3月に入り、イギリスの大学や大学院から合否結果が届いてきたと思います。大学からオファー(合格通知)を受け取るといよいよ本格的な留学準備が始まります。入学までには多くの手続きがあり、スムーズに進めるためには計画的な準備が必要です。本記事では、オファーを受け取った後の具体的な準備プロセスについて、僕の経験を踏まえて詳しく解説していきます。
合格結果の確認と入学手続き

合格結果が届く時期は大学や学科によって異なり、ここは待つしかありません。僕は出願した5校のうち4校は2月初旬までに結果が届きましたが、第一志望の大学だけ3月までオファーが来ず、もどかしさを覚えました。遅くて7月ごろに結果が出る場合もあるそうなので、気長に待つことが大事だと思います。UCASのTrackシステムをこまめにチェックしましょう。
イギリスの大学からのオファーには、「条件付きオファー(Conditional Offer)」と「無条件オファー(Unconditional Offer)」の2種類があります。条件付きオファーは、IELTSスコアや最終成績の提出といった特定の条件を満たすことで合格となります。UCASで出願した全ての大学から合否が届いた後は、Firm Acceptance(第一希望)とInsurance Acceptance(第一希望に合格できなかった場合の第二希望)の大学とコースを選択します。第一希望の大学からUnconditional Offerをもらった場合はInsurance Acceptanceを選択する必要はありません。自分がどのタイプのオファーを受け取ったのかを確認し、条件付きオファーの場合は必要な手続きを早めに済ませることが大切です。通常、オファーの承諾期限が設定されているため、遅れないように注意しましょう。一部の大学では International Students(留学生)がオファーを承諾する際、デポジット(Deposit – 入学金)の支払いが必要です。この金額は大学によって異なりますが、£1,000~£5,000が一般的です。支払期限も設けられているため、期日を確認して早めに対応しましょう。
もし出願した全ての大学が不合格(Unsuccessful)だったとしても、結果をもらった後に追加で一つのコースに出願できる「エキストラ(Extra)」と定員に達していないコースに出願できる「クリアリング(Clearing)」というシステムがUCASにあります。Extraは2月末から7月初旬まで、Clearingは7月中旬から9月~10月ごろまで行われます。期待した結果が出なかった場合でも諦めずに他の大学やコースにトライしてみることも大事です。
学生ビザ(Student Visa)の申請
イギリスでの長期留学には学生ビザ(Student Visa)が必要です。申請にはいくつかの書類が必要で、その用意やビザ発行までに時間がかかります。とにかく早めの行動が大事です。
必要書類
CAS
大学からのオファーを承諾し、パスポートなどの書類を提出すると、「CAS(Confirmation of Acceptance for Studies)」という入学許可証が発行されます。CASはビザ申請に必須な書類で、入学証明となる番号(CASナンバー)が書かれています。発行には通常数週間かかりますので、余裕を持って手続きを進めましょう。
パスポート
パスポートの有効期間が留学期間をカバーしていることを確認して、期限が短い場合は事前に更新しておくことをお勧めします。パスポートは申請時に提出し、そこにビザが発給されることになります。見開き2ページ以上の余白ページがあることも確認しておきましょう。
過去のパスポート
過去10年間の渡航歴を聞かれた時、昔使っていたパスポートがあると便利です。ただし、トランジットで立ち寄り、滞在期間が1日未満だった国も渡航歴に含まれます。こういった場合はパスポートにその記録がない時があります。できるだけ正確な情報を書くことが推奨されているので、僕は法務省の出入国在留管理庁というところで自分の渡航歴に関する開示請求を行いました。500円程度で調べてもらえます。https://www.moj.go.jp/isa/publications/privacy/record.html
英語力の証明書
大学によってビザ申請時に英語力の証明を求めるところもあります。GCSEやIBなどのスコアで証明できる場合と、イギリス政府が認定するSELT(Secure English Language Test)の結果しか受け付けてくれない場合があります。このSELTはイギリスのビザ取得専用の英語力試験で、「IELTS for UKVI」や「Pearson PTE Academic UKVI」などがあります。普通のIELTSとは異なるもので、大学指定のスコアを満たすために改めて受験する必要があります。
申請料
申請時にはビザ申請料(£490)の支払いが必要となり、さらにIHS(Immigration Health Surcharge)という健康保険料(£776×コースの年数)も支払います。このIHSを支払うことで、イギリス滞在中にNHS(国民保健サービス)の医療を原則無料で受けることができます。
流れ
書類の準備ができたら、イギリス政府のUKVI(UK Visas and Immigration)の公式サイトから専用の申請フォームに情報を入力し、書類をオンラインで提出します。オンライン上の手続きが済んで、申請料及びIHSを支払うとVFS Globalのビザ申請センターの来館予約ができるようになります。日本には東京と大阪にビザ申請センターがあり、予約した日にパスポートを提出し、生体認証情(指紋と顔写真)を登録します。ビザの審査は通常3週間ほどかかり、終了しないとパスポートが返却されません。ビザはパスポートと共に返却され、ビザ申請センターで受け取るか、郵送してもらうか選べます。
審査開始後に財政能力証明書の提出を要求される場合があります。これは、イギリスでの生活費を十分にカバーできる資金があることを証明するためのもので、ロンドンの大学で勉強する場合は£12,492以上、ロンドン以外の場合は£10,224以上(授業料を除く)が必要とされます(ロンドンでの生活費: £1,438/月、ロンドン以外での生活費: £1,136/月: 9ヶ月分の生活費をカバーできる証明が必要) 。預金通帳や金融機関の取引明細書を英文に翻訳したものが必要なので、あらかじめ準備しておくとビザ申請がスムーズに進むでしょう。
より詳しい流れについては下のサイトに説明してあるので、確認してください。https://www.westminster.ac.uk/sites/default/public-files/general-documents/student-visa-application-guide-applying-from-outside-uk-v2.pdf
前述の通りビザの審査には通常3週間ほどかかると言われていますが、繁忙期にはそれ以上の時間がかかることもあります。ビザの発行が渡英日に間に合わずフライト日程を変更しなければいけなかったという友達が何人かいました。審査期間が多少長くなってもいいように、CASをもらい次第必要な書類を集めて早めに申請することが大事です。「ビザ申請ドットコム」や「IMMIGRATION.UK」といったビザ申請を代行してやってもらえるサービスがあり、書類の翻訳など自分でできるか不安があった僕は活用しました。必要な書類を揃えて代行者に提出するだけで、申請フォームの入力やビザ申請センターの予約など全部やってもらえます。
住居の確保
ビザ申請と並行して、イギリスでの住居を確保する必要があります。住まいの選択肢としては、大学が運営している大学寮、民間の学生寮、シェアハウスなどがあります。
大学寮・民間の学生寮
同じ大学の人と交流できる大学寮は、初めての留学にとって最も安全で便利な選択肢だと思います。特にロンドンなどの都市部では、民間の賃貸物件の家賃が高いため、大学寮を利用することでコストを抑えられます。僕は大学1年の時に大学寮で暮らして、2、3年の時は民間の学生寮で暮らしていました。民間の学生寮だと、ロンドン中の大学から学生が集まるので他大学生との交流が深まります。ただし、これらの寮は人気が高く、申込期限が早いため、オファーを受け取ったらすぐに申し込むことをお勧めします。早めに申し込みをしなかったせいで、キャンパスから遠い場所にあったり、家賃が高い寮しか残っていなかったりという話も友達から聞きます。
大学が寮の情報を発信しているし、部屋の予約ができるResidence(住居)のサイトやWebポータルにも情報があるので、そこのSNSなどに登録して最新情報をチェックしましょう。

シェアハウス
シェアハウスは費用を抑えつつ、学生のみならず現地の人々と交流できる点が魅力的です。ただし、契約詐欺や知らない人とシェアしなければいけないというリスクもありますので、信頼できるサイトを利用して物件を探し、可能であれば現地で内見してから契約を結ぶことが望ましいです。住居探しには、Rightmove(https://www.rightmove.co.uk/)やZoopla(https://www.zoopla.co.uk/)などの物件検索サイトが便利で、よく使われています。また、SpareRoom(https://www.spareroom.co.uk/)を利用すれば、ルームシェアの相手を見つけることもできます。
eVisaを申請する
返却されたパスポートに載っているビザはあくまで仮のEntry Clearance Visa(入国許可証)というもので、発行されてから90日まで有効です。正式なビザはeVisa(Online immigration status)という電子書類です。UKVIから送られてくる案内に従い、オンライン上でビザの申請番号やパスポート番号を登録して、アカウントを作成します。
イギリスに入国する際、パスポートに載っているビザだけでなくeVisaの提示が求められるケースもあるので渡航前に手続きを済ませておくといいでしょう。これまではBRP(Biometric Residence Permit)カードという物理的な書類だったのですが、2025年の1月からオンラインに置き換わりました。
今回紹介したプロセスの他にも航空券を予約したり、持ち物を準備したりするなど、渡英までにやっておく必要があることはたくさんあります。それらについてはまた別の記事で書きますので、楽しみにしていただければ幸いです。CASやビザの発行などには思っている以上に時間がかかるものもあります。留学生活がスムーズに始められるよう、計画的に準備を進め、安心してイギリスに渡航しましょう。
