日と終了日を入力し、デビットカードかクレジットカードで支払います。もしも支払いを忘れたり、金額が足りていないと UK Visas and Immigration(UKVI)からメールで知らされます。指定期間内に全額を支払わない場合はビザの申請が却下されてしまいます。 病院とかかりつけ医の違い(Hospital と GP) 日本では、自分の症状をベースに専門医を選んで直接病院に行くことが多いですよね。しかし、イギリスではまずかかりつけ医であるGP(General Practitioner)を訪問し、そこから病院(Hospital)の専門医を紹介してもらう流れです。 病院の外来は基本的に紹介制で、専門的な検査や手術、入院治療が必要な場合に利用します。救急(Accident and Emergency)でなければ、基本的にはGP→病院の流れが一般的です。 GPで相談できること GPは地域の診療所、かつ最初に相談する窓口で、必要に応じて病院や専門医を紹介してくれます。風邪や体調不良、慢性的な症状など病気や健康全般について相談でき、処方箋も出してくれます。 GPで診てもらい検査に進む場合は、その結果が出てから精密検査や追加診療で専門医のいる病院に紹介されるケースが多いです。診察は対面のときもあれば、GPに行かずに電話で遠隔診療する場合もあります。 閑静な住宅地にひっそりとたたずむGP 渡英後はまず「GP登録」から始めよう イギリスに到着したら、なるべく早めに「GP(かかりつけ医)」への登録をしましょう。登録のタイミングや方法をここからお伝えします。 登録のタイミングと方法 GPの登録方法は、直接GPに行くかオンラインのどちらかです。大学によってはキャンパスに近いGPを紹介しているので、スタッフに尋ねてみましょう。 GPの登録方法 ①GPを探す NHSの公式サイト「Find a GP(GPを探す)」から、新規登録者を受け入れているか、受付時間、利用者の口コミを確認できます。自宅から近く便利なGPに登録する人が多い傾向にあります。 ②登録フォームに入力/記入する 登録フォームは、各GPのウェブサイト、NHSアプリから入手できます。GPで渡される用紙も可能です。 【登録に必要な情報】 氏名 住所 生年月日 学生ビザ証明の共有コード(Share Code) 連絡先(緊急連絡先も含む) 現在の健康状態・病歴 アレルギーの有無 服用中の薬 など 身分証明や住所証明についてはGPによります。地域内の住民のみを受け入れているGPへの登録には、住所証明を用意した方が無難です。また、なかには新規の登録者を受け入れていないGPも。 もしも、留学中に住所が変わる場合はGPへ報告しましょう。NHSの予約に関することや検査結果などが郵便で送られてくることがあります。引っ越し先が登録中のGPの地域外でも、新居に近い新しいGPに移ることができます。 GPの予約方法・診察の流れ 診察は予約制です。コロナのパンデミックを経て、多くのGPでは感染拡大を避けるために、予約をしてからGPへ来てもらう形を取っています。予約方法は、電話、もしくはオンラインです。電話予約はすぐにつながらず、かなり待たされる場合も。オンライン予約を実施しているGPでは、NHSアプリや各GPの予約サイトからリクエストできます。 私が登録しているGPの場合は、GPの予約システムからメッセージ形式で問い合わせをし、少し待ったあとにメッセージや電話で返信があります。問い合わせ内容によっては、看護師や医師と遠隔で会話し、そこで診察が終わる場合もあります。もしくは対面での予約日を決めていきます。 オンラインのいいところは、問い合わせ内容を細かくテキストで伝えられるところです。電話での会話では医療専門用語がすぐに出てこず、詳細をすべて伝えきれないことも。オンラインで履歴を確認できるため、あとで詳細を振り返るのにとても便利です。近年どんどんオンライン化が進み、以前よりサービスの手軽さが上がったと感じています。 夜間や土曜日に予約が取れることもあり、大学のスケジュールに合わせて利用できるのは留学生にとってもうれしいですね。 実際に病気になったら?病院の使い方ステップ 実際に体調を崩したとき、どうすればいいのか不安に感じる方も多いかもしれません。ここでは、症状が出てから病院で診てもらうまでの流れや、緊急時の対応まで、具体的なステップをわかりやすく解説します。いざというときの参考にしてくださいね。 【NHS利用】症状が出てから病院へ行くまで ここでは、GPや病院などNHSを利用するフローの例をご紹介します。長年NHSを利用しているなかで遭遇した、よくあるパターンをシェアさせていただきますね。 NHS利用の流れ 問い合わせ(電話、オンライン) 問診(GP、電話、ビデオ通話) 必要に応じて診察や血液検査や尿検査などの実施(処方箋のみの場合もあり) 検査結果を聞く(GPか電話の場合が多い) 治療が必要な場合は処方箋をもらう or 病院紹介 【病院紹介の場合】 病院での診察予約に関する手紙が届く(病院が指定する予約日時の記載あり) 指定された予約内容を変更したい場合は病院に電話 予約日時の希望を伝え、確定 病院で診察・検査 GPで結果を聞く(病院の検査結果がGPに送られる場合) ※追加で検査を実施する場合は医師から連絡があり、新しい予約日時を相談する流れになります。 病院はGPと違って、多くの専門科が揃っており規模が大きいです。施設が広いため、初めて訪れる場合は指定の場所を見つけるのが難しいことも。予約時間の前に早めに到着しておきましょう。 病院の内部 NHS 111の使い方 NHS 111は、電話やオンラインですぐにGPにつながらない場合や、GPの診療時間外でも相談したいときに利用できる便利なサービスです。まずは電話かオンラインで問い合わせることで、どういったアクションを踏めばいいかをアドバイスしてくれます。相談内容によって対応は変わりますが、以下のような例があげられます。 看護師からの折り返し電話を予約 夜間・週末のGP診療を案内 歯科やメンタルヘルスなどの専門サポートを紹介 登録しているGPに連絡するよう指示 薬剤師に相談するよう案内 自宅で経過観察するよう指導 NHS 111では、病院の予約・キャンセルや診断書の発行はしてもらえないので注意してください。 参考 https://www.nhs.uk/nhs-services/urgent-and-emergency-care-services/when-to-use-111/ 緊急の場合はどうする? GPの診察を待てずに急いでいる!そんなときは緊急外来(A&E)や救急車(999)を利用します。 まず、A&Eについて。 A&E(Accident and Emergency/事故・緊急外来)は、GPの予約を待っていられないほどのつらい症状や怪我があるなど、緊急性の高い場合に利用します。Accident and Emergencyのほか、Emergency Department(救急部)やCasualty(救急)とも呼びます。着いたらまず受付で症状を伝えます。 過去に利用した感想は、とにかく待ち時間が長いということです。予約を取らないことと、重症患者が優先されるため、先に着いているのに後から来た人が早く診てもらっていたりします。診察の流れは、各自の状態によって変わります。 緊急時の例 緊急性が低く深刻でないと判断→GPの予約をすすめられる、処方箋をもらう 緊急の場合→専門病棟に移り場合によっては入院 病院の正面玄関と別にある緊急外来用の入り口 緊急外来ではとても待てないような、命に関わる緊急時であれば、999へすぐ電話を。交通事故や発作など重大なシチュエーションには迷わず利用しましょう。電話で聞かれる内容は、場所、999にかけた理由、連絡先など。救急隊員の到着を待っている間ににできることや、どれくらいで着くかも教えてくれます。 黄色と緑が目印の救急車  処方薬と薬局の使い方 診療後に薬が出されたら...?ここからは、NHSの処方薬の受け取り方や薬代について、基本的な情報をわかりやすくまとめました。 薬はGPが発行する「処方箋」で薬局でもらう GPでの診察が終わり、処方薬が必要であれば処方箋が出されます。診察後にGPと連携している近隣の薬局(Bootsなど)に行き、Prescription(処方箋)というコーナーでスタッフに自分の生年月日、名前、住所を伝えると、あらかじめ用意してある薬が手渡され、支払いに進みます。 薬局内の処方薬受け取りカウンター 薬代の仕組み NHSで処方してもらう薬の料金は、2025年の時点で処方薬1品につき※£9.90(約1,880円)です。ひとつの処方箋に複数の処方薬がある場合は、すべての薬の合計金額を支払います。ですが、留学生でも18歳以下で大学やカレッジでフルタイム教育を受けている学生はNHSの薬代が無料です。 処方薬が頻繁に必要な人は、処方箋前払いシステム(Prescription Prepayment Certificate)を利用するのも手です。各自のケースが対象になるかの確認は必要ですが、利用できる場合はかなりお得です。 例えば有効期限が3か月間のPPCは、事前に£32.05(約6,090円)支払えば、有効期間中にいくつでも薬を受け取れます(一部は適用外)。PPCの購入はオンラインがメインで、申請日から有効です。申請を完了すると、メールでPPCの証明書が送られてくるので、薬を受け取るときに提示できると便利です。 ※上記の内容は2025年5月時点での料金と為替レート(1ポンド=190円)です。 参考 https://www.nhs.uk/nhs-services/prescriptions/save-money-with-a-prescription-prepayment-certificate-ppc/ 市販薬はスーパーや薬局でも買える 処方薬以外はどうでしょうか。結論として、スーパー、薬局で簡単に手に入ります。痛み止めや風邪薬、胃腸薬、花粉症などのアレルギー薬、目薬、塗り薬など種類は豊富です。自分に合えば、留学中にイギリスで薬を買って服用することもできるので、必ずしも日本から持ち込まなくてもなんとかなる場合もあります。 ※個人差がありますので、薬の調達については慎重に判断されることをおすすめします。 NHSと留学保険の違い これまでNHSのサービスについてご紹介してきましたが、イギリス留学中に本当にNHSだけあれば安心なのだろうか?と不安に思う人もいるでしょう。ここからは、NHSのサービスが対象外になる場合と、留学保険との違いについてお話ししていきます。 NHSで医療費の支払いが発生する例 処方薬1品につき£9.90(約¥1,880円)かかるとお伝えしましたが、そのほかにも支払いが発生する例があります。 ・歯科医療 ・眼科治療 ・かつらや布製の医療用サポーター NHSのサイトでは、歯科医療について、治療が始まる時点で18歳未満、または19歳未満で所定のフルタイム教育を受けている場合は、NHSでの歯科治療が無料になると伝えています(治療内容によっては費用が発生する場合もあり)。 治療費がかかる場合には、日本より高いと言われていますので、渡英までに歯の状態を診てもらうと安心ですね。 眼科の例では、街中の眼鏡屋で行っている一般的な視力検査なら£20(約3,800円)ぐらいから受けられますが、専門的な検査になるとさらに費用がかかります。眼鏡を作る場合、場所によっては学生割引が使えるので、検査の前にリサーチしてみましょう。 NHSを使って治療ができる街中の歯医者 Haruna 実は私も、イギリスで歯の詰め物が取れてしまって、数ヶ月放置したあとに日本の歯医者にかかったのですが、衛生的に良くない!こんなに放っておくなんて!とすごく怒られた記憶があります…。 留学保険で補える部分もある NHSのサービスがこれだけ充実しているのなら、留学保険はいらないんじゃ?と思う人も多いでしょう。しかし、留学保険に入ることで受けられる恩恵も多いのが事実です。 NHSの病院、つまりはイギリスの公立病院を利用するとなると、無料で診療が受けられる分、長く待たされることもザラです。問題の症状が落ち着くまでに、ある程度の時間を要すこともめずらしくないのです。その点、留学保険に入っておくことで、プライベートの私立病院が利用できます。ロンドンには日系クリニックが数件あるため、日本人ドクターに日本語でサポートしてもらえる点もありがたいです。 私がまだ学生だったころ、もうダメかと思うような辛い症状があったときや、小さな手術を受けたときもすべて留学保険が適用され、プライベートの日系クリニックを利用しました。電話一本ですぐに予約がおさえられ、スムーズな日本語のサービスが受けられたことで、改めて保険の大切さを知りました。 ※持病や既往症は補償されない場合がありますので、各保険会社に問い合わせてみてください。 医療以外のトラブルにも留学保険が活躍します。加入するプランによりますが、盗難や破損、飛行機の遅延も補償されるケースがあります。 「何がどこまでカバーされているか」知っておくと安心 NHSのサービスだけでいいの? 心配だから留学保険に入る?答えは人それぞれ。留学生のなかには、医療サービスにおいてはNHSだけでじゅうぶんだった、という人もいれば、留学保険があってよかった、という人も。しっかりとそれぞれの特性を把握したうえで、自分に合った選択をしてみてくださいね。 医療の備えは安心な留学生活の第一歩 イギリス在住の筆者も、これまでに何度もNHSのお世話になってきました。幸い、GPの受付スタッフや看護師、医師たちには毎回親切にしてもらっています。電話やオンラインでの問い合わせには、ほとんど返信があり、しっかり話を聞いてくれます。ただ、サービスの質に関してはGPによりけり、という声も多いです。GP登録をする際には、口コミをチェックしたり、同じGPに登録している学生の話を聞いたりと、下調べをしておくとより安心です。 安心して留学生活が送れるように、医療面での準備を万全にしておきましょう! https://www.nhs.uk

【実体験】イギリス留学準備術: 合格通知からビザ取得までの記録

3月に入り、イギリスの大学や大学院から合否結果が届いてきたと思います。大学からオファー(合格通知)を受け取るといよいよ本格的な留学準備が始まります。入学までには多くの手続きがあり、スムーズに進めるためには計画的な準備が必要です。本記事では、オファーを受け取った後の具体的な準備プロセスについて、僕の経験を踏まえて詳しく解説していきます。 合格結果の確認と入学手続き 出願してからオファーをAcceptするまで 合格結果が届く時期は大学や学科によって異なり、ここは待つしかありません。僕は出願した5校のうち4校は2月初旬までに結果が届きました。しかし第一志望の大学だけ3月までオファーが来ず、もどかしさを覚えました。遅くて7月ごろに結果が出る場合もあるそうなので、気長に待つことが大事だと思います。UCASのTrackシステムをこまめにチェックしましょう。 オファーの種類(Conditional・Unconditional) イギリスの大学からのオファーには、「条件付きオファー(Conditional Offer)」と「無条件オファー(Unconditional Offer)」の2種類があります。条件付きオファーは、IELTSスコアや最終成績の提出といった特定の条件を満たすことで合格となります。UCASで出願した全ての大学から合否が届いた後は、Firm Acceptance(第一希望)とInsurance Acceptance(第一希望に合格できなかった場合の第二希望)の大学とコースを選択します。第一希望の大学からUnconditional Offerをもらった場合はInsurance Acceptanceを選択する必要はありません。 オファーを受け取った後の対応 自分が受け取ったのが条件付きオファーの場合は手続きを早めに済ませることが大切です。通常、オファーの承諾期限が設定されているため、遅れないように注意しましょう。一部の大学ではInternational Students(留学生)がオファーを承諾する際、デポジット(Deposit - 入学金)の支払いが必要です。この金額は大学によって異なりますが、£1,000~£5,000が一般的です。支払期限も設けられているため、期日を確認して早めに対応しましょう。 不合格だった場合の選択肢(Extra・Clearing) もし出願した全ての大学が不合格(Unsuccessful)だったとしても、結果をもらった後に追加で一つのコースに出願できる「エキストラ(Extra)」と定員に達していないコースに出願できる「クリアリング(Clearing)」というシステムがUCASにあります。Extraは2月末から7月初旬まで、Clearingは7月中旬から9月~10月ごろまで行われます。期待した結果が出なかった場合でも諦めずに他の大学やコースにトライしてみましょう。  イギリス学生ビザ(Student Visa)の申請を徹底解説 イギリスでの長期留学には学生ビザ(Student Visa)が必要です。申請にはいくつかの書類が必要で、その用意やビザ発行までに時間がかかります。とにかく早めの行動が大事です。  必要書類 CAS 大学からのオファーを承諾し、パスポートなどの書類を提出すると、「CAS(Confirmation of Acceptance for Studies)」という入学許可証が発行されます。CASはビザ申請に必須な書類で、入学証明となる番号(CASナンバー)が書かれています。発行には通常数週間かかりますので、余裕を持って手続きを進めましょう。  パスポート パスポートの有効期間が留学期間をカバーしている必要があります。期限が短い場合、事前に更新しておきましょう。申請時にパスポートを提出し、そこにビザが発給されることになります。また、見開き2ページ以上の余白ページがあることも確認しておきましょう。  過去のパスポート 過去10年間の渡航歴を聞かれた時、昔使っていたパスポートがあると便利です。ただし、トランジットで立ち寄り、滞在期間が1日未満だった国も渡航歴に含まれます。こういった場合はパスポートにその記録がない時があります。できるだけ正確な情報を書くことが推奨されているので、僕は法務省の出入国在留管理庁というところで自分の渡航歴に関する開示請求を行いました。500円程度で調べてもらえます。https://www.moj.go.jp/isa/publications/privacy/record.html 英語力の証明書 大学によってビザ申請時に英語力の証明を求めるところもあります。GCSEやIBなどのスコアで証明できる場合と、イギリス政府が認定するSELT(Secure English Language Test)の結果しか受け付けてくれない場合があります。このSELTはイギリスのビザ取得専用の英語力試験です。中には「IELTS for UKVI」や「Pearson PTE Academic UKVI」などがあります。IELTSとは異なるもので、指定のスコアを満たすため改めて受験する必要があります。 申請費用と健康保険料(IHS) 申請時にはビザ申請料(£490)の支払いが必要です。さらにIHS(Immigration Health Surcharge)という健康保険料(£776×コースの年数)も支払います。IHSを支払うと、イギリス滞在中にNHS(国民保健サービス)を原則無料で受けられます。 ビザ申請の流れ 書類の準備ができたら、イギリス政府のUKVI(UK Visas and Immigration)の公式サイトから専用の申請フォームに情報を入力し、書類をオンラインで提出します。オンライン上の手続きが済んで、申請料及びIHSを支払うとVFS Globalのビザ申請センターの来館予約ができるようになります。日本には東京と大阪にビザ申請センターがあります。予約した日にパスポートを提出し、生体認証情(指紋と顔写真)を登録します。審査は通常3週間ほどかかり、終了しないとパスポートが返却されません。ビザはパスポートと共に返却されます。ビザ申請センターで受け取るか、郵送してもらうかを選べます。 審査開始後に財政能力証明書の提出を要求される場合があります。これはイギリスでの生活費をカバーできる資金があることを証明するためのものです。ロンドンの大学で勉強する場合は£12,492以上。ロンドン以外の場合は£10,224以上(授業料を除く)。つまりロンドンでの生活費: £1,438/月、ロンドン以外での生活費: £1,136/月: 9ヶ月分の生活費をカバーできる証明が必要です 。預金通帳や金融機関の取引明細書を英文に翻訳したものが必要です。あらかじめ準備しておくとビザ申請がスムーズに進むでしょう。  より詳しい流れについては下のサイトに説明してあるので、確認してください。https://www.westminster.ac.uk/sites/default/public-files/general-documents/student-visa-application-guide-applying-from-outside-uk-v2.pdf  申請は「何事も早めに」が鉄則! 前述の通りビザの審査には通常3週間ほどかかると言われています。繁忙期にはそれ以上の時間がかかることもあります。ビザ発行が渡英日に間に合わずフライトを変更せざるを得なかった友達が何人かいました。審査期間が多少長くなってもいいように、早めに必要書類を集めて申請することが大事です。「ビザ申請ドットコム」や「IMMIGRATION.UK」といったビザ申請を代行してやってもらえるサービスがあり、書類の翻訳など自分でできるか不安があった僕は活用しました。利用すれば必要な書類を揃えて代行者に提出するだけです。その後の申請フォームの入力やビザ申請センターの予約などは全部やってもらえます。  寮とシェアハウスの探し方 ビザ申請と並行して、イギリスでの住居を確保する必要があります。選択肢としては大学が運営している大学寮、民間の学生寮、シェアハウスなどがあります。 大学寮 vs 民間の学生寮の違い 同じ大学の人と交流できる大学寮は、初めての留学で最も安全で便利な選択肢だと思います。特にロンドンなどの都市部では、民間の賃貸物件の家賃が高いです。そのため、大学寮を利用することでコストを抑えられます。僕は大学1年の時に大学寮で暮らして、2、3年の時は民間の学生寮で暮らしていました。民間の学生寮だと、ロンドン中の大学から学生が集まるので他大学生との交流が深まります。ただし、これらの寮は人気が高く、申込期限が早いです。オファーを受け取ったらすぐに申し込むことをお勧めします。早めに申し込みをしなかったせいで、キャンパスから遠い場所にあったり、家賃が高い寮しか残っていなかったりという話も友達から聞きます。 大学が寮の情報を発信していますし、部屋の予約ができるResidence(住居)のサイトやWebポータルにも情報があるので、そこのSNSなどに登録して最新情報をチェックしましょう。  僕が住んでいた民間の学生寮 シェアハウス探しの注意点と便利サイト シェアハウスは費用を抑えつつ、学生のみならず現地の人々と交流できる点が魅力的です。ただし、契約詐欺や知らない人とシェアしなければいけないというリスクもありますので、信頼できるサイトを利用して物件を探し、可能であれば現地で内見してから契約を結ぶことが望ましいです。住居探しには、Rightmove(https://www.rightmove.co.uk/)やZoopla(https://www.zoopla.co.uk/)などの物件検索サイトが便利で、よく使われています。また、SpareRoom(https://www.spareroom.co.uk/)を利用すれば、ルームシェアの相手を見つけることもできます。  必須手続き: eVisaについて 返却されたパスポートに載っているビザはあくまで仮のEntry Clearance Visa(入国許可証)というもので、発行されてから90日まで有効です。正式なビザはeVisa(Online immigration status)という電子書類です。UKVIから送られてくる案内に従い、オンライン上でビザの申請番号やパスポート番号を登録して、アカウントを作成します。 イギリスに入国する際、パスポートのビザだけでなくeVisaの提示が求められる場合があります。そのため渡航前に手続きを済ませておくといいでしょう。これまではBRP(Biometric Residence Permit)カードという物理的な書類だったのでした。2025年の1月からオンラインに置き換わりました。 今回紹介したプロセスの他にも航空券を予約したり、持ち物を準備したりするなど、渡英までにやっておく必要があることはたくさんあります。それらについてはまた別の記事で書きますので、楽しみにしていただければ幸いです。CASやビザの発行などには思っている以上に時間がかかるものもあります。留学生活がスムーズに始められるよう、計画的に準備を進め、安心して渡英しましょう。  https://www.gov.uk/student-visa

インペリアルカレッジロンドンの年度初め: 学期最初の1週間

こんにちは!Kenshuです。今回は9月に始まったImperial College London(インペリアルカレッジロンドン)での新学期の最初の1週間を紹介していこうと思います。海外の大学での新学期の始まりはどんな感じなの?って疑問を持っている皆様の参考になれば嬉しいです。 イギリスの大学はいつ始まる? イギリスの大学が始まるのは大体9月から10月です。大学によって始まる日にちは違います。例えば今年(2025/26年度)だとUniversity College London(UCL)は9月22日、King’s College London(キングスカレッジロンドン)だと9月22日、University of Cambridge(ケンブリッジ大学)だと10月1日などと大学ごとに変わります。僕の通っているImperial College Londonでは9月29日に始まりました。 大学によってはWelcome WeekやOrientation Weekと呼ばれる期間が設けられていて、本格的な授業はその翌週から始まることが多いです。 いつイギリスに行けばいい? 学期が始まる数日前に着くことをおすすめします。自分の住む家(寮やアパートなど)の入居可能日や家族と一緒に来るのかなどを総合的に考慮して決めるといいと思います。僕は一人で渡って、寮に入ったので学期が始まる2日前の27日に行きました。 初日は時差ボケや荷解き、買い出しなどで結構忙しくなります。そのため最低でも1、2日前には到着しておくと余裕をもって学期開始を迎えられて安心です。 インペリアルカレッジロンドンの寮はどんな感じ? インペリアルの1年生は寮に入れることが確約されています。入学する年の5、6月ぐらいにインペリアルからフォームが送られてきて、希望する寮を記入します。 インペリアルには6つの寮があり、キャンパスからの距離、設備、値段などがさまざまです。僕がいるWoodward Buildingsはキャンパスから一番遠い分、値段が安いです。キャンパスに近いSouthside HallsやEastside Hallsでは値段が倍ぐらい違うことがあります。 インペリアルカレッジロンドンの寮 WoodwardにはBlock A、B、Cがあり、各棟に200人ほどが住んでいます。各フロアには10人ほど住んでいて2つのキッチンを共同で使っています。キッチンは結構充実していてIH式のコンロが8つ、オーブン、冷蔵庫がそれぞれ2つ、電子レンジなどがあります。 毎日夕方の6、7時になるとみんなが料理をしに来るのでその度に仲良く話しています。共同生活ならではの出会いや会話が生まれやすく、友達を作るきっかけにもなります。 寮に着いた初日に学生全員がStudent Cardをもらいます。この学生証は講義棟や寮、自分の部屋に入る時などに使います。僕は入居して間もない時に一度Student Cardを部屋に忘れ、1階にあるReceptionまで行ってドアを開けてもらいました。10~15分かかったので絶対になくさないで常に持ち歩くようにしないといけないなって痛感しました。 寮からインペリアルカレッジロンドンまでの通学路 寮はNorth Acton駅の近くにあり、ヒースロー空港からは比較的簡単に辿り着けました。Central Lineが通っているのでロンドンの中心街(SOHO)にも乗り換え無しで行けます。 寮からインペリアルのSouth Kensingtonキャンパスまでは電車を2本乗り継いで行けます。でも個人的には乗換駅で次の電車に乗らず、そこから徒歩でHyde Parkを通過して大学まで行くのが好きです。毎朝友達とHyde Parkを歩くのは気分が晴れます。ビル群ではなく、自然の中が通学ルートになるのはとても魅力的です。 毎朝登校中に通り抜けるHyde Park Hyde Parkのすぐ近くにあるRoyal Albert Hall イギリスでの生活用品の準備 渡英してすぐに必要になのが生活用品の買い出しです。寮には家具が備え付けられていますが、枕、布団、調理器具などは自分で揃える必要があります。僕は到着した日に近くのJohn Lewis(家具量販店)で寝具一式、数日後によくわからない地元の店でフォークやスプーンなどを調達しました。Amazonを活用する人も多く、寮に直接届けてもらえるので便利です。 インペリアルカレッジロンドン: 年度初めのイベント Freshers Fair Freshers FairとはいろいろなSociety(サークル)やスポーツクラブなどが一堂に会して1年生に活動内容を紹介する新入生歓迎祭です。このイベントは2日間にわたって開催されます。 インペリアルには300を超えるSocietyがあり、文化、スポーツ、趣味などいろいろな種類があります。スポーツクラブだとトライアウトがあり、2、3回チャンスが与えられます。大学生活で勉強だけではなくスポーツにも打ち込みたいっていう人にはいい機会だと思います。 無料のグッズやクーポンを配っているブースもあるので、気軽にいろいろ回ってみるのがおすすめです。 Freshers Event 最初の1週間は寮単位や学部単位、Student Union(学生連合)主催のいくつものイベントが行われます。Halls Mixersやクラブを貸し切るイベントもあります。 Halls Mixersでは自分の寮の人たちとお酒を飲みながら交流します。新しい友達を見つけられることもあります。 他にはクラブを貸し切ってインペリアル生だけのパーティが行われます。ビールやテキーラなどのショットだけで6ポンド(約1200円※)以上するのでお金に余裕がない人にはあまりおすすめしません。経験を得るため友達やFlatmatesなどと行くにはめちゃくちゃいい機会です。 ※1ポンド=200円で換算 各コースのイベント 各専攻にもイベントが開催されます。僕はChemical Engineeringを専攻しているのでそれに関する講演やアクティビティなどがありました。インペリアルの学長やChemical Engineering Departmentの学部長によるスピーチ、自分と同じ専攻の新入生たちと一緒にランチを食べながら情報交換するなどいろいろ充実していました。 最後に 最初の1週間は勉強というよりかは学校のことをよく知り、周りの人たちと仲良くなる期間です。そのため比較的時間に余裕ができるので、友達や家族などとロンドン観光をしてみてもいいかもしれません。Natural History Museum(ロンドン自然史博物館)やいくつかの美術館などがインペリアルから徒歩数分のところにあるので行きやすいです。 https://passport-to.com/articles/27/

【イギリス高校留学】15歳で親元を離れたボーディングスクールでの生活

私は15歳から親元を離れ、イギリス留学を始めました。大学もイギリスで、卒業後もしばらく滞在していたため、気づいたら14年間イギリスにいることになっていました。苦あり楽ありの留学体験をお届けします。 イギリス全寮制高校への道: 留学を決意するまで 小さい頃、父の仕事でアメリカに行っていたことがあり、英語には多少自信がありました。しかし、滞在は4歳から6歳までのわずか2年半だったため、帰国し中学生になった頃には英語力がかなり落ちていました。ある日、母と当時の英語の家庭教師からの要望に応じ、英語のエッセイを書いてみました。すると「アメリカの小学校2年生レベルだね」と言われ、ショックを受けました。これを機に、英語をちゃんと勉強しようと決意しました。 ちょうどその頃、インターナショナルスクールに通っていた2つ上の兄がイギリスの大学に進学したいと言ったので母と3人でイギリスの大学の下見に行くことになりました。自分にとって未知の国だったイギリスに惹かれていたのと、いつかは留学したいという思いが相まって、ついでに高校も見ようと母と決めていました。 ノッティンガムシャーの高校見学 複数の大学や高校を巡り、その中のひとつの高校にとても良い印象を持ちました。イギリス東中部、Nottinghamshire(ノッティンガムシャー州)のWorksop(ワークソップ)というところにある高校です。先生が優しく、校舎も広くてかっこよく、生徒達の行儀もとてもよかったです。みんな紳士的で礼儀正しく、先生方の指導が行き届いていることが伝わってきました。 若くして単身留学することを心配していた母も、このしっかりした校風が気に入りました。校長先生とお話をし、その後校舎見学をしました。また、私が医学部志望だったため、英語力をネイティブ並みに上げる必要があると言われ、もうその夏から入学することを勧められました。もともとイギリスでそのまま医学部に行くつもりはなかったのですが、先生方や両親と相談し、見学に行った2ヶ月後には留学を決心しました。 学校の校舎 イギリス高校留学|ボーディングスクールの生活とは? 寮のシステムと制服 イギリスに着いてすぐ、寮長さんや寮母さんに挨拶しました。説明を受け、私はYear 10(日本の中学3年に該当)に入学しました。日本の中学に相当する学年では制服が決まっています。ブレザー、シャツ、スカート、そしてcravatと呼ばれるネクタイのようなものに加え、靴下も学校指定のものを着用しました。 この学校には数種類の寮があり、女子は学期中ずっと過ごす「Full boarding(フルボーディング)」用、平日だけ暮らす「Weekly boarding(ウィークリーボーディング)」用、そして「Daily student(夜には家に帰る通学生)」用の寮がそれぞれ1つです。男子寮はDaily studentと住み込みの生徒が混ざっていて5~6つの寮がありました。各寮には30~40人くらいの生徒がいました。 1つの寮には最下級生のYear 9(中学2年生)から最上級生のYear 13(高校3年生)までが一緒に暮らしており、2、3人部屋もあれば1人部屋もあります。新入生は基本的に多人数部屋に割り振られ、最高学年の生徒は1人部屋が与えられました。私は最初3人部屋に入りました。その後2人部屋になったり3人部屋になったりの繰り返し。最終学年になったらついに1人部屋を手に入れました。毎学期、部屋のメンバーは先生が決めて変えていました。 校長先生の住むお家。学校の入口のすぐ隣にある 深夜の勉強と寮のおきて 渡英当初の英語力では会話についていくのが精一杯で、授業は全く理解できませんでした。現地の生徒ばかりの学校で、私の学年にいた留学生は他に男子2人だけでした。英語の授業以外は現地の生徒達と一緒に受けるため、取り残されないように懸命でした。深夜と早朝の時間を活用し、ひたすら教科書の翻訳をする日々が続きました。 ある明け方、普段電気が点いている部屋が消灯されたので階段に座って勉強していました。すると寮母さんが駆けつけてきて、「Yui、こんな時間に勉強しないの!ここはアラームがついているの。勉強は日中だけでも十分なのだから夜はしっかり休みなさい」と注意されてしまいました。どうやらこの階段にはアラームが設置されていて、人が入ると寮母さんなどの責任者だけが知らされるようになっていました。それ以来、夜中の勉強はやめました。 ホームシックと戦う日々 寮生活はとても厳しく、朝1回、お昼前に1回、お昼後から夕方にかけて3回、そして夕飯後の宿題時間に3回、点呼がありました。そして寝る前には先生が各部屋を回って携帯電話を没収し、電気も強制的に消されます。しかしほとんどの子は偽物の携帯を預けていました。 留学した最初の年はスマホもWi-Fiもなかったので私はガラケーを使っていました。インターネットは共用のパソコンルームのみで使うことができます。家族と連絡を取るときは国際電話でした。 週に1回、Skypeが使えるパソコンを予約して家族とビデオ通話することができました。しかし世界中から留学生が来ているので常に予約枠の取り合いでした。日本との時差の関係で都合の良い時間帯が限られ、目当ての時間枠が取られてしまってよく落ち込んでいたものです。 最初の1年間はホームシックでほぼ毎日泣いていました。言葉があまり通じなかったため友達もできなかったです。「かわいそう」と寄ってきてくれる生徒や授業で一緒になった生徒とたまに話す程度でした。都会ではなかったので、アジア人が少なく、奇異の目で見られているように感じました。 留学1年目の冬。膝下まで雪が積もるほどの大雪でした 辛かった陸軍の訓練 私の学校はCCF(Combined Cadet Force)という連合将校養成隊の時間があり、Army(陸軍)の訓練をしました。陸軍の他に、Navy(海軍)、Royal Air Force(空軍)もあり、現地の生徒は選択が可能でした。その頃、私たち留学生は選べず、一番人数の多い陸軍に自動的に振り分けられました。軍隊用の重たい迷彩服を着て寒い中2時間くらいマーチングし、銃の練習や匍匐前進などをするのはとても苦痛でした。また、落ち葉や枝を集めたり、数人組で運動させられたりと、グループでの活動が多かったです。友達の少ない私には楽しくはありませんでした。 礼拝の時間でスピーチに挑戦 一方で、週5回の朝のChapel(礼拝)の時間は比較的平和な時間だと感じました。讃美歌を歌い、お話を聞くだけの時間でした。木曜と土曜日以外の曜日に毎週、礼拝が行われました。日曜日だけ、朝の礼拝は全校生徒ではなく、寮生のみの参加で人数が少なかったです。そのため留学生にも皆の前で話をする機会が与えられました。 私も数回日曜日にスピーチした後、全校生徒の前で話す機会をもらい、3.11の出来事などを話しました。現地の生徒が多かったので、彼らにとって海外に触れられる貴重な機会だったと思います。その他、日本や中国の祝日の時には文化のお話もしました。 日本ではクリスマスは外で過ごし、お正月は家族で過ごすものだと伝えたら、イギリスとは真逆なので驚かれました。話した内容に興味を持ってくれ、それをきっかけに会話が弾むことがよくありました。先生方は、私たち留学生が学校に溶け込めるよう、常に様々な工夫をしてくれていました。 チャペル 深める交流: スポーツとイベントの舞台裏 ハリーポッターの世界!イギリスならではのスポーツ イギリスのBoarding school(ボーディングスクール・全寮制学校)特有のスポーツの時間もありました。季節や性別によって競技が分けられています。秋には男女共にもホッケー、冬は女子がネットボール、男子がラグビー、夏は水泳、クリケット、クロスカントリー、ラウンダースなどから自由に選択できました。 ハリー・ポッターに出てくるような寮対抗の大会や他校との試合もありました。他校との試合では、全生徒が実力別に分けられ、相手校の同じレベルのチームと戦います。そして試合後は相手チームと一緒にSupper time(おやつの時間)があり、ポテトやパン、フルーツ、ケーキなどを一緒に食べました。 ラグビーコートが9面もある広大な敷地を持つ学校。裏にはゴルフコースも プロムやダンスパーティー 年に数回、寮ごとのパーティーがあり、他の寮の子も主催寮の生徒に招待されれば参加できました。男子寮が開催するダンスパーティーに出席する際はProm(プロム)に行くような感じのドレスアップをしました。また、冬休みに入る前は各寮の寮生全員が一丸となって練習したダンスを全校生徒の前で発表するイベントもありました。 その他にも私はInternational Eveningを主催したことがあります。各国の生徒が協力して国の料理を作り、みんなでビュッフェスタイルで食べるイベントです。先生方に協力していただき、ダイニングホールとキッチンを借りて行いました。そこで日本人チームはトンカツを作りました。 日本人チームが作ったトンカツ 英国ボーディングスクールの授業内容 1年目はGCSEを勉強しており、Science(理科)、Mathematics(数学)、English as a Second Language(英語), Religion(宗教学)とStudent Selected Studies(選択科目)でした。選択科目にはGeography(地理)、History(歴史)、Art(美術) , Design and Technology(デザインとテクノロジー)、Food and Nutrition(料理と栄養学)などがありました。 私は理系だった上、英語の授業についていくのに必死だったこともあり選択科目ではArt、Design and Technology、そしてFood and Nutritionを選択しました。英語がネイティブの生徒はフランス語なども選択可能でしたが、留学生は必ずEnglish as a Second Language(ESL)をとらなければならず、他の言語は選択できませんでした。ESL以外の授業は全て現地の生徒たちと一緒でした。 私は日本で購入した電子辞書をどの授業にも持っていき、常に単語の意味を調べながら受けていました。最初の1年は辞書を使用して試験を受けることが許されていました。試験の際には先生から英和辞典が手渡され、それを使って試験に挑んでいました。 イギリス高校留学で得たこと 先生のサポートに感激した日 特に印象に残っているのは理科の授業で試験が返却された時のことです。私は60%しか得点できず、周りの不真面目な子たちと同じくらいの点数でとても悔しかったのですが、先生は私の努力を褒めてくれました。 しかし他の生徒がそれを聞いて「でも辞書を使ってるしね」と嫌味を言いました。それに対し先生は「じゃあ君は他の国に行ってその国の言語でテストを受けた場合、辞書を使えばこの点数取れるのか?簡単なことではないよ、母国語で受けても簡単じゃないんだから」と返してくれました。この先生のサポートは今でも忘れられません。このように素晴らしい先生方がたくさんいる学校でした。  Comfort zoneに戻るか挑戦を続けるかの決断 渡英してから1年経った時の夏休みに帰国した際、正直イギリスに戻るか少し悩みました。友達が少なく、授業も難しい。でもやっと英語にも慣れてきたこと、そして何よりも先生方の期待に応えたい気持ちがあり、もう1年、せめてGCSEだけでも終えようと、戻る決心をしました。 重たい足を引きずり、再び寮に戻ると、先生が「戻ってきてくれてよかった」と声をかけてくれました。複雑な心情で戻ってきたけれど先生方がいれば頑張れると思いました。 私の学年に新しい留学生が増え、寮にも何人か入ってきました。英語が全く話せなかった中国人の生徒が1人いて、その子に英語を教えながら暮らしていたらいつの間にか自信もつき、留学生活が楽しくなっていました。そして授業にもついていけることに気が付きました。友達も増え、去年から同じクラスだった生徒達に「Yui、英語すごく上達したね」と言われたときは本当に嬉しかったです。 おかげでGCSEは良い成績で卒業できました。次回はA-level、やホストファミリー、休暇の過ごし方について書きたいと思います。 https://passport-to.com/articles/9/

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キングスカレッジロンドン「リベラルアーツって何を学ぶの?」学科の先生インタビュー②

前回の記事ではKing’s College London(キングスカレッジロンドン)のDepartment of Interdisciplinary Humanities(学際的人文学部)のDeputy Director(副学科長)であるChristopher Holliday先生にリベラルアーツ教育についてのインタビューを行いました。 Christopher Holliday先生 キングスカレッジロンドンの学際的人文学部の副学科長。専門は視覚文化教育。リベラルアーツプログラムの創立に携わった教員の一人。University of Warwick(ウォーリック大学)でFilm and Television Studies(映画・テレビ学)分野のBA(学士号)とMA(修士号)を取得し、キングスカレッジロンドンでFilm Studies(映画研究)のPhD(博士号)を取得した。 リベラルアーツ特集の最終回となる本記事ではインタビューの続きをお送りします。リベラルアーツの学びとしての広がり、キングスカレッジロンドンでリベラルアーツを学習することの意義、そしてキングスのリベラルアーツ課程の卒業生の進路などについてお話しいただきました。 近年注目を集めているリベラルアーツ 前回の記事でChris先生へのインタビューを通じてキングスのLiberal Arts(リベラルアーツ)課程について詳しく聞きました。リベラルアーツでは学生は複数分野を自由に組み合わせて履修し、自分だけの学位を“キュレート”する学び方が特徴で、分野横断的な「つながり」を考える力が養われます。必修のコアモジュールでは、概念やテーマを通じて多様な視点から議論することを重視しており、知的好奇心を刺激する設計になっているということを教えていただきました。 Yuki リベラルアーツはアメリカ発祥の学問ですが、ここ最近イギリスはもちろん日本でもリベラルアーツ教育を取り入れる大学が多くなってきたなと感じます。先生にとってリベラルアーツ教育が世界に広まっている理由はなんだと思いますか? 一つの分野に絞り込まない学際性 長い学問の歴史の中で、Single honours(単一専攻課程)のような「一つに分野を絞り込む」はむしろ最近の考え方なんです。 人間はもっと知的好奇心が旺盛な生き物だと思っています。それなのに、17歳や18歳という若い時期に、「この3年間はこの一つの分野だけ」というものを決めさせるのは大きすぎる決断ですし、少し早すぎるかもしれないです。そんなに若いうちに、なぜ自分を無理に限定しなければならないのか、と。それがリベラルアーツのInterdisciplinary(学際的)な考え方が学生に響く理由の一つだと思います。 リベラルアーツの授業が行われるキングスカレッジロンドンのStrand Campus 学生は、まだ世界のことも、自分自身のことも模索している段階にいます。私たちはそういった学生たちに選択肢を広く持てるようにしておくことが大事だと思っています。彼らが「無理やり一つの学問に押し込められている」と感じないようにする。もちろんリベラルアーツでも一つか二つの分野に集中することはできますが、最終地点を変えたくなった時のために選択肢を開いておくことができるんです。 単一学問だけでは社会課題を解決できない そしてもう一つは、現実の社会にある多くの課題を解決するには、学際的な発想が必要とされているという点です。 今の社会に存在する課題は一つの分野の知識や一つの利害関係者だけでは解決できません。複数の分野を横断して考えられること、異なるオーディエンスに向けて同時に発信できること、そういう力が必要です。ですから、こうした学際的な学位プログラムは、社会の現実によりしっかりと結びつけるよう作られています。 決して「専門性を平板化する」ことが目的ではなく、むしろ自分の専門分野は自分が思っている以上に他分野を横断できる、ということを学ぶのです。それが学生を訓練する上で大切なんです。 現代の世の中はかつてないほど複雑になっていて、そこから生まれる課題は、一つの学問だけの視点で簡単に解決できるものではありません。だからこそ、学際的な枠組みや視点を学生に身につけてもらい、それを実際の社会の中で応用できるようにする。そういった教育が、これからの世界にますます必要とされるのだと思います。 イギリス、そしてキングスカレッジロンドンでリベラルアーツを学ぶ意義 Yuki なるほど。ではイギリス、そしてキングスカレッジロンドンでリベラルアーツを勉強するということは学生にどのようなものをもたらすと思いますか? 汎用性の高い人材を育成 イギリスのリベラルアーツの学位は、幅広いスキルを身につけて、非常に適応力の高い人材を育てるためのものになっています。その結果、様々な進路に進む可能性が開かれています。 授業中の様子 そして汎用性の高い「批判的思考」「異なるオーディエンスに向けたライティング」「問題解決」「コミュニケーション」といったスキルも同時に養われます。 こうした学際的な学びに焦点を当てていること、それによって得られるスキルは、非常に高い就業適性を持つものになっていると思います。つまり、多様な分野を横断して考えることのできる柔軟性と多様性を得られることが強みです。 ロンドン全体をキャンパスとして活用 キングスのような場では、単なる知識の寄せ集めではなく、それらの知識を活かして実際に幅広い分野に進んでいけるようなリベラルアーツ教育を設計しています。特定の学問分野に加えて、メディアやコミュニケーション、クリエイティブ産業、教育、国際関係など、幅広い分野で学び、将来に備えることができます。 他にもキングスカレッジロンドンでは大学の立地を最大限に活かしています。イギリスでリベラルアーツを提供している大学は他にもありますが、クリエイティブ産業などと直接的なつながりを持ち、インターンシップのモジュールを提供できているところは多くありません。 文化施設との距離も近く、劇場や博物館、テート美術館で授業をすることもできます。それはロンドン中心部にあるキングスだからできる強みです。その強みを活かして私たちはロンドンという都市全体をキャンパスとして活用しています。 “Lives of London”モジュールが最初の実践の場 ロンドンは学際的学習の実験室のような場所で、少し歩くだけで、すぐに学際的な思考を必要とする対象に出会える場所です。 私たちは、ロンドンという都市を理解するにはどんな学問分野が必要なのかを学生に問いかけるようにしており、Lives of Londonというモジュールを1年次に提供しています。ここで学ぶのは単なるロンドンの地理や歴史などではなく、ロンドンという都市を通して、リベラルアーツ教育をどう展開できるのかということです。 だから、知的好奇心・探究心が旺盛な人にとって、ここでの学びは本当に価値のあるものになると思います。そして私たちはそういう学生に世界に出て変化を生み出してほしいと願っています。キングスでのリベラルアーツの学位は、まさにそれを可能にするための準備をしっかり整えてくれるものになっています。 Yuki Lives of Londonは僕の一番好きなモジュールでした。大学を卒業して、リベラルアーツの友達数人とまだ連絡をとっているんですが、彼らのお気に入りでもあったみたいですよ。あのモジュールはリベラルアーツそのものについて学べただけでなく、ロンドンに来て数ヶ月しか経っていない中で「自分自身について考えるための場所」を見つけられたように感じました。私にとって、大学1年目にあのモジュールを受けることができたことは本当にワクワクしましたし、刺激的でした。 このロンドンを学ぶというモジュールは過去に「主に留学生だけに向けてのものなんじゃないか」という批判が出たことがありました。もちろん留学生がこのモジュールから多くを学べるのは確かですが、当然ロンドンで育った学生にとっての学びの機会も含まれるべきだと思います。だからこそ“Lives of London”という名前をつけているんです。 ロンドンで育った人にとっての「地域としてのロンドン」とロンドンの外から来た人にとっての「ランドマークとしてのロンドン」は全く異なります。どこで育ったのか、どんな背景を持っているのか——そうしたことがロンドンでの経験を大きく形作るので、私たちはその点についてもきちんと考慮するようにしています。 リベラルアーツの学位全般に言えることですが、基本的に「世界で起きていることをリアルタイムで追っていく」ことが大事です。だからシラバスもその時々のロンドンで起きていることに合わせて更新します。例えば授業の一環でタイムリーな展覧会に行ったり、授業に合った演劇を観に行ったりします。そうやってコアモジュールを「世界に応答するもの」にしているんです。 Lives of Londonはその最たる例です。というのもロンドンを中心に据えているわけですから。都市というもの、特にロンドンという場所は常に変化していて、生き生きと動いている存在です。だからこそ私たち教員も、それに敏感である必要があるんです。 キングスカレッジロンドン: リベラルアーツ学生の進路 Yuki リベラルアーツ課程で今まで印象に残っている学生はいますか?卒業生の皆さんはリベラルアーツでの経験を活かして、どのような進路を進んでいますか? 正直なところ、私たちの学科は発足してからそれほど時間が経っていないので、卒業生の進路について把握できているのはまだ一部に限られます。それぞれがどんな分野に進んでいるのか、すべてはわかっていないんですね。 ただ、何人か印象に残っている学生はいます。例えばメガ・ハリシュはインドのバンガロール出身で、詩や散文を書くクィア※作家です。 ※Queer(クィア)とは性的マイノリティを包括的に表す言葉。レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーなど。作品のジャンルでもある。 彼女はキングスでのリベラルアーツの第1期生で、リベラルアーツソサエティの初代会長も務めていました。今も学生に向けてリベラルアーツの学位について話をしに戻ってきてくれることがあります。学科の立ち上げ期から関わってきた存在として、すごく印象的な人ですね。 それからレベッカ・ガイザー。彼女は5年ほど前に卒業したのですが、自分で劇団を立ち上げて「RJGプロダクション」という制作会社を運営しています。いくつか注目度の高いプロジェクトにも携わってきました。 今思い返してみると、彼女は音楽専攻でもなかったのは面白いですね。レベッカのように、入学時と卒業時で自分の将来のイメージが大きく変わる学生をよく見かけます。彼女の場合も、様々なモジュールを受講していく過程で、関心が大きく変わっていったんだと思います。 もうひとりはエマニュエル・ドット。私のアニメーションの授業を取っていた学生です。専攻は政治学で、副専攻として映画を選んでいました。エッセイの指導をしたこともあります。彼女は今、環境政策の分野で活躍していて、持続可能性に関する議論の中で大きな成果を上げています。 それにしても、学生たちが入学時に私が想像していたものとは全く違う進路に進んでいくのを見るのは本当に面白いことです。 Yuki 本当に色々な学生がいて、先生としても彼等の進路を見届けるのは興味深いんじゃないですか そうですね!様々な学生が集まって行われるセミナーが楽しいのはまさにその部分で、異なる伝統知を持った学生たちが集まるからこそ、議論がすごく生き生きとするんです。どんな視点が飛び出してくるか、教員側でも本当に予測できないんです。 「この仕事に同じ一日はない」とよく言われますが、本当にその通りで、特にリベラルアーツ課程ではまさにそうなんです。学生自身が日によって違う学部や学科の内容を取り扱っていて、同じ一日なんて存在しない。私たち教員チームとしても、その活気を強く感じています。 多様な視点が交差する教室から生まれる学び Yuki 先生は映画学科の授業も担当していたとのことで、その時とリベラルアーツの授業を担当するときの違いは感じますか 違いはいくつもあります。これはリベラルアーツの授業を行う時によくあることなんですが、どうしても自分の専門分野に引き寄せて話してしまいがちなんです。授業を作る時はそれを避けて、特定の分野に偏りすぎないシラバスを作らなければなりません。 リベラルアーツ授業へのこだわり 例えば、古典専攻の学生や政治学専攻の学生がいる中で、私が映画の例ばかりを使うと、映画を専攻していない、あるいは映画に興味のない学生を置き去りにしてしまいます。常にバランスが必要なんです。そのため、私たちのモジュールはチームティーチングで行うことが多いです。 キングスのリベラルアーツのオフィスがあるVirginia Woolf Building 異なる分野の教員が週ごとに教えるスタイルで、学生は複数の視点から学ぶことができます。私たち教員も自分の専門を活かしながら、授業全体が一方的に偏らないように心がけています。 授業を作る中で特に重視しているのがリーディングです。複数の分野からテキストを集め、特定の専攻に閉じない、学際的な視点を持った資料を用意します。もちろん、必要に応じて特定分野に即したものを選ぶこともありますが、基本的には異なる学問の交差点を意識しています。 リベラルアーツの教員としてのやりがい 正直なところ、リーディングを設計する作業は、私にとってこの仕事の中で最も好きな部分の一つです。教育者としてモジュールを設計するのは非常にやりがいがありますし、リベラルアーツだからこそ挑戦的でもあります。そして、普段は読まないような研究に触れられたり、一緒に教える同僚から専門的な知識を学べたりするのも、大きな魅力です。教員として、この学位プログラム全体は本当にやりがいのあるものです。 教員として学生を見てきた中で特に印象的なのは、学生が最初はこれを受けたいというモジュールのリストを持ってきても、卒業する時にはそのリストの中のモジュールを結局一つもやらなかったというケースですね。その間に自分の情熱を育てたり、新しい興味を見つけたりするんです。 リベラルアーツの一番大事な点はそこにあると思います。自分は何を知っているのか、その知識がどう変化していくのかを学ぶことができるんです。だから本当にやりがいがあります。それぞれの学生がこれまで辿ってきた学びのお祝いとなる卒業式は私の大好きな日です。 キングスカレッジロンドンのリベラルアーツの未来 Yuki 先生自身、このキングスカレッジロンドンでのリベラルアーツの将来はどんなものになっていくと思いますか? 学生がより多くの分野を学ぶ機会を持てるように、様々な経路を開いて行きたいと思います。 特に今力を入れているのは大学院レベルでの発展です。現在、私たちは新しいリベラルアーツの修士(MA)課程を設計中ですが、そもそも「リベラルアーツの修士課程」とは何か、それはどうあるべきかという課題に直面しています。 修士課程は通常、学部課程より専門分野を絞っています。例えば映画を学び、修士課程でアニメーションや個別のジャンルを研究する、といった具合です。でも私たちは大学院レベルでそれをそのまま踏襲するつもりはありません。学際的な人文系として、幅広さを維持しつつ、学部課程の単純な再現にはならないようにしています。 つまり、「リベラルアーツのMAとは何か」「何を学生に訓練させるのか」「学部課程とどう違うのか」を真剣に考えながら設計しているんです。 もちろん、修士課程ができれば、その数年後には博士(PhD)課程の設立も考えていくと思います。MAについて今はあまり詳しく話せませんが、数年以内には形になると思います。そして、学部でリベラルアーツを楽しんだ学生が、そのまま修士課程に進めるような道も提供したいと思っています。キングスでのリベラルアーツの変化というものは、そこから生まれると思います。 リベラルアーツを志す人たちへ Yuki それは楽しみですね!最後にどのような人たちにこのリベラルアーツが向いていると思うか、もしイギリスでリベラルアーツを勉強することを目指している人たちに何かメッセージがあったらお願いします。 まず、自分の知的好奇心に従うことはいつでも大事だと思います。もし興味を持っているものが一つの学問分野に収まりきらないなら、リベラルアーツ課程はまさにあなたのために作られていると言えます。 この学位は、Major(専攻)以外で厳密に決めなければならない部分は少なく、柔軟性が組み込まれています。もちろん、留学生にとっても同じことが言えます。1学期や1年間の留学などを通じて、様々な知的環境で学ぶことができ、異なる専門性や知識に触れることができます。 特定の分野の内容ももちろん学びますが、それと同時に「学ぶとはどういうことか」「学生であるとはどういうことか」を学ぶ機会にもなります。 自分の学位をどう組み立てるかを振り返ったり、大学という場を通して知識がどう生み出されるのかを理解したりするんです。私たちはモジュールやシラバス、リーディングリストが、学生にとって単に受け取って学ぶだけでなく、そこから自分で問いを立てて探究できるものにしているんです。だから特定の学問分野に収まる興味関心がない学生にとっても、リベラルアーツはとても適しています。 それに加えて、イギリスに来て異なる教育制度の中で学び、異なる専門性を持つ人たちから学ぶことができるのも大きな魅力です。そして、そうした学びを通じて、あなたもまた他の人に何かを教えることができる。そうしたグローバルな文化体験の質というものは重要で、まさに異なる専門性や世界の様々な地域から人々を集めて学ぶことを目的としています。 Yuki ありがとうございました! https://passport-to.com/articles/34/ さらに前回の記事はこちら↓ https://passport-to.com/articles/22/ King's College Londonについて詳しく知りたい人はこちら↓ https://jp.education-moi.com/article-52-kcl

学生としてヨーロッパを旅行するなら知っておきたいこと【イギリス大学留学】

こんにちは!ユニバーシティカレッジロンドン(UCL)で物理学を専攻しているAyatoです。 この記事では、学生としてヨーロッパを旅行する時に知っておきたいことについてまとめています!有益な情報を盛りだくさん載せていますのでぜひ読んでいってください! イギリス留学中の旅行のススメ エディンバラ城 Royal Mile(ロイヤル・マイル) Arthur's Seat(アーサーズシート) さて、皆さんは日本から14時間もかけて(あるいはトランジットの場合は1日かかることもあるでしょう)ヨーロッパに来て勉強をしています。学生の本分は勉強ですから、しっかりと学ぶことに時間を割くことは大前提ですが、息抜きをすることも大切です。 勉強の合間に息抜きしましょう 古代ローマのストア派哲学者として有名なセネカでさえ、リフレッシュの重要性について以下のように説いています。 精神には休養が必要であり、絶えず緊張し続けると、精神の飛翔を妨げるルキウス・アンナエウス・セネカ 海外大学で学ぶと高プレッシャーに晒されることは珍しくありませんが、せっかくヨーロッパにいるのですからその機会を最大限に活用しましょう。 学生のうちにヨーロッパ旅行をしておくべき理由 なぜヨーロッパ旅行をした方が良いのかは、卒業後日本からヨーロッパに来ることの難しさを考えると明らかです。フルタイムの仕事が始まると20日間の有給休暇があるとはいえ、体調を立て直すために有給休暇を使ったりするとなかなか大旅行に行くことはできません。仮に時間はなんとか作れるとして、移動にかかる時間とコストを考えるとやはり働き始めてからヨーロッパ旅行に来るのは難しいです。 スコットランド国立博物館(エディンバラ) グラスゴー大聖堂 また、ヨーロッパにいる間と比べると、日本から来るには時間もコストも10倍くらいかかります。ユーロスターなど陸路を使って複数の国を横断するのは時間をふんだんに使える時期でないと難しいでしょう。移動距離が長いと、消費体力が大きくなります。歳をとると使える体力が減り、その埋め合わせをするために高額でハイクオリティな交通手段を使うと、コストも高くなるわけです。 つまり、まさにいま地理的に近いヨーロッパに行っておくことが、人生トータルで見た時に、最小限の投資で最大の経験を得ることにつながるわけです。 ただ、なんらかの理由でそれができなくても、私は別に良いと思っています。それは、本業が学業ということと、絶対にこうであるということはないと考えているからです。また転勤でヨーロッパに来るかもしれないし、出張もあるかもしれないからです。 倹約旅行?豪勢な旅行? 学生としてのヒントを書くとしたので、倹約旅行のヒントをいろいろ書いてもいいのですが、なんでもかんでも安ければ良いというのは違うと思います。そのため、お金を使わない旅行と使う旅行の二つを対比させ、両面を吟味した上で倹約旅行をするならこういうことをすると良いというのを紹介する形にします。 アテネ国立考古学博物館にあるゼウスの頭部像 パルテノン神殿への道(ギリシャ) 倹約旅行 さて、まずお金を使わない方です。予算が少ないからなのか、貯金したいからなのか、お金を使わない理由は置いておきましょう。 メリット このスタンスの良いところは、お金を使わないので、旅行の回数そのものを増やせることでしょう。また、自分がバイトなどで稼いだお金だけで行けるというのも良いですね。さらに、あらゆる工夫とリサーチが求められるので、一種のプロジェクト管理を経験することができます。これはそれなりに達成感があります。また、気力と体力もある時期でないと実行は難しいでしょう。 デメリット デメリットは、リスクが大きいことです。金銭的リスクは逆説的ですが、完璧な人間はいないという前提に基づけば真です。例えば、安い交通手段は定刻通りである信頼度が低かったり、預け荷物は別料金というように料金に含まれない事項があったりします。そのため、余裕を持った行動が重要になり、時間をロスする前提で動かなければなりません。 安全性のリスクとしては主に窃盗が挙げられます。ホステルに泊まると、部屋をシェアすることになりますので、寝ている時などに私物を盗まれる可能性があります。また、会社が人件費にお金をかけていないとなれば、研修がしっかりとなされておらず、雑な運転や対応で安心・安全を脅かすリスクがあります。 ギリシャのパルテノン神殿 スルジ山からドブロブニクを一望(クロアチア) 豪勢旅行 次に、豪勢な旅行ですが、基本的に倹約旅行であげたような倹約によるデメリットはないと考えて良いでしょう。 メリット 良いことは、様々な経験が安心して効率よくできることに尽きます。高級なレストランで一流の地酒を飲んだりして至福のひとときを過ごせます。素晴らしい顧客対応とフルフラットがある航空機、バスタブとコンチネンタルブレックファスト付きホテルは心の安らぎを与えてくれます。移動時間が「耐える時間」になるのか「休息の時間」になるのかはお金を払うかどうかです。 また、物、サービスの価値を見極める目も養えます。予算のことを考えないで判断を行うので、本当にこの対象に自分の期待する価値があり、相応しい額面であるかを精査することになります。その結果高い買い物をすることになっても、欲しいもの、価値のあるものを買っていますから勿体無いとは感じないわけです。 一人旅?みんなで旅行? 次に、単独か団体かで違いを見ていきましょう。これらの情報が皆さんの意思決定に役立てば良いなと思います。 一人旅 メリット 単独のメリットは圧倒的になんでも自分で決められることです。どこで食べるかを疲れている時に揉めることもないし、どこに行きたいかを話すこともありません。自分の食べたいもの行きたいところやりたいことだけに自分の持つエネルギーとお金を割くことができます。 デメリット デメリットは、全て自分で調べるのが大変なことです。特にリスクヘッジは自分だけだと気づかないこともあったりします。ですからあまり気が休まらないかもしれません。あとは、1人は少し寂しいかもしれないですね。独身貴族と考えればめちゃくちゃ充実していて楽しいですが。 クロアチアにあった謎の像、この上に立てると健康になれるとか クロアチアで見つけた猫のおきもの 魔女の宅急便の舞台(ドブロブニク) 団体旅行 メリット 団体の圧倒的メリットは一人当たりのリサーチの負担が軽いことです。お互いに情報提供しながら進めていけるので、とても楽です。何かあっても、3人以上いればなんとか解決できることがほとんどです。1人でも解決するしかありませんが、1人と2人とでは精神的な安定度が違いますよね。仮にも何があるかわからない海外にいるわけですから。また、みんなとわいわいおしゃべりしながら時間を過ごせるので、なんでもない移動時間も楽しい旅行の思い出になります。 デメリット デメリットは、単独旅行の裏返しで、なんでも自分で決めるわけには行きません。 学生向け【ヨーロッパ旅行】旅程の立て方 実際に旅行の予定を立てる時には以下の順番で話を進めるとスムーズです。理由は優先順位付けをするとこうなるからです。ホテルまでは、前もって十分事前に行うことをお勧めします。それ以降は、直前でもできることなので優先順位は低めです。旅行前の時間がある時にできればOKでしょう。 目的は人それぞれ 旅行では、皆お目当てが異なります。それぞれがある程度楽しめるように各人が何を大事だと考えているかしっかりと話しておきましょう。1人なら、何を目的にするか明確にしておきましょう。これが、今後の意思決定において優先順位を決定する軸になります。例えば、観光名所周りをとっても、そこに行ってとりあえずさっさと見ていくのが大事な人もいれば、じっくりと鑑賞、理解したい人もいます。他にも食事やショッピング、会話、様々ですね。 スイスにある欧州原子核研究機構(CERN) スイスにある欧州原子核研究機構(CERN) 航空券 おおかた一緒に行く人が決まるあるいは行ってやりたいことが決まったら、まずは航空券です。とりあえずこれを抑えれば、行って帰ってくることが確定します。日程調整をして、これを終えればあとは目的も含めて細かいことを詰めていくだけです。1ヶ月前くらいの予約で、オフピークシーズンなら相場は片道40ポンドからくらいでしょう。安いですね。 格安航空(LCC)のeasyJet, Ryanair, Wizz Airはよく利用させていただいています。 宿泊先 Trip.comというアプリを使えば航空券とホテルを一緒に予約できます。個人的にこれはよく使います。Booking.comなども使い勝手が良いです。大手旅行会社に頼めば全てやってくれますが、その分割高ですね。今はもう全てオンラインで自分で予約できるようになっているので、とても安くハイクオリティな旅を設計できると思います。 ホテルには大きく分けて2種類あります。通常の個室ホテルと共同部屋のホステルと呼ばれる宿舎です。友達がヨーロッパにいるならその人の家に泊めてもらうのもできると思いますが……。 ホテル or ホステル 個室ホテルは、一泊1〜3万円程度ですが、ホステルだと部屋、トイレ、シャワーが共同なので一泊3000円程度で済みます。部屋は大体4人から10人でシェアです。外を歩き回って寝るだけならホテルそのものが高級である必要はないので、ホステルでも用を満たすという考え方もあります。 実際何回かお世話になりましたが外回りが充実していると本当に寝るだけなのであまり不便しないです。一人旅行だと寂しさも少し紛れますしね。結構友達っぽい会話もできます。 ただ、素性を知らない人間であることには変わりないので、セキュリティ対策は自分でしっかりとする必要があります。例えば、寝る時はパスポート財布の入った鞄を布団に入れて寝るとか、ロッカーがあるホステルなら南京錠を持参して、あるいは購入して、安全に保管しておくなどです。ロッカーがないホステルもあるので、その場合は荷物をまとめてロックするなどの工夫をすると安心です。 バルセロナにあるサグラダ・ファミリア内部 バルセロナにあるサグラダ・ファミリア内部 追加料金を払ってでも、バスタブでリラックスしたいと感じるであろうくらい疲れる旅程を立てている場合はホテルにしましょう。リラックスするということにお金を払っているわけですから、お金の無駄ではないでしょう。 また、ホステルでは食事をするところがついていない場合もあることに注意しましょう。さらにど田舎だと外に出ても本当に食べるところがなかったりするので、空港などで事前に購入しておくことが必要です。 交通手段 ここからは割と旅行直前でリサーチしても間に合うところではありますが、ある程度は宿泊先を確保する時に調べていることでしょう。 調べるべきなのは、空港からホテルまでの交通手段と観光先との交通手段です。特に前者は時間帯によって利用できないこともあるので注意しましょう。深夜電車は走っていないことが多いです。電車、空港専用シャトルバス、一般バス、トラムなどが一般的な交通手段です。 乗り方はインターネットで事前に調べることをお勧めします。ヨーロッパの都市だとバス、トラムは日パスを買うことで回れるところが多い印象ですが、国によって制度がかなり違うのでリサーチ必須です。万が一乗れない時も、Uberのアプリをダウンロードしておいて、最大限活用しましょう。割高ではありますが、信頼度利便性共に素晴らしいです。深夜早朝でも来てくれます。 インターネット 渡航先でインターネットが使えることは重要です。見知らぬ土地でその場のリサーチをする機会が多いからです。地図は前もってダウンロードしておけば、GPSでインターネットなしでも現在位置がわかりますが、不便ではあります。 インターネットに接続する方法は三つあります。一つは日本の回線をローミングで使うこと。信頼度が高い分、少量のデータを高額で使うことになります。二つ目はWi-Fiを使うことです。セキュリティリスクが多少あるのと、速度が限られ、使える場所も限られます。三つ目は、eSIMを事前に購入しておくことです。安く、大量のデータを使えるのでもっともお勧めです。 個人的に導入が簡単だと思ったのはAiralo というアプリです。デメリットは処理が複雑かもしれないことです。ITに詳しくない人にお勧めする時は代わりにセットしてあげるのが良いです。ただ、説明は書いてあるので書いてある通りにダウンロードすれば使えるようになります。使えなくても設定条件を変えて試行錯誤すると使えるようになると思います。笑 学生のヨーロッパ旅行で知っておくと得なこと 予約は早めに 航空券、ホテルと英国国内の電車チケットは事前にオンラインで購入したすることができ、1ヶ月前に購入しておけば、10分の1程度の価格に抑えることができます。行く日にちが決まったらその二つはしっかり押さえておきましょう。 Trainlineというアプリで電車を予約すると安いです。 National railwayの遅延に対する補償 National railway(国鉄)は遅延することがあります。遅延時間に応じて補償金が出ます。インターネット検索で補償を請求するサイトが出てきますので、そこから一定額の払い戻しを受けることができます。 チップ 旅行先でレストランに入った時に、チップを支払うことがほとんどです。およそ支払い代金の13%程度が上乗せされて請求されますので、さらに払う必要はありません。レシートにはservice chargeと書いてあります。 ちなみに、このチップは言えばなしにすることもできますが、失礼な印象になるかもしれません。 アメリカだとチップなしでは従業員の生活が成り立たないという話を聞いたことがありますし、チップは文化経済的に重要なものだと思います。 ハギス ムール貝の酒煮 Oyster card(オイスターカード)など 学生の場合16-25 Railcardあるいは18+ Student Oyster photocardに登録すると、3割引になります。活用しましょう。 結局人伝の情報が強い 多くの話は人から人伝で聞いたことが多いです。友達とコミュニケーションをして、良い情報を聞きましょう。このウェブサイトに辿り着いている人は検索も上手なので人と会った時にも良い質問をしていると思いますが。 思わぬ損失を防ぐために 航空券のオンラインチェックイン 格安航空会社の場合は、オンラインでチェックインできることがほとんどです。逆にオンラインでやらないとカウンターでチェックインする時に手数料を取られることがあります。これが高くて、1人1万円です。馬鹿馬鹿しいのでオンラインで済ませましょう。 荷物上限を守る 格安航空会社の場合、荷物制限が厳しめに設定されているところが多いです。チェックされる時とされない時がありますが、上限オーバーしたら多額な追加料金を払う羽目になります。そうならないように事前に上限を確認し、それを超えないようにパッキングしましょう。衣類は圧縮袋に入れるとかなり容量が減りますのでお勧めです。 総括――ヨーロッパ旅行をシミュレーションする 迷いなく旅を進めるには頭とメモでシミュレーションをしておくことが大事です。今まで書いてきたことの半分はこれはどうするのが最善なのだろうという問いを立てることから始まっています。とは言いつつも、どんなに緻密なプランにも予想外のことは起こりえます。 その場所に行ったことがある人に便利な交通手段を聞いておくのが良いです。予想外のことが起こった時は、最終手段としてUberタクシーを使いましょう。高くても確実です。 ここまで読んでくれてありがとうございました。良いヨーロッパライフを過ごしましょう! https://passport-to.com/articles/33/ https://passport-to.com/articles/26/

UCL/ユニバーシティカレッジロンドン~日英のつながり~

こんにちは!UCL(ユニバーシティカレッジロンドン)で物理を勉強しているAyatoです!今日は、UCLが実は日本ととても深い縁があるという話です。日本からUCLに来られる方は必読ですよ! UCL/ユニバーシティカレッジロンドンと日本の歴史 今から遡ること約2世紀。1863年に長州藩の5人の若手藩士が英国で留学しました。この時に彼らが訪れたのがUCLでした。一行は合わせて長州五傑と呼ばれており、その中には初代内閣総理大臣である伊藤博文がいました。 ユニバーシティカレッジロンドン構内にある日本人留学生を記念する石碑 他のメンバーもあとで紹介しますが、帰国後は皆、日本の時代を一歩先に進めることに貢献しました。そのような先輩たちがいるのがUCLです。 なぜUCL/ユニバーシティカレッジロンドンか なぜ彼らはUniversity of Oxford(オックスフォード大学)やUniversity of Cambridge(ケンブリッジ大学)ではなく、UCLを選んだのでしょうか?実は当時、他の大学は異教徒という理由で彼らを受け入れませんでした。しかし、UCLだけは「学ぶ意欲のある者には平等に門戸を開く」という革新的な精神を持っていたのです。このDiversity & Inclusion(多様性と包摂)の精神は、今のUCLにも色濃く受け継がれています。 見つかれば死罪だった渡航 今でこそパスポートがあれば誰でも行けますが、当時は鎖国中。見つかれば死罪です。彼らの密航はまさに「命懸け」でした。現代は十数時間のフライトでたどり着けますが、当時は陸海を乗り継ぎ、半年もかかりました。 彼らは髷(まげ)を切り落とし、刀を置き、決死の覚悟で船に乗り込みました。そこまでして「日本の未来を変える知見」を求めた彼らのハングリー精神には、同じ留学生として背筋が伸びる思いです。 Choshu Five(長州五傑) 写真をご覧ください。写っているのは長州からイギリスへ留学した学生たちです。 UCL留学した長州ファイブ(Wikipediaより) 遠藤謹助――外国に頼らない造幣技術を確立 左上に写っている人物は、遠藤謹助(えんどう・きんすけ)です。彼は帰国後造幣局で働き、日本人だけで貨幣を製造できる技術を確立しました。それまで貨幣の製造は外国人技術者に頼っていましたが、その状況を変えたことから、遠藤は「造幣の父」と呼ばれています。 また、大阪の名所である「桜の通り抜け」を考案した人物でもあります。日本を象徴する桜で人々を楽しませようとしたその姿勢には、強い感銘を受けます。なお、UCLのJapanese Gardenには、 Choshu Fiveによる日英友好関係の象徴として、桜の木が植えられています。 井上勝――日本の鉄道事業を推進 中央奥に写っている人物は、野村弥吉(のむら・やきち)です。彼はのちに井上勝(いのうえ・まさる)と名乗ります。 井上勝はUCLに入学・卒業し、当時世界最先端であった鉱山学や鉄道技術を体系的に学びました。特に、鉄道を国家インフラとして整備するという考え方そのものをイギリスで身につけました。帰国後、彼は日本の鉄道事業を主導し、路線整備や技術者育成を進めました。 その結果、日本各地に鉄道網が広がり、人と物の移動が飛躍的に効率化されました。私たちが日常的に利用している鉄道は、まさに彼の仕事の延長線上にあります。この功績から、井上勝は「鉄道の父」と呼ばれています。 伊藤博文――初代内閣総理大臣 右奥に写っている人物は、伊藤博文(いとう・ひろぶみ)です。彼は後に、日本で初めて内閣制度を導入し、初代内閣総理大臣となった人物です。また、大日本帝国憲法の起草を主導し、日本を近代国家として制度面から形作りました。 伊藤もまた、若き日にイギリスへ渡り、UCLで学んだ一人です。議会政治や法制度が社会をどのように支えているのかを、当時世界最先端であった英国の社会から直接吸収しました。この経験が、帰国後に日本独自の憲法と近代的な国家運営を構想する大きな土台となりました。 今や当たり前のようにある「内閣」「首相」「憲法に基づく政治」は、伊藤が築いた仕組みの延長線上にあります。UCLで得た知見が、まさに日本の政治制度として今も生き続けているのです。 山尾庸三――工学教育の先駆者 右手前に写っている人物は山尾庸三(やまお・ようぞう)です。彼は後に、日本初の本格的な工学教育機関を立ち上げ、現在の東京大学工学部の礎を築いた人物です。その功績から、「工学の父」と呼ばれています。 山尾はイギリス留学中にUCLを訪れ、当時最先端であった実践的な工学教育に触れました。理論だけでなく、社会の課題を技術で解決するという英国の工学思想は、彼の進路を決定づける重要な経験となったそうで、帰国後、近代日本に必要不可欠であった技術者の育成に力を注ぎました。鉄道、造船、建築など、日本の産業基盤を支える技術は、彼が築いた教育制度から多く生まれています。 現代の私たちが安全で便利な社会インフラを享受できている背景には、山尾の先見的な取り組みがあったのですね。個人的な考えですが、1人で全てのインフラを実装することはできないので、まずしっかりと学び、それを教育という形で社会実装に貢献するというのはとても筋が通っているように感じました。 井上馨――日本の外交基盤を確立 最後に、左下に写っている人物は、井上馨(いのうえ・かおる)です。彼は帰国後、外務大臣などの要職を歴任し、日本の近代外交を切り開いた人物として知られています。井上馨もまた、若くしてイギリスへ渡り、UCLを訪れた一人です。異なる文化や価値観が共存するロンドンでの経験を通して、彼は「交渉とは力だけでなく、理解と信頼の積み重ねである」という外交の本質を学びました。 この国際的な視点は、帰国後の外交交渉に大きく活かされました。彼は、不平等条約の改正に向けた交渉や、欧米諸国との関係構築に尽力しました。私たちが今日、国際社会の中で一国家として対等に関係を築けている背景には、井上馨が築いた外交の基盤があります。UCLで培われた国際感覚は、日本の外交の原点の一つとなっているのですね。 UCL/ユニバーシティカレッジロンドンに刻まれた彼らの名前 彼らの名前は、UCLのStudent CentreとMain Quadの間にあるJapanese Gardenに置かれた石碑に刻まれています。外部の方でも見学することができますので、ご興味のある方は英国で日本との強いつながりを感じられてはいかがでしょうか。 ユニバーシティカレッジロンドンのJapanese Garden 図書館の隣にあるので、個人的にはよく通る場所です。その度に今の日本を作り上げた先人たちの努力に想いを馳せ、元気をもらっています。 現在のUCLと日本の関係 UCLと日本の関係は、長州ファイブの時代から160年以上続き、現在も教育や研究の場で具体的な形を持っています。歴史を踏まえながら、今のUCLと日本の関わりをいくつかご紹介します。 学術面で日英パートナーシップ強化の取り組み UCLは日本との関係を戦略的に重視し、大阪大学や東京大学、理化学研究所(理研)、JAXAなどとの共同研究や学生交流を活発に進めています。公式情報によると、日本の研究機関と800本近い共同論文を毎年発表しており、学術面でも強い結びつきがあることが分かります。 特に東北大学とは大規模なマッチングファンドを通じて両大学の共同研究や交流活動を支援しています。毎年公募で一年単位のプロジェクトを6つ採択し、1件当たり最大約210万円の資金を提供するというものです。 また、毎年のようにUCLの副学長が日本を訪問し、大学や研究機関との研究連携をさらに深めました。 災害科学や脳科学、気候変動の分野での共同研究が話題になり、実際に現地の施設や学生と交流しながら、未来に向けた協働の可能性を確認しました。さらに長州ファイブ受入から160年の節目であった2023年にはUCLの学長自ら来日し、大阪大学や東京大学などへの訪問や祝賀イベントに参加しました。 Japanese Gardenと日本大使出席の記念式典 UCLキャンパス内のJapanese Gardenでは、桜の木を中心に日英関係を象徴する庭園があります。日本庭園記念式典には在英国日本大使も出席し、教育・文化の交流の大切さを改めて示しました。桜を通じて、過去と今の日英のつながりを感じられる場所です。 日本で広がるUCL同窓会 国内ではUCL卒業生の同窓会が非常に活発で、研究やビジネス、行政などさまざまな分野でネットワークが広がっています。留学での学びは帰国後も続き、次世代の学生たちにもつながる環境が整っています。 このように、UCLと日本の関係は歴史に支えられながらも、現在進行形で具体的な協力や交流を生んでいます。キャンパスで学ぶ私たち・これから学ぶ皆さんも、きっとこうしたつながりの中で新しい価値やアイデアを見つけることができるでしょう。 まとめ 160年前、先人たちは「日本の未来」を変えるために、命懸けで海を渡りました。 時代は変わり、今では飛行機でひとっ飛びの距離になりましたが、「未知の世界に飛び込み、新しい価値観を学ぶ」という留学の本質は、いつの時代も変わりません。 UCLのキャンパスを歩いていると、ふと思います。 かつて彼らがここから日本を大きく変えたように、ここにいる一人一人が今、あるいはこれからUCLを目指すあなたも、将来何かを大きく変える一人になるのかもしれない、と。 歴史は教科書の中だけにあるのではありません。これからの歴史を作るのは、今を生きる私たち自身です。 次は、あなたがこのUCLで、新しい歴史の1ページを書き始めてみませんか? ロンドンのキャンパスで、お待ちしています! https://passport-to.com/articles/19/ https://passport-to.com/articles/35/

日本の大学からマンチェスター大学へ交換留学し卒業研究に挑戦!

こんにちは!Midoriです。私は昨年の9月から今年の6月までの約10カ月間、イギリスのThe University of Manchester(マンチェスター大学)に交換留学しました。一般的な交換留学と異なり、授業を履修して単位を取得するのではなく、Final Year Project(卒業研究)に取り組みました。 https://jp.education-moi.com/article-62-manchester マンチェスター大学の交換留学で過ごした1年間 マンチェスター大学のキャンパス付近の街の様子 大学3年の秋からの約1年間をマンチェスターで過ごしました。交換留学生といっても他の正規学生と変わらず、同じ学生証を持って、同じように授業を受けたり、大学の施設を利用したり、大学の寮で暮らしたりします。また、授業料はホーム大学に支払えばいいのもメリットの一つです。イギリスの学費はとても高く、日本の国立大学の10倍以上かかるのでとても払えません。 交換留学先はFaculty of Biology, Medicine and Health(生物、医学、健康学部)です。留学中はSt Anselm Hallという寮に入り、寮生活も満喫しました。 マンチェスター大学紹介 マンチェスター大学はサッカーや音楽で有名なマンチェスター市にあり、200年以上の歴史を持つ伝統校です。また、これまで26人のノーベル賞受賞者を輩出してきて、高い水準の研究が行われています。 マンチェスター大学 マンチェスター市自体が非常に多様性の高いところで、イギリス人の中にもいろいろなルーツを持つ人がいます。そして大学には世界各地から留学生が集まるため、本当に多様な価値観に触れる日々でした。 寮生活も研究生活も、バックグラウンドが全く異なる人と接していくうちに、いろいろな考え方に触れ、生き方の多様性を感じました。 授業を履修せず、研究三昧の日々 私は授業を履修せず、毎日研究室にこもってひたすら実験をしたり、文献を読んだりしていました。 マンチェスター大学の神経科学は最先端分野の一つで、世界トップレベルの研究者が日々研究しています。私も神経科学の研究室に入りました。研究室自体はこぢんまりとしていて、教授1人と私を含めた学部・大学院生が7人いました。 日本と大学と異なる研究生活 日本の大学と違って、マンチェスター大学の研究室にはコアタイムがなかったです。コアタイムとは主に分子細胞系の研究室にある制度で、「平日の朝9時から17時までは必ず研究室にいないといけない」という決まりです。時間帯は研究室によって異なりますが、どの研究室も大体同じような時間帯を指定します。コアタイム中は自分の研究を進めたり、先生の指導を受けたり、研究室の雑務をやったりします。 私の研究室にはそういう制度がなく、好きな時間に行って、好きな時間に帰っていいことになっていました。といってもみんな朝に来て、みっちり研究して夕方に帰ります。 細胞生物学系の研究室が使っていた実験室 もう一つ日本では考えられないのが、研究棟には平日の朝8時から18時までしか入れないことです。つまり研究はこの時間内で進めなければならず、深夜まで実験をしているということはあり得ません。ただこれは学部生だけに適応されていて、教員や大学院生はそれ以外の時間帯にも入れますが、そうする人はほぼいません。 研究棟の出入り時には学生証をかざして回転ドアを通過します。私はよく18時ギリギリまで実験していて、1分前に猛ダッシュしていました。18時に間に合わなくて出られなくなることがたまにありました。そういう時は扉の中から叫んで、帰宅寸前の受付スタッフを呼び留めて開けてもらいます。 充実した寮生活 交換留学生は希望者全員が寮に入れるようになっていました。私はSt Anselm Hallという100年以上の歴史がある寮に入りました。毎日朝食と夕食が提供され、食事の時間になると食堂に行きました。 その他、共用部分がとても充実しているところがすごく良かったです。卓球室、コモンルーム(多目的室)、図書室、ピアノ室など、さまざまな施設があり、住民であれば誰でも使えます。 食事の時間と共用部屋で他の学生と交流する機会が多く、寮内で友達がたくさんできました。また、寮内でイベントを開催したり、卓球やサッカー大会があったりと、仲を深めるチャンスもたくさんあります。 St Anselm Hallの部屋 部屋はかなり広く、カーペットが敷かれています。キッチン、シャワーとトイレが共用で、洗濯機と乾燥機も共用でした。寮費は光熱水道・食費込みで月15万円です。それまで暮らしていた大学宿舎は月1.5万でした。光熱水道・食費込みを考慮しても10倍も高くてびっくりしました。 寮は研究室から徒歩30分ほどかかるところにあります。バスを利用すれば10分ほどですが、私は毎日歩いて行きました。 マンチェスター大学から帰国 今年の6月に帰国しました。マンチェスター大学から帰ってきてから既に半年以上が経過しましたが、今でも当時のことを思い出し、とても懐かしいです。 イギリスという不思議な国に滞在したのはわずか10カ月ですが、その間に感じたことは多く、勉強になったこともたくさんあります。いつか機会があったらまた行きたいと思います。 帰国するフライトの窓から見えた景色 私の経歴: マレーシアで過ごした15年間 家族の都合で幼少期からマレーシアで暮らしました。マレーシアは日本と全く異なる文化背景があり、私自身も日本に来てから感じた違いが多くあります。そのため、主に教育に関係する現地での生活をお伝えしたいと思います。 私は日本で生まれましたが、その後すぐにマレーシアに移住し、15歳までそこで暮らしていました。マレーシアの首都クアラルンプール(KL)は西マレーシアにありますが、私はKLがあるマレー半島ではなく海を挟んで東のボルネオ島にあるサバ州に住んでいました。 https://tpcljp.com/service/sabah/ インターナショナルスクールではなく、現地の学校に通っていました。マレーシアは多民族国家なので、学校もマレー系、中華系、タミル系などいろいろあります。 華人小学校の生活 私は中華系の小学校に通いました。中華系の人(華人)の生徒が多いですが、マレー系やパキスタン系などもクラスに数人いました。 校内の公用語は中国語です。華人でない生徒同士はたまにマレー語や英語で話しますが、先生に見つかったら注意されていました。しかしマレー語と英語の授業では逆に中国語が禁止され、その教科の言語しか話してはいけないというルールがありました。 同時に3言語を習得 小学校で勉強する科目は国語(マレー語)、中国語、英語、算数、理科、社会、道徳(ムスリムの生徒はイスラム教義)、コンピュータ、体育です。今考えると3つの言語をネイティブレベルで同時に勉強するのはクレイジーに思えますが、現地では当たり前すぎて当時は何とも思わなかったです。 1時限は30分で、授業は朝7時から始まり、13時ごろに終わると記憶しています。その後は基本的に帰宅しますが、課外活動がある日は弁当を食べるか食堂で食べてから行きました。給食はありません。その代わり、食堂はかなり充実していて、麺類やご飯類、パンなどさまざまなメニューがありました。 学校の名誉がかかった全国統一検定試験 2021年に廃止されたようですが、私がいた頃は6年生の終わりに全国統一検定試験がありました。当時は7科目を受けなければならず、学校の名誉をかけた戦いと言っていいくらい全校を挙げて対策していました。7科目とは国語(マレー語)のリーディングとライティング、中国語のリーディングとライティング、英語、理科、算数です。 5年生の後半からこの試験に向けた対策が始まり、生徒全員に目標が定められました。成績は最高評価のAから不合格のEまでの5段階あります。私の目標は全てが最高評価である7Aでしたが、残念ながら達成できず結果は6A1Bでした。 この試験で優秀な成績を修めることは大変名誉なことであり、5A以上あれば新聞に写真付きで載ります。また、学校の入口から一番近くて目立つ掲示板にも写真付きで掲示されます。 この試験は個人戦だけでなく、団体戦でもあります。科目ごとの平均点や合格率(評価がA~Dの人の割合)が出され、それも新聞に載ります。そのため、成績発表の時期になると新聞にはいろんな学校の成績と優秀者の写真が掲載されます。日本では考えられないですね。 独立中学校に進学 中学校は公立学校ではなく、独立中学校に通っていました。日本では聞かない言葉ですが、これにはマレーシア国内の複雑な事情に関係します。簡単に言うとマレーシア政府に認められていないカリキュラム(中学・高校卒業資格)を提供している華人学校のことです(最近は一部の州で認められました)。 ただその非公認の資格だけだとさすがに今後マレーシア国内で就職や進学などをする人にとって不利なので、マレーシア教育省のカリキュラムも実施しています。2種類のカリキュラムを同時に実施しているので他の中学と比べて勉強量が多いです。 政府のカリキュラムで中学は5年間(Form 1~Form 5)で、3年目と5年目に全国統一試験があります。その後、A-levelあるいはSTPM(A-levelのマレーシア版みたいなもの)を履修してから大学に進学する人がほとんどです。 マレーシア政府非公認の全国試験 独立中学校のカリキュラムは6年間で、3年目と6年目に全国の独立中学校生が対象の全国試験があります。前述の通りのこの全国試験は政府に認可されておらず、そこで優秀な成績を修めてもマレーシア国内では意味のないことです。当然その成績でマレーシアの大学を申請することはできません。しかし日本を含む海外大学には認められていますので、卒業生の多くは海外の大学に進学します。 マレーシアの華人は昔から国に独立中学校の卒業資格を承認するよう求めてきましたが、マレーシア政府が未だに認めないのは多民族国家ならではの難しさがあるからです。ここではあまり深掘りしませんが、気になる人はぜひ調べてみてください。 どのカリキュラムの全国試験も小学校の全国統一検定試験と同様に、学校を挙げて競い合っていました。そして同じように学校ごとに各科目の平均点や合格率、成績優秀者が新聞に掲載されていました。 https://jp.education-moi.com/boarding-schools/malaysia 高校から日本に戻り 私はその独立中学校を3年で中退し、日本に引っ越しました。日本に来てからは実家から近い公立高校に入学しました。高校は普通科で、卒業後はそのまま日本の大学に進学しました。 以上が私の経歴と交換留学歴でした。最後まで読んでいただきありがとうございました。 https://passport-to.com/interviews/4/ https://passport-to.com/interviews/13/ https://passport-to.com/interviews/15/

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